九節 圧倒されました
「ここでいいか」
適当な広い場所に出た所で、ぼそっと呟いた清流院はこちらに振り向く。
「へ?」
俺は思わず聞き返した。
「鎧を着ろ」
「鎧ですか?」
「そうだ。勇者ならば着れるだろう」
「はぁ」
「さっさとしなければ斬るぞ」
戸惑っていた俺に背筋が凍る言葉が飛ぶ。
「神器一体!着装」
鎧を着て刀を構える。
「ふ!」
何の掛け声もなく清流院の斬撃が襲い掛かり、言葉にならない声が出た。
《全然剣筋が見えない》
【さすがだな】
《リベラルさん。感心している場合じゃないから》
鎧を着ているのに、生身の人間が放つ攻撃を必死にかわしていた。
「どうした?それが全力か?」
「くそ」
さらに攻撃は激しくなる。
「ほれほれほれ」
気付くと清流院は片手になっていた。
「なめるなよ」
いくら平和ボケした日本人でもカチンときて体が熱くなる。
「やっと本気になったか」
両手に戻して清流院はさばく。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁ」
俺はもっと力を込めて一撃を放つ。
「だが、単純過ぎる」
次の瞬間、俺は空を見上げていた。
「だらしないな」
剣先を向けて清流院が言ってくる。
「参りました」
素直に負けを認めた。
《なんで生身なのにこんな強いんだよ》
心の中で毒づく。
「もういい」
パチンっと刀を納めた清流院はその場を去ろうと背中を向けた。
「まだまだ!」
立ち上がりながら呼び止める。
「まだやるのか」
「俺は強くならないといけないんだ」
「何の為に?」
「大切なものを守る為に」
今度は負けじと視線を逸らさず目を見た。
「気持ちはあるようだな」
少しは認めてくれたのか、清流院は再び攻撃を仕掛けてきた。
「せいりゃー」
俺も打ち返す。
キキン、ジリリン、キーン。
様々な刀がぶつかり合う音が響く。
「はあ、はあ、はあ……」
泥だらけで見る景色はすっかり夕闇に包まれていた。
「ふう。お前はまっすぐ過ぎるな」
またも同じ感想を言われる。
「どうしたらいい?」
「わかった。教えてやる」
根負けしたというようにこちらに手を伸ばしてきた。
「ありがとう。清流院さん」
手を掴んで立ち上がった。
「一刀でいい。そんなに歳は変わらんだろう」
「ああ」
後で同い年と聞いた時の俺は、すこしばかり切ない顔になった。




