八節 剣豪にビビリました
チュン、チュンと朝日に照らされた森を馬に乗り進む。
「何か静か過ぎて怖いな」
綺麗な景色に癒されつつも、静寂過ぎる周囲に落ち着かなかった。
「ここはジパングでも神の力が宿る森と言われていますから」
大樹は平然とした態度で話している。
「しかし、一人で寂しくないのかね」
「どうなんでしょう。私もお会いしたことがないので」
突然、ドドーンと地響きがなった。
目の前に大蛇が立ち塞がっている。
「神聖な場所じゃなかったのか?」
「これは古くから森を守っている獣です」
俺たちは驚く馬を落ち着かせながら話す。
「じゃあ殺すのはマズイな」
《手加減する余裕ないわ~》
まだまだ鎧の微調整が苦手な俺は少し距離を取る。
大樹がいる場所まで後ろに下がった瞬間、大蛇の真上に人影らしきものが見えた。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
大蛇が糸が切れた人形のようにこちらに向かって倒れてくる。
俺たちは慌てて避けた。
「何だ、何が起こった!」
「わかりません。何かが降ってきたように見えましたが」
《そうだ。さっき何か人影が見えたな》
俺は大蛇が隠していた前方に視線を送る。
そこには美青年と呼ぶべき男が立っていた。
美青年はこちらを見たと思ったら、俺の喉元に剣先を突き立てていた。
「ちょっとお待ちを」
俺はダサいほど動揺して待ったをかける。
「もしや、清流院一刀様ではありませんか?」
少し離れた所から大樹が問いかけた。
《おい、なんでそんなに離れているんだよ》
ちょっと大樹に殺意がこもった心のツッコミをする。
「いかにも」
清流院は返事もイケメンと言える声をしていた。
「我は王華家の家臣、大樹と申します。こちらは勇者の一郎殿です」
勇者と聞いた清流院はさらに顔を険しくする。
「お主、勇者なのか?」
何故か殺気のこもった視線をこちらに向けていた。
「そうですけど」
俺は完全に気圧されて返事をする。
「ならば帰れ」
刀を納めた清流院はすっと背中を向けて去って行こうとした。
「いやいや待ってくれよ」
思わずタメ口で言ってしまう。
「あ?」
《だから怖いって》
「俺はこの刀を使いこなせるようになりたいんです」
草薙の剣を握り締めて言った。
「鎧と我が流派の二つは合わせるには大き過ぎる力だ」
「だから必要なんです」
「身を滅ぼすぞ」
「それでも守れる力がないよりはマシです」
俺は必死に目線を離さないように清流院を見つめた。
「わかった。ついてこい」
清流院が静かに歩き出したので、後をついていく。
「とりあえず良かったのかな?」
不安を感じて大樹に話し掛けた。
「それならば良いのですが」
大樹も不安を感じた顔をしている。
「まあ、考えても仕方ないか」
異世界に来て覚えた教訓を活かして、流れに身を任せることにした。




