二節 呼ばれたら鎧着てました
「歩兵部隊!私についてこい!」
キーアの怒鳴り声が響く。
ドン、ドーン、ドドン。
城内は絶え間なく砲撃を受けていた。
「カミシア、弓で援護しろ」
さらに声を張り上げ指示を出す。
「はい」
カミシアは弓隊を率いて城門へと駆けた。
キーアは、馬に乗り城門から飛び出す。
だが、ものの数分でキーアたちは戻ってきた。
「はぁ、はぁ、何だあいつは」
キーアと歩兵部隊はボロボロで息も絶え絶えの状態だ。
「族長!ここは撤退しましょう」
カミシアたち幹部たちが駆け寄り進言をする。
「くそ!」
バーン!
キーアが拳を叩きつけた瞬間に城門が弾けとんだ。
全員が振り返る。
土煙の中に複数の影が見え、そこから黒い鎧を纏った騎士が現れた。
手下らしき兵士を連れて余裕を見せながら歩いてくる。
「気をつけろ。あの黒騎士、かなり手強いぞ」
キーアは全員に注意を呼びかけた。
黒騎士が肩に掛けていた大剣を振り下ろす。
剣先から放たれた激しい波動で女戦士たちは吹き飛ばされた。
「ぐはあ」
壁や馬車やいろんなものにぶつかり大半が気を失う。
「はあ、はあ、何て奴だ」
カミシアだけはかろうじて立ち上がる。
「今までは見逃してやっていただけだ」
黒騎士が口を開く。
「何だと!」
カミシアは声絶え絶えで答える。
「女の割りには使えるからな。なるべく、数は減らしたくないんだが仕方ない」
必死に虚勢を張っていたが、ついにカミシアも倒れてしまう。
「そういうことだから、大人しく死んでくれ」
「く、くそ」
トドメを差そうとした瞬間、黒騎士の前に眩い光が輝いた。
「な、何だ。目が開けられん」
光が収まると、中からは白銀の鎧を着た男が現れた。
「誰だ?」
見知らぬ男に黒騎士が問いかける。
「ええと、普田一郎と申します」
一郎は営業の癖で会釈をしてしまう。
「なんであいつがここに?」
意識が朦朧としながらカミシアは一郎を見つめる。
「まあいい。邪魔するなら容赦はせんぞ」
黒騎士は一郎を全く気にせす進もうとした。
「ごめんない。邪魔はさせてもらいます」
そう言うと、一郎は黒騎士を城壁に叩きつけてしまった。
ガガーン。
城壁は粉々になり黒騎士はうな垂れて倒れている。
一瞬、その場にいる全員が固まった。
「退け!総員撤退だ」
ハッとして副官らしき男が号令を掛けた。
「黒騎士様はよろしいのですか?」
部下が逃げ去りながら問いかける。
「かまわん。所詮、実験兵器だ」
大将を置き去りにし、軍勢はあっという間に消え去っていく。
「ふう。何とかなったな」
一郎は一息つくと、カミシアの側へ寄った。
「大丈夫、じゃないか」
一郎は、優しくお姫様だっこをして安全な場所へカミシアを連れて行った。




