彼女、山田さん
私は、彼女のどこに惹かれたのか、という質問に、いつもくちをつぐんでしまう。
陽気で人柄もよく面倒見もいい、特別きれい、というわけではないが、素朴で笑顔が素敵な女性であり、そして乳がでかかった。
また彼女は酒豪でもあった、いきつけの安い居酒屋に行けば、これでもかというほどのウイスキーをあれよあれよと胃袋に収め、フラフラした足取りでトイレへ向かう、15分ほどすると笑顔で戻ってきて、またウイスキーを笑顔で飲み干す、そんな女性である。
彼女曰く、吐くか風に当たれば10分で回復する、らしい。
彼女はとにかく、奇想天外であり、天真爛漫であり、自由人であった。
彼女と私が付き合い出したのは大学3年生の秋のことである。
奈良は三条通りを興福寺の方へと進むと、猿沢池、という池がある。ここには無数の亀が点在しており、餌を落とそうものなら、我先にと水面に顔をだした。
その日、彼女はそこで、たこ焼きを頬張りながら、亀を眺めていた。
声をかけようと私が近づくより早く、彼女は私の存在に気づいて、こちらに振り返り笑顔で小さく手を振った、その時、私はどうしようもなく、彼女に惚れてしまったのである。それは、その愛らしい仕草や上記であげた彼女の長所からくる物ではなかった、口の横に青海苔をつけ、一人たこ焼きの欠片を池に落として亀を観察している、そして彼女は、大きく「鳥もち禁止」と書かれた大よそ花の女子大生が着るはずがないであろうTシャツを恥じらいもなく着ていた。
そういう様に、私は惚れたのである。
さあ、これを友人にどう説明したものか、と私はいつも頭を悩ませている。
他人が魅力に感じることを、私はあまり魅力に感じなかった。
綺麗な顔立ち、すらっとした足にスリムな体系、清楚な黒髪や勤勉さ、特に疑問に思うのはとりわけ女子力であった。
一言では言えないが、簡単に言えば、私は女子力のない女性の方が好きだった。
それを友人森野氏にいうと「あー、じゃあダメ女が好きなんだ、料理できないとか化粧しないとか」と言われ、私は強く否定した。
料理ができるなら、それに越したことはないし、化粧をして綺麗になるなら、女性は化粧をするべきである。
女子力のない女性が好き、といいつつも、その代表とされるものが出来る事を毛嫌いしてるわけでもない。
しかし、じゃあなんなんだ?と問われると、一言ではとてもまとめれるものではない、私のフェチズムはもはや細分化に次ぐ細分化により末期状態であった。