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第4話

『おじいさんに会いたい


 おじいさんに会いたい


 会いたい


 会わせろ


 でなければ お前を×××』


「無茶な! 強引だ! どうやって死んだ人に会わせろってんだ!?」

 興奮する美十くん。それはそうだと私も思います。飲むヨーグルトを持つ美十くんの手が、ワナワナと震えています。ああ、そんなに力を込めたら、ストローからヨーグルトが。

「結局、おじいさんとやらは見つからなかったって事だろ。そりゃそうだ。日本人は何百何千何万何億人いると思っているんだ。おじいさんの魂の気配? はは! そりゃすごいね。俺にゃ、わからない」

 私にも分かりませんが。美十くんにも分からないものを、私なんかが分かるはずもないです。

「とにかく……。俺、ロリヤさんと話つけてみるよ」

「え? どうやって?」

「手紙を書く。今度会ったら、それを渡せ」

 手紙を。うーーん、うまくいくかな。

「今から書いてやる」



 美十くんが書いて、私に渡された手紙。読んではいませんが、内容は“説得文”らしいです。おじいさんは とっくに死んで もうこの世にいない、孫の私には関係がない、おじいさんの魂を見つけるのは俺らの手では無理だ、あきらめて帰ってくれ……的な内容らしいです。

 私はベッドの枕元に置いて寝るようにしました。

 寝ている間に来るかもしれませんから……。


 ある日、目を覚ますと。ロリヤさんの返事が書かれたメモがありました。


『私の夢を叶えて。…… 』


「夢?」

 私は首を傾げました。


『あなたの体を貸して……そして あなたの彼と、デートさせて』


 ……



「何だ? 彼って、俺の事か??」

「だと、思うけど……」

 話が思わぬ方向に展開してきたので、どう考えていいのか分かりません。

 ちょくちょく、学校の授業が終わってから美十くんは、こうして病院まで毎日 足を運んで来てくれます。ただ そろそろ、勉強を再開しようか? という話も……。

「何で俺だ! ……まぁ、いいけど? それで気が済む話なら。じゃ、直が退院した次の休みぐらいでいいかな」

 腕を組んで、私を見ます。

「え、うん。私は いいけど。体を貸すって、どうやるのかなぁ。私の意志、どこ行っちゃうんだろ」

 ちょっと不安……なのですが。

「まあ、話せば分かる奴みたいだし。俺が何とかしてやるよ」

「うん……!」

 少し、気が軽くなりました。美十くんの言葉は、とても私に良い薬です。


 美十くんとデート。……あれぇ、何だかウキウキしてきました。なんでだろう。

 ロリヤさんに また手紙で返事を告げると、『承知』と次の日に返事が返ってきました。

 承知、って……武士??



 休みの日。私は、ちょっと いつもより気合いを入れてメイクと、流行りの服を着て出かけて行きました。

 相手は高校生です。子供に扱われたくない。ちょっと そんな風に思いました。

 でも実際 美十くんと待ち合わせの公園で会うと、美十くんは私の外見には全く触れずで……なので、ちょっぴりガッカリです。

「ロリヤさんは、まだかな……」

「ああ、目をつぶってみろよ。でないと、動けないんじゃないか」

 美十くんに言われて、私は目を閉じます。そうしたら。


 スポン。


 ……?


 んん?


 ……何かが、飛び跳ねたような音がしました。びっくりして目を開けると、足元に美十くんが見えます。そして何と、その美十くんの隣にいるのは私? の姿……。

 えっ、私は ここにいるのに。どういう事?? どうして そこに私がいるの?? 美十くんと……。


「……お前、ロリヤ、か……?」

「ええ。そうよ。やっと会えたのね。おじいさん」


 おじいさん?


「どういう事だ。俺は おじいさんなんかじゃない。直を どうした?」

 美十くんの顔が強張ります。私……の姿のロリヤさんは ちっとも ひるみません。と、いう事は私、ひょっとして今……ユーレイなんでしょうか??

「あの子は しばらく体から離れていてもらう。私の気の済むまでね。行きましょ、おじいさん」

 ロリヤさんが、美十さんに しがみつきます。きゃあっ。

「だから俺は」

「思い出すわ。そのうちに きっと。イギリスで過ごした私との日々。あなたは おじいさんの生まれ変わり。私には分かるの。だって……」

 ロリヤさんが美十くんを見つめます。


「行こっ!」


と、ロリヤさんは美十くんを引っ張って、ずんずんと歩いて行きました。

 こうしちゃいられません。私も、後を追っかけます。空中を走りながら。



《第5話へ続く》




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