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理想の恋人と現実の・・・  作者: 雪 まりあ
~理想の恋人~ 清凪
2/26

~可愛らしい妹さん~

さて、主人公ちゃんの性格は…?不明。

キーンコーンカーンコーン・・・


チャイムとともに授業が終わった。わたしは板書していたノートから顔をあげると、一つ伸びをしてから担任の先生のところに向かう。


「先生、いつものあれ、お願いします。」


わたしが先ほどまで板書していたノートを片手に担任の先生にそう言うと、黄色いプレートに印刷室と書かれた鍵を渡される。

毎日の授業後の姿なので、クラスメートが気にすることはない。


鍵を受け取ったわたしは部活に行く友だちを見送ってから、通学かばんを持って印刷室に向かう。

4月の半ばくらいからの習慣である。コピー機で今日分のノートの内容を黙々とコピーする。

4月の半ばに担任に頼まれたことなのだが、ずっと続けていることだ。担任の頼みというのは・・・


『体が弱く学校に来ることができないクラスメイトの子のために、授業内容をノートに書いて届けてほしい。』


というものだった。



平凡な顔立ちで、化粧気もなくあまり派手な行動をとるわけでもなく、(一見)従順であるわたしは教師の恰好の的なのだ、面倒な仕事を押し付ける相手として・・・。

ノートは自分用に書いたものをコピーするだけでいいし、その体の弱いクラスメートの家というのも帰り道にあるので、わたしはその頼みを聞くことにしたのだ。


「まさか、半月も顔を合わせることが無いとは思わなかったけど。」


ノートを6限分コピーしながら、一人呟く。

ただ、どうやら半年ずっと休んでいるわけではないらしい。教室には来ていないけど、登校していると担任が言ったこともあるからだ。たぶん、保健室登校とかいうやつなのだろう。わざわざ会いに行くほどそのクラスメイトに興味も持っていない。


体が弱いというのは大変だね。わたしは健康優良児でよかったです。・・・児じゃないけどね。

印刷が終わると、職員室に鍵を返しに行ってから図書室に寄る。放課後のいつものコースだ。


図書室のドアを開けると、窓際の席にイケメンが座っていた。時々見かける男の子だけど、名前は知らない。本を読んでいたり、勉強をしていたりする子だ。

一瞥してから、いつも座っている席まで行く。

お気に入りの写真集を広げて、無線のルーズリーフを横に置いてからさっきノートをコピーしたものを広げる。


ノートをコピーしたものには、授業中に思いついたこまごましたことをメモしてつけていく。書いていくことは、

『この問題を出した時に先生がニヤリと笑っていたから、これと似た問題をテストに出す可能性あり』

というテストに関係するものや

『この教科の先生はいろんな変わったバイトをしているみたい。もし会うことがあれば、聞いてみると面白い話を聞けるかも』

という登校した時の話題なんかも暇があれば書いている。


 コピーしたものをクリアファイルに入れて鞄にしまうと、横に置いていた無線のルーズリーフに写真集を模写する。この写真集は持ち出し禁止で借りることができないので、いつも図書室で見ている。海外の自然の風景写真だ。

ところどころに撮影者のコメントが直筆で書かれており、そこが持ち出し禁止の理由だと司書の先生に教えてもらった。思う存分写真集を見て、絵にしてから図書室を出る。

 ふと、窓際を見るとイケメンくんはまだノートに向かっていた。


勉強熱心だなぁ~。



自転車に乗って帰宅する。帰り道に例のクラスメイトの家の前に寄る。今日は門の前に誰かいるようだ。

4月の始め頃は毎日クラスメイトの母親がいて、声を掛けられていた。コピーをしてからすぐに届けに行くとよく出会っていたので、図書室で時間をつぶしてから行くようにしていた。


自転車で郵便受けの前に止まってクリアファイルごと入れようとすると門の前にいた女の子に声をかけられた。


「ちょっと、いい?」


可愛らしい女の子が腰に手を当ててこっちを見ている。なんだか、怒っているような気がするけど・・・。


「はい。えぇと…」


クラスメイトの家の前にいるのだから、そのクラスメイト本人かそのご家族の方だろうな。

ちらりと表札に目を向ける、「会田」と書かれているのをみてから言葉を続ける。


「会田……さんですよね?」

会田あいだ陽菜ひなよ。ねぇ、あなたいつもそれ持ってくるけど。お兄ちゃんに気があるんじゃないでしょうね?」


陽菜、顔に似合ってとても可愛らしい名前の子だなと思ってから、陽菜に言われた言葉を頭の中で反芻する。


ん?お兄ちゃんに気がある?


「お兄ちゃん?えぇと、陽菜さんはお兄さんがいるんですね。陽菜さんはとてもかわいいから、お兄さんはかっこいいのかな?あ、わたしは高山たかやま清凪せいなっていいます。」


可愛い女の子には笑顔をサービス。ほら、スマイルはゼロ円ですので。


「なっ、かわいいって!?」


何をそんなに慌てているのかわからないけど、目をきょろきょろさせながら顔を真っ赤にしている。一体なんなのだというのだろう。


「お兄さんというのは、どなたのことか知りませんが、わたしはクラスメイトの会田さんに授業内容を知らせてほしいと担任の先生に頼まれまして、いつも郵便ポストにノートを届けているだけですよ。あやしいダイレクトメールとかではないので安心してください。」

「それは知っているわよ!あ、えぇと。いつもご苦労様です。お兄ちゃんがお世話になっていま……す?」


 何故疑問形なの、陽菜さん。あ、お兄ちゃんがお世話~っていうことは、わたしの病弱なクラスメイトは男の子だったのね。初めて知ったなぁ。


「いえいえ、お気になさらず。お母様にも時々声をかけられますけど、これは担任の先生のお使いのようなものなので。あと、帰り道なのでたいしたことないですから。」


今日はいなかったが、この母親って言う方が会うたびに「いつもありがとう。」と笑顔で声をかけてくださり、なぜか家に入ってお茶をしていかないか、とか、おいしいお茶菓子があるのだけど、とか、庭の花が今満開なのよ、ぜひ見にいらして、とお誘いくださるのだ。

どうやら、パートをされているようで、できるだけ会わない時間に来るようになっていた。そんな気を遣わせても悪いし、何だか「いいことをしていますよ、わたし。もてなしなさいっ。」っていう態度に見えるのだろうかって勘ぐってしまい、居心地が悪いのだ。


そんなわけで、あまり長居してもよくないので、陽菜さんに会釈をして逃げるように去ることにした。


結局、何の用だったんだろう?まぁいいか。


わたしはそのまま自転車に乗ると帰宅した。


妹さんはお兄ちゃんとよく比べられるみたい。

かっこいいお兄ちゃんの妹も大変。

主人公ちゃんは体の弱いクラスメイトに興味はないので、名前についても性別についても気にしていませんでした。

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