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第十三話「悪夢とカイゼル様」

深夜に、目が覚めた。


 夢を見ていた。

 神殿の大広間で、また裁かれている夢だ。

 皆が私を見ている。テオが冷笑している。長官が重々しく口を開く——。


 私はベッドの上で呼吸を整えた。

 汗ばんだ手を、シーツに押しつける。


 もう、あの場所には戻らない。

 ここにいる。ここに居ていい。


 それはわかっているのに——胸の奥は、まだ震えていた。


 そっと起き上がり、部屋の外へ出た。

 廊下はひんやりとして、魔力光が低く揺れている。


 歩いていると、城壁の見晴らし台に出た。

 ひとりで夜空を眺めていると、後ろに足音がした。


「……眠れないのか」


 振り返らなくても、誰かわかる。


「少し夢を見まして」


「悪い夢か」


「……だいぶ昔の夢です」


 カイゼル様は隣に来て、同じ方向を向いた。


「……神殿でのことか」


「はい。もう过ぎたことなのに、時々戻ってくるんです」


「……それは。仕方のないことだ」


 声が、いつもより少し低かった。


「人の傷は、本人が思うより深いことがある。それが形を変えながら、長く残る」


「……カイゼル様も、そういうことがありましたか?」


 沈黙。


「……ある」


 それだけ言って、彼は空を見上げた。


 私も空を見た。

 二つの月は雲に隠れはじめていた。


「……ここにいる限りは、余が守る」


 ぽつりと、そう聞こえた。


 聞き間違えたかもしれないと思って振り返ると、カイゼル様はもう城の中へと足を向けていた。


「……早く戻れ。寒い」


「はい」


 私は空に向かって、小さく深呼吸をした。


 胸の震えが、少しだけ収まった気がした。


第十三話 完

ご心配をおかけするシーンでしたが、お読みいただき、ありがとうございます!


ルナちゃんの過去の傷と、カイゼル様の「ある」という一言……この二人、似た者同士なのかもしれません。


次回は少し明るい話になります。安心してお待ちください!

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