第十二話「星空の夜」
「お前のことが……」
カイゼル様が、そう言いかけて止まった。
城壁の上。
夜の魔界に、二つの月が出ている。
霧が青白く光り、地平線の向こうまで続いている。
散歩が習慣になったのはいつ頃からだろう。
最初は「見回り」と言っていたが、今はしれっと「今夜も付き合え」と言われるようになった。
私はそれが嬉しかった。
「カイゼル様? どうかされましたか?」
「……いや」
彼は空を見上げた。
「……嫌いでは、ない」
「……はい?」
「貴様のことが。……嫌いでは、ない、ということだ」
私はきょとんとした。
「それは……どういう意味でしょうか?」
「そのまま受け取れ」
「つまり、好きということですか?」
「……そうは言っていない」
「でも嫌いではないということは」
「……うるさい」
カイゼル様は顔を背けた。
月光の下でも、耳が赤いのがわかる。
私は少し考えて、正直に答えた。
「私も、です! カイゼル様のことは、嫌いではありません。むしろ……」
言いかけて、私も何故か少し恥ずかしくなった。
「……むしろ、とても。好きです」
風が吹いた。
青い霧がゆれる。
「……そうか」
長い沈黙の後、カイゼル様は小さく言った。
「……それは、困ったな」
「困りますか?」
「……処き置に困る、という意味だ」
「どこにでも置いて《・》《・》ください」
また風が吹いた。
カイゼル様は何も言わず、城壁の先を見ていた。
でも、そのまま歩き続けながら、少しだけ、私との距離が縮まった気がした。
第十二話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
「嫌いではない」という告白(告白?)きてしまいましたね……!
カイゼル様の「困ったな」という言葉、これも彼なりの照れ隠しなんですよね。
ルナちゃんもちゃんと「好きです」と言えましたよ!(ナチュラルに)
次回もお楽しみに!ブックマーク・評価お待ちしています✨




