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第3話:ステータス画面が見えた

視界に浮かんだ文字は、

最初、うまく認識できなかった。


近すぎる。

それに、やけに明るい。


ヘッドライトの光とは、

明らかに質が違う。


「……なに、これ」


声が、思わず漏れた。


瞬きをしても、

目をこすっても、

消えない。


文字は、

空間に浮かんでいるようで、

同時に――

自分の内側に直接貼りついている

ようにも感じられた。


【位:無位】


「……位?」


聞いたことはある言葉だ。

歴史の授業でも、

役所の書類でも。


なのに、

今見ているそれは、

まるで意味が違う。


続けて、文字が並ぶ。


【技能】


・投擲(白)

・召喚(白・未確定)


それだけだった。


「……これで全部?」


数値もない。

説明もない。


思っていたより、

ずいぶんあっさりしている。


「うん。たぶん、最初はそれだけ」


横で、リムがのんびり答えた。


「……たぶん?」


「細かいことは、

ぼくもよく知らないんだよね」


リムは、ぷるぷると揺れる。


「でもさ、

それが見えてるってことは――

ちゃんと“入っちゃってる”ってことだよ」


「入っちゃってる……」


大地は、視線を文字に戻した。


「ここ、

人間が来る場所じゃないんだけど」


「……けど?」


「たまに、

来ちゃう人がいるみたいなんだよね」


言い方は、

どこか曖昧だった。


まるで、

ずっと昔の話を

ぼんやり思い出しているみたいに。


大地は、軽く息を吐いて

改めて表示を見直した。


「……投擲、ってありますけど」


「ああ、それ」


リムは、気楽に頷く。


「人間さん、

投げるの得意そうだもんね」


得意、というほどでもない。

だが、

昔からボール投げは嫌いじゃなかった。


「……ちょっと、

試してみてもいいですか」


「いいよー」


リムは、あっさり答えた。


大地は、足元に落ちていた小石を拾い上げた。


特別な石じゃない。

ただの、どこにでもある小石。


軽く、重さを確かめる。


――妙だ。


手に収まる感覚が、

やけにしっくりくる。


重さも、

形も、

指のかかり具合も。


「……変な感じだな」


構えてみる。


狙いを定めようとした瞬間、

自然と視線が一点に収束した。


「……あ」


力を入れたわけでも、

特別な動作をしたわけでもない。


ただ、

いつも通り投げただけだ。


――カン。


小石は、

狙ったあたりの壁に当たり、

乾いた音を立てて跳ね返った。


「……」


派手さはない。

奇跡みたいなことも起きていない。


ただ――

投げた感覚が、異様に良かった。


狙いが、

迷わない。


腕の振りも、

途中でブレない。


「……あれ」


「ね?」


リムが、少し楽しそうに言った。


「前より、

投げやすくなってるでしょ」


確かに。


ほんの少し。

言葉にするなら、

“迷いが減った”。


「上手くなった、っていうより……」


「うん?」


「感覚が、

揃ってきた感じです」


「あー」


リムは、納得したように揺れた。


「それそれ」


「ここにいるとさ」


「理由は分かんないけど、

体の中が、

少しずつ整ってくんだよね」


「速くなったり」


「力持ちになったり」


「ぜんぜん倒れなくなった人もいたなぁ」


言い方は、

相変わらず雑だった。


だが、

作り話には聞こえない。


「……それで、

位、っていうのが変わると?」


「うーん……」


リムは、少し考えてから言った。


「同じことしてるのに、

結果が違ってくる感じ、かな」


「理由は知らないよ?」


「たぶん、

そういう場所なんだと思う」


【位:無位】


という文字が、

少しだけ、

遠くに感じられた。


「……今日は、ここまでかな。」


大地は、静かに息を吐いた。


「うん。

それがいいと思う」


リムは、あっさり頷いた。


「最初はさ、

『変わり始めた』って気づけただけで

十分だから」


大地は、

洞窟の出口へ向かいながら思った。


――もしかすると、

――昔の誰かも、

――同じ違和感を覚えたんじゃないか。


そう考えると、

背中が、少しだけぞわりとした。

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