第46話「築かれし城・通貨の約束」
モルテア・新王城・中央塔。
陽光が差し込む中、城の尖塔が完成を迎えた。
その骨格は、レイが石の精霊と共に形成した魔力構造。
生きた石が呼吸するように、壁は魔力を循環させていた。
そして、その上に命を吹き込んだのは――ゴブリンの技術者、ドルガ。
「扉は魔導鋼にしておいた。開閉は魔力感知式。
内装は王都様式を参考にしたが、家具は全部モルテア産だ。
柔らかさと耐久性、両方兼ね備えてるぜ」
レイは感嘆の声を漏らす。
「……すごい。まるで、呼吸してるみたいだ」
リゼは壁を指でなぞりながら頷いた。
「この城は、ただの建物じゃない。
モルテアの象徴になるわ」
──モルテア・新王城・会議室──
長方形の魔導テーブルを囲み、レイ、リゼ、そしてモルテア経済顧問・バルド=エルネスが座っていた。
議題は――南の商業都市との通貨協定。
「モルテアには、これまで通貨制度が存在しませんでした」
バルドが資料を広げながら語る。
「物資の交換や魔力契約が主流でしたが、交易拡大のためには通貨が必要です。
今回の協定により、エルヴァンの銀貨をモルテア国内でも使用可能とすることが決まりました」
リゼが頷く。
「魔力価値の違いはあるけれど、エルヴァン通貨は流通実績がある。
まずはそこから始めるのが妥当ね」
レイは微笑む。
「モルテアに通貨が入ることで、国としての輪郭がさらに明確になる。
これは、経済の第一歩だね」
バルドが補足する。
「避難民の住居建設も順調です。
すでに百棟以上の住居が完成。
通貨流通が始まれば、生活の安定も加速するでしょう」
──そして、モルテアの経済は、神と精霊の加護のもとで動き始めた。




