第45話「南境の約束・未来の地図」
王都南領地・境界丘陵地帯。
風が吹き抜ける丘の上に、三人の姿があった。
レイ、リゼ、そして王女セリア。
「ここが……引き渡し予定地か」
レイが地図を広げながら呟く。
眼下には、緩やかな丘陵と小川が流れる肥沃な土地。
かつては王都の軍事拠点として使われていたが、今は静かな草原が広がっていた。
「この地は、王都にとっても重要な場所でした」
セリアが言う。
「ですが、和平の証として――我々はこの地をモルテアに譲渡します。
争いの境界ではなく、交流の玄関口として」
リゼは周囲を見渡しながら頷く。
「地形は安定していて、魔力の流れも穏やか。
防衛にも、交易にも適している。
ここを新たな“接続地”にするのは、理にかなってるわ」
レイは地面に手を当て、魔力を流す。
土中の魔脈が反応し、淡い光が広がる。
「……魔導境界線、再設定完了。
これで、この地は正式にモルテア領になります」
セリアは一歩前に出て、静かに言った。
「この地が、未来の架け橋になりますように。
剣ではなく、言葉と信頼で繋がる国のために」
リゼは微笑み、レイは静かに頷いた。
──そして、南境の風が三人の誓いを包み込んだ。




