第44話「神前の演説・悔いの玉座」
王都イグナリス・中央広場。
突如、空に巨大な魔方陣が展開された。
光が渦を巻き、空間が震える。
「……魔方陣!? また何かが……!」
民衆がざわめく中、光の柱が地上に降りてくる。
その中心に現れたのは――レイ。
「王都の皆さん。
今日は、城を返還するために来ました」
続いて、王・グラン=イグナリスと王女セリアが転移されてくる。
王は正装を身にまとい、顔には緊張と覚悟が浮かんでいた。
そして、最後に空が裂けるように開き、神が降臨する。
「……あれは……神!? 本物の……!」
王都の民が息を呑み、広場は静まり返る。
セレオスは剣を掲げ、空に魔方陣を描く。
「誓約は果たされた。
ならば、城を――戻す」
空間が震え、かつて森に転移されていた王城が、広場の奥に再び姿を現す。
その姿は、以前よりも清浄で、魔力の光に包まれていた。
王は一歩前に出て、民衆に向かって声を張る。
「我が民よ。
この度の騒乱、そしてモルテアとの争い――
すべては、我が浅慮と傲慢によるものであった」
広場が静まり返る。
「我々は、力に頼り、対話を拒み、
罪なき者たちを傷つけてしまった。
その報いとして、城を奪われ、神に誓うこととなった」
王は深く頭を下げる。
「私は、過ちを悔い改める。
そして、モルテアとの和平を誓う。
この国を、剣ではなく言葉で守る時代へと導いていく」
民衆の間に、静かな拍手が広がる。
王女セリアはそっとレイに目を向け、微笑む。
レイは頷き、静かに魔方陣を閉じた。
──そして、王都の空に、神の光が消え、平和の風が吹いた。




