第42話「壁の向こう・交渉の値」
モルテア・外郭防壁前。
王都からの使節団が到着した。
先頭に立つのは王女セリア。
その背後には護衛騎士と交渉官、魔導士たちが並ぶ。
「……ここが、モルテア……?」
目の前にそびえるのは、巨大な魔導壁。
自然の岩と魔力障壁が融合した構造で、空中にも防壁が展開されていた。
「まるで……城塞都市……」
セリアが呟く。
入口に近づくと、魔力検知装置が起動。
使節団の魔力を自動解析し、身分と所属を瞬時に判定する。
魔導係が前に出る。
「初めての入国ですか?」
セリアは頷く。
「……ええ、そうです」
「では、こちらに手をかざしてください」
セリアが魔法陣に手を差し出すと、手の甲に淡い紋様が浮かび上がった。
それは、細かい魔力の線で描かれた封印の印。
「その紋様は、あらゆる暴力行為を封じるものです。
この国にいる間、武器も魔法も攻撃目的では使用できません。
国を出ると、紋様は自然に消えます」
セリアは目を見開いた。
「……ずいぶん徹底してるのね」
係員は一礼しながら答える。
「秩序のためです。入国を許可します」
魔導扉が静かに開き、モルテアの内部へと光の道が伸びていった。
──モルテア・転移城・謁見の間──
レイとリゼが待っていた。
「ようこそ、モルテアへ。
王城の返還について、お話を伺いましょう」
セリアは深く頭を下げ、書簡を差し出す。
「王都として、城の返還を正式にお願いしたく参りました。
そのための対価として――」
交渉官が巻物を広げる。
「金貨十万枚、魔導鉱石五百、王都魔導士団の協力契約書。
加えて、王都の南領地の一部譲渡を提案いたします」
リゼが目を細める。
「破格ですね。ですが……城は象徴です。
返すには、誓約が必要です」
レイは静かに言った。
「神が見ています。
城を返すには、王が“神に誓って”二度とモルテアに手を出さないと約束すること。
それが条件です」
セリアは頷いた。
「……その誓い、父に伝えます。
モルテアとの未来のために」
──そして、交渉の扉が開かれた。




