第38話「最後の仕上げ・空に刻む真実」
王都イグナリス・中央広場。
突如、空が光に染まった。
「……空に、魔方陣……?」
市民たちが見上げると、広場上空に巨大な魔法紋が展開されていた。
その中心に、光の柱が降りてくる。
「最後の仕上げよ」
リゼの声が響く。
光の柱の中から、リゼがゆっくりと降下してくる。
その姿は神秘的で、威厳に満ちていた。
王・グラン=イグナリスの足元にも魔方陣が出現。
彼の体が浮き上がり、リゼと対峙する高さまで引き上げられる。
「な、何をする気だ……!」
その瞬間、広場の周囲に巨大スクリーンが展開された。
魔力による映像投影が、王都全域に中継される。
市民、兵士、貴族――すべての者が、空に浮かぶ王とリゼの姿を目撃する。
そして、スクリーンに映像が流れ始める。
──ブルゴス事件──
王都軍所属の兵士ブルゴスが率いた部隊が、モルテア建国初期に民間集落を襲撃。
火を放ち、逃げる者を斬り、子供すら容赦なく殺した。
映像には、ブルゴスが笑いながら剣を振るう姿。
炎に包まれる家屋。
泣き叫ぶ母親と、倒れる子供。
王都の民が息を呑む。
リゼは静かに言った。
「我が国は、ブルゴス率いる兵士に正当な裁きを下しました。
ですがその後も、隠密に我が国の国民を殺害しようとしましたね。
返り討ちにしましたが……」
王が叫ぶ。
「ならば、なぜ我が城を奪った! なぜ我々を広場に転移させた!」
リゼは冷静に答える。
「城を奪ったのは、もう二度と我が国に攻め入らせぬため。
そして、あなた方を王都広場に転移させたのは、殺す意志がない証です。
もし望めば、雲の上に転移させて、落下死させることもできた。
でも、我々はそれを選ばなかった」
王は言葉を失う。
リゼは一歩前に出て、声を強める。
「わかって頂きたいのは――
我が国は、いつでもあなたを殺せる力を持っているということ」
広場が静まり返る。
「だからこそ、今ここで誓いなさい。
もう二度と、我が国に関わらないと」
王は震える拳を握り、沈黙する。




