第37話 王都広場・混乱の朝
王都イグナリス・中央広場。
朝靄の中、突如として現れた数百人の人影――それは、王城にいた王族、貴族、兵士、侍女、そして王その人だった。
「……ここは……? なぜ我々が広場に……?」
王・グラン=イグナリスは寝衣のまま、玉座の夢から引き剥がされたように立ち尽くしていた。
王冠もなく、靴も履いていない。
その姿に、周囲の民衆がざわめく。
「父上、これは一体……!」
王女セリアが詰め寄る。
「どうしてこんなことに!? 城が……消えたのよ!」
「僕たち、広場に転がされてるんだぞ!」
王子ルークも怒りを隠せない。
「……誰の命令でこんなことを……!」
王は顔をしかめ、周囲を見回す。
「ガルドはどこだ! ガルド! 一体どうなってるんだ!!」
その声に応じて、軍務卿ガルドが人混みをかき分けて現れる。
寝巻の上に軍服の上着を羽織り、髪は乱れたままだ。
「……わたしにも、さっぱりです、陛下……」
王は唇を噛みしめ、空を仰いだ。
そこには、かつて自らが支配していた城の姿はなかった。
代わりに、遠くに見えるのは――森。
「……奪われたのか。城を……我が玉座を……!」
その言葉に、誰も返すことはできなかった。
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