第36話「魔方陣の中心・エルフの誓い」
モルテア・中央広場。
エルフたちが静かに集まっていた。
長老を中心に、魔力を扱える者たちが円を描くように並ぶ。
その中心に、レイが立っていた。
「……これ以上、血は流したくない。リゼ、何か方法はないかな」
リゼは頷いた。
「あります。戦う気力を奪いましょう。
城を奪えば、軍の心は折れます」
レイは静かに手を掲げる。
「じゃあ、いくよ」
地面に巨大な魔方陣が展開される。
エルフたちが両手を掲げ、魔力をレイに注ぎ始める。
「レイ様、我らの森を守るために――」
魔方陣が光を放ち始める。
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同時刻、モルテアの森では――
ゴブリンたちが森の境界に立ち、警告の杭を打ち込んでいた。
「半径2キロ、立入禁止区域を設定。
外敵の侵入を防ぐため、罠と警戒線を展開」
オークたちは岩を運び、自然の障壁を築いていく。
「ここは、我らの国の心臓だ。誰にも踏ませるな」
そして、レイの転移召喚が発動。
ミュー、グラ、バル、リリィ、そしてリゼ――
5人が王都の城を囲むように、瞬間転移で配置される。
それぞれが魔方陣布を地面に広げ、結界の支点を固定していく。
リゼが通信魔法で告げる。
「レイ、結界完了したよ。五点布陣、安定してる」
レイは広場で魔力を受けながら、静かに頷く。
「じゃあ、いくよ」
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魔方陣が完全に光を放ち、空に紋様が浮かぶ。
レイの手が輝き、魔力が爆発的に増幅される。
「召喚魔法――《転移の環》!」
王都の城にいた兵士、貴族、王族――
すべての人間が、光に包まれた。
次の瞬間、彼らは王都の広場に転移される。
「な、何が……!? 城が……!」
だが、転移は終わらない。
レイはもう一度手を掲げる。
「第二転移――《封印の森》!」
王都の城そのものが、光に包まれ、モルテアの立入禁止区域へと転移される。
森の中心に、巨大な城が出現する。
ゴブリンとオークたちが警戒態勢を強化。
「この城、誰も入るな。ここは、モルテアの“封印領域”だ」
王都軍は混乱し、指揮系統が崩壊する。
兵士たちは剣を抜けず、貴族たちは命令を出せず、王族は沈黙する。
リゼは静かに言った。
「戦う気力、奪えたね」
レイは広場を見つめながら、呟いた。
「……これが、血を流さない戦争だ」
そして、モルテアの空に静かな風が吹いた。




