第34話「光牙の空・獣人美少女の咆哮」
モルテア・北の高台・夕暮れ。
リリィは岩の上で風を感じていた。
小柄な体にしなやかな筋肉、獣耳と尻尾が揺れ、瞳は空を見つめていた。
「レイさんの空、今日もきれい……でも、守らなきゃ」
その時、風が止まる。
「……来た」
空の裂け目から、黒衣の影が現れる。
王都最精鋭《黒衣兵》50名。リリィの暗殺部隊だ。
「標的確認。コボルト進化体・リリィ。排除開始」
リリィは跳躍し、空中へ。
獣人の脚力で一気に高度を稼ぎ、光魔法を展開する。
「結界展開――《光の輪》!」
空に光の円が広がり、魔法を吸収する。
反射された雷が術者を焼き、風刃が味方を裂く。
「空は、私の庭よ」
そして――彼女の笑顔が消える。
「元コボルトを舐めないで!」
リリィの腕が光に包まれ、獣人の爪が現れる。
鋭く、白銀に輝く爪が空を裂き、風を切る。
彼女は高速飛行で兵士の背後に回り、爪で一人目の首筋を裂く。
「きらきら、痛いでしょ?」
二人目には回転蹴りを叩き込み、空中で骨が砕ける音が響く。
三人目には牙を剥き、肩口に噛みつく。
悲鳴が空に溶ける。
「光の魔法だけじゃない。私は、獣でもあるの」
兵士たちは空中戦術を展開。
だが、リリィは結界を重ね、二重防壁を形成。
「突破できるなら、やってみなさい!」
兵士たちが突撃する。
だが、リリィは光の翼のような魔力を纏い、回避しながら光の爆裂弾を放つ。
爆音と閃光が空を裂き、兵士たちは次々と墜落する。
最後の一人が逃げようとした瞬間、リリィは静かに呟く。
「レイさんの空を、守るために――」
光の爪が閃き、空に静寂が戻る。
──沈黙──
高台の空には、黒衣兵50名の残骸が散っていた。
リリィは岩の上に戻り、風に乗って帰還する。
「レイさん、空は守りましたよ」
その頃、王都では報告が届いていた。
「……リリィ、暗殺失敗。部隊全滅」
ガルドは拳を震わせる。
「……4体すべて失敗……ならば、戦争だ」
そして、モルテアと王都の全面戦争が、ついに始まる。




