第27話「祝祭の剣・絆と再起の国」
モルテア国・武道場。
交易交渉を終えた使節団が帰還し、国は活気に満ちていた。広場では商人たちが店を開き始め、村人たちの笑顔があふれている。
その一方で、武道場には熱気が渦巻いていた。
「さあ、かかってこい!本気で来いよ!」
元Sランク勇者・アレンが剣を構え、対峙するのは――進化を遂げたレイの契約モンスターたち。
ミューは白銀の髪を揺らしながら、軽やかに剣を構える。
「アレンさん、前よりずっと強くなってますね。でも、私も負けませんよ!」
グラは黒髪の美女へと変化し、岩のような安定感を纏って立つ。
「ふふ、私の拳、受け止められるかしら?」
バルは筋肉質な戦士風の女性となり、炎を纏って構える。
「燃えるぜ……勇者の剣、見せてもらおうか!」
リリィは耳と尻尾を揺らしながら、弓を構えて微笑む。
「アレンさん、私も進化したんです。ちゃんと見ててくださいね!」
模擬戦が始まる。
ミューの剣技は鋭く、グラの拳は重く、バルの炎は熱く、リリィの矢は風のように速い。
アレンはそれらを受け止め、かわし、反撃する。かつての勇者としての勘が、少しずつ蘇っていた。
「……レイの力は、こいつらを信じる力か。なるほどな」
戦いの後、皆が地面に座り込み、笑い合った。
「アレンさん、強かったです!」
「またやろうぜ!」
「次は空中戦も混ぜてみましょう」
アレンは剣を膝に置き、空を見上げた。
「……俺はこの国で再起する。勇者としてじゃない。仲間として、もう一度立ち上がる」
その頃、政庁ではリゼが書類の山と格闘していた。
「交易許可証の発行、通貨換算表の整備、税率調整……やることが多すぎるわ」
レイがそっとお茶を差し出す。
「お疲れさま。君のおかげで、国が動いてる」
リゼは少しだけ微笑みながら、手を止める。
「でも、祭りの準備は進んでるわよ。民衆の笑顔を見れば、疲れなんて吹き飛ぶもの」
その夜、交易交渉の成功を祝して――
モルテア国初の“交易記念祭”が開催された。
広場には屋台が並び、魔族の料理、亜人の工芸、人間の踊りが混ざり合う。精霊たちも灯りを灯し、空には光の花が咲いた。
レイは子供たちと踊りながら、空を見上げる。
「この国は、まだ始まったばかりだ。でも、確かに歩いてる。みんなと一緒に」
リゼは政庁の窓から祭りを眺め、静かに呟いた。
「次は、もっと大きな波が来るわよ。レイ。あなたの国は、世界に見つかったのだから」
そして、物語は一旦の区切りを迎える。
モルテア国は交易国家としての第一歩を踏み出し、次なる章――“国際圏と戦略”へと進む。




