第24話「追放の記録・王都の再評価」
王都・ギルド本部地下室。
アレン・グレイバーは、重い扉の奥に通された。かつてSランクパーティーの勇者として名を馳せた男は、今や酒に溺れ、Dランクの依頼すら満足にこなせない状態だった。
「……で、俺に何の用だ」
ギルド長エルドランは、机に並べられた資料を指差した。
「レイ・アストリア。かつて貴様のパーティーに所属していた召喚士。現在、モルテア国の王として国家を築いている」
アレンは鼻で笑った。
「レイ?あいつは魔力の伸びが悪くて、戦闘でも足手まといだった。だから追放した。それだけだ」
「だが、記録によれば――」
エルドランは一枚の報告書を掲げる。
「彼は“能力が低い”と判断され、ギルドからも正式に追放処分を受けている。その決定を下した責任者は、当時のギルド副長。すでに呼び出し済みだ」
扉が開き、バルドが入室する。彼は険しい顔でアレンを見た。
「……まさか、あのレイが国を築くとはな」
エルドランは二人を見渡しながら言った。
「我々は、彼を“無能”と判断した。だが今、彼は精霊王を召喚し、神域を踏破し、国家を築いた。これは、王都の判断ミスではないか?」
アレンは黙り込む。
「貴様は“連れ戻せる”と言ったな?」
「……ああ。俺なら、レイを説得できる。昔の仲間だ」
「だが、今の彼は“王”だ。貴様の言葉が通じる保証はない」
バルドが静かに言った。
「レイは、あの頃から何かを“隠していた”。魔力の波長が異常だった。だが、それを制御できるようになったなら――今の彼は、我々の理解を超えている」
エルドランは机を叩いた。
「ならば、交渉か、侵攻か。王都は選ばねばならん」
沈黙が広がる。
その中で、アレンは静かに呟いた。
「……俺が行く。レイに会って、話をする。あいつが本当に“変わった”のか、確かめたい」
エルドランは頷いた。
「よかろう。だが、これは“交渉”ではない。王都の命令だ。失敗すれば、次は軍が動く」
アレンは立ち上がり、剣を背負った。
「レイ……お前は、どこまで行ったんだ」




