第19話「国交の扉・通貨と庇護の選択」
モルテア国・朝の広場。
「新しい避難者がまた来たぞー!」
門番の声に、村人たちが駆け寄る。今日もまた、森の外から庇護を求める者たちが列をなしていた。
魔族、亜人、精霊契約者、そして人間の孤児たち――種族も背景も違うが、皆が口を揃えて言う。
「ここなら、生きられると聞いた」
「王都では迫害された。でも、モルテア国は違うって……」
リゼが記録を確認しながら、眉をひそめる。
「今月だけで、人口が1.7倍に増えてる。このままじゃ、食料も住居も足りなくなるわ」
レイは頷く。
「でも、断るわけにはいかない。僕たちは“守る国”を作るって決めたんだ」
その言葉に、村人たちは静かに頷いた。
だが、問題はそれだけではなかった。
避難者の中には交易商も含まれており、物資の交換を求める声が増えていた。
「通貨が必要だ。物々交換だけじゃ限界がある」
「王都の貨幣は使えない。信用がないし、流通も止まってる」
リリィが地図を広げる。
「なら、近隣の国と通貨協定を結ぶしかないわ。王都を避けて、独自の経済圏を築くの」
レイは地図を見つめながら言った。
「南の商業都市なら、魔族との交易もある。中立国だし、王都の影響も薄い」
「北の山岳国も候補ね。鉱石と金属資源が豊富で、通貨の裏付けが強い」
リゼが提案する。
「まずは使節団を送って、国交の意志を伝えましょう。モルテア国が“国家”として認められる第一歩よ」
レイはギルドカードを見つめ、静かに言った。
「僕たちは、ただの避難所じゃない。ここは、誰もが生きられる“国”だ。その証を、世界に示そう」
その言葉に、精霊たちがざわめき、風が優しく吹いた。
モルテア国は、庇護の地から交易の地へ。そして、世界と繋がる“国”へと歩み始める。