第18話「進化の契約・美しき変異」
魔の森・南端。
レイたちは、遠征の最終地点である魔物の巣を制圧していた。強力な魔物を討伐し、村の安全圏は大きく広がった。
「これで、南側の脅威はほぼ消えたな」
バルが盾を地面に突き立て、満足げに言う。
だがその瞬間、異変が起きた。
レイのギルドカードが淡く光り、契約魔力が軋むように震え始める。
「……これは、召喚契約の“進化”?」
リゼが目を見開く。
「討伐によって魔力が蓄積され、契約が深化したのね。モンスターたちが……“ランクアップ”する!」
ミューの体が光に包まれ、グラの背から毒の棘が消えていく。バルの巨体が縮み、精霊の風が優しく舞い始める。
そして――
光が収束した瞬間、彼らは“人型”へと変異していた。
ミューは白銀の髪を持つ癒し系の少女に。
グラは妖艶な雰囲気を纏う黒髪の美女に。
バルは筋肉質な戦士風の女性へと。
リリィは尻尾をのこしながら元気いっぱいな獣人少女へ。
レイは目を見開いた。
「みんな……人の姿に……!」
リゼが微笑む。
「これは“高位契約変異”。召喚士との絆が深まり、魔力が安定したことで、モンスターが自我と形を持つようになったの。しかも……全員、女性型に変異してる」
ミューがレイに駆け寄る。
「レイ〜!これで一緒にお風呂入れるね!」
グラが妖しく笑う。
「ふふ、主様。この姿、気に入っていただけますか?」
バルは照れながら腕を組む。
「動きやすくなった。戦闘も、もっと柔軟にできる」
リリィはほほえみながら。
「この姿は、あなたとの絆の証。私たちは、もう“ただの召喚獣”ではありません」
レイは、彼女たちの姿を見て、静かに頷いた。
「僕たちは、仲間だ。姿が変わっても、それは変わらない」
その言葉に、モンスターたちは微笑んだ。
そして――
モルテア国に戻った彼らの姿は、村人たちに驚きと感動を与えることになる。
「えっ……あのモンスターたちが、人の姿に?」
「しかも、全員……美しい女性に……!」
「召喚士って、こんなことまでできるのか……!」
モルテア国は、再び注目を集める。
だがその裏で、王都の密偵が静かに国境を越えていた。