表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

第13話「怒りの胎動」



夜のモルテア国は、いつになく静かだった。


広場には、布で覆われた遺体が並ぶ。ゴブリンの子供。オークの若者。そして、庇護を求めてこの国に来たばかりの村人たち。彼らは“秩序”の名のもとに、王都の調査団によって殺された。


火葬の準備を進める者たちの手は震え、誰も声を発せなかった。


レイはその中心に立ち尽くしていた。


拳を握りしめ、唇を噛み、ただ静かに――怒りを飲み込んでいた。


「……守るって、言ったのに」


彼の声は、誰にも届かないほど小さかった。


リゼがそっと近づく。彼女の顔にも疲労と怒りが滲んでいた。


「レイ……あなたのせいじゃない。彼らは、あなたを信じていた。だからこそ、ここに集まった」


「信じてくれたのに……僕は、間に合わなかった」


レイは、布の下に眠る小さな命に膝をつき、そっと手を添えた。


「この子は、昨日“お兄ちゃん”って呼んでくれたんだ。笑ってた。畑で、ミューと水遊びしてた。なのに……」


その瞬間、ギルドカードが震えた。


黒い光が滲み出し、魔力が軋むように空気を揺らす。


リゼが目を見開く。


「その色……まさか、召喚領域が“深層”に触れてる……!」


精霊たちがざわめき、空気が熱を帯びていく。風が逆巻き、地面が微かに震え始める。


「レイ、落ち着いて。今のあなたは、精霊の領域を超えてる。これ以上踏み込めば……」


「僕は……もう、見逃さない。誰にも、これ以上は奪わせない」


その言葉と共に、魔力が爆発する。


地面に黒い魔法陣が浮かび上がり、空が赤く染まり始める。


村人たちが後ずさりし、精霊たちが警戒の声を上げる。


「これは……精霊ではない。もっと深い、もっと古い……“悪魔の領域”だ」


リゼが震える声で呟く。


「レイ……あなた、本当にその扉を開くつもり?」


レイは立ち上がり、広場の中心に歩み出る。


「僕は召喚士だ。誰かの命を守るために、僕の命を使う。それが、僕の選んだ道だ」


その瞬間、魔法陣が完全に展開される。


炎の柱が天へと伸び、空を焦がす。


禁忌の扉が、静かに開かれようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ