第12話「遠征の成果と迫る影」
朝霧が立ち込める魔の森の奥地。レイは仲間たちと共に、魔物の巣へと向かっていた。
「この先を制圧できれば、村の安全圏が広がる。資源も確保できるはずだ」
レイの言葉に、モンスターたちは力強く頷いた。
- バルが前衛を張り、魔物の突撃を受け止める。
- グラが毒霧で敵の動きを封じ、リリィがバフ魔法で全体の能力を底上げ。
- ミューは回復と浄化を同時に展開し、精霊が風刃で魔物を切り裂く。
魔物の巣は、かつて王都の冒険者たちでも手を焼いた危険地帯だった。だが、レイたちは連携と召喚魔法によって、短時間で制圧に成功する。
「これで、村の南側は安全になったな」
バルが盾を地面に突き立て、満足げに言う。
レイはその光景を見ながら、静かに呟いた。
「……僕たちの力は、誰かを傷つけるためじゃない。守るためにある」
だがその頃、モルテア国では“秩序”の名を掲げた暴威が、静かに門を叩いていた。
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モルテア国・正門前
重厚な鎧を纏った一団が、無言のまま門前に立っていた。
王都からの調査団――団長ブルゴス率いる秩序維持部隊。
「ここが……魔の森に築かれた異端の国か」
彼の目は冷たく、村の構造を見渡す視線には、好奇心ではなく“査定”の色が宿っていた。
リゼが応対に出る。
「王都からの調査団ね。歓迎するわ。ここは、種族を問わず共に生きる国よ」
「魔族が仕切っている時点で、秩序は崩れている」
ブルゴスはそう言い放ち、村の中へと踏み込んでいく。
だが、彼はリゼの力を警戒していた。
彼女が精霊魔法と魔族の魔力を操ることを知っていたブルゴスは、事前に“封魔結界”を準備していた。
広場に足を踏み入れた瞬間、リゼの体が重くなる。
「……っ、これは……!」
魔力の流れが寸断され、精霊との契約も遮断される。
リゼはすぐに察した。自分の魔力が、結界によって“沈黙”させられている。
ブルゴスは冷笑を浮かべる。
「魔族の力など、王都の技術でいくらでも封じられる。貴様は、ただの飾りだ」
リゼは剣を抜こうとするが、兵士たちが先に動いた。
「動けば、村人を斬る」
広場には、すでに数人の村人が拘束されていた。ゴブリンの子供、オークの若者、そして人間の老人まで。
リゼは歯を食いしばる。
「……卑怯者」
「秩序とは、力の使い方だ。貴様のような“感情で動く者”には理解できまい」
リゼは結界の中で膝をつく。魔力が流れない。精霊の声も届かない。
「レイ……早く戻って……」
その願いは届かず、ブルゴスの剣が振り下ろされる。
血が広場に散り、村人たちの悲鳴が夜空に響いた。
リゼは叫ぶことしかできなかった。
「やめて……お願い……!」
だが、彼女の声は結界に吸われ、誰にも届かなかった。