第八章 部活荒らし4
「レベル?」
「ゲートウェイドラッグって知ってる?」
質問を質問で返すのが好きな人だ。
イラッとはするが、試されるのは嫌いじゃなかった。
「大麻ですね。合法として認められている国もあるくらい一般化してきています。合法の国に旅行行った際にまず最初に試してみるって人もいるって聞きます。大麻は治療薬としての歴史も長いです。依存率で言えば煙草45%、酒12%、大麻9%。そういうネットで出回っている情報から安全だって勘違いするんでしょうね。一度でも使って気持ちよかったら他の物も試してみたくなるのに。大麻経験者が他の麻薬を試す確率、約50%。だからゲートウェイ。他の麻薬への入り口となるドラッグ」
「流石詳しいね。それと一緒でさ。まずは若い女の子で試してみる。次にもうちょっと年齢が上の人。これがレベル1。ある程度性に開放的になったところで今度は金払いの良い男を宛てがう。これがレベル2。そして」
途中、なんだって比喩が大麻? と、聞きながら頭にあったが、話が進むに連れて理解出来てきた。
なんだ結局龍神会が掴んでいないだけで男の客はいるのかという驚きもどこかへと消える。まさか――
「まさか、薬あてがってるんですか? 中学生相手に? 体売らせて? 客を取らせて?」
「ご明察。レベル3。脱法ハーブ」
「ばかでしょ」
呆れた。
大麻といえども、である。
脱法ハーブ。
ハーブと聞くと、大麻とはまた違ったハーブ系の薬草か何かで、名前からして大麻より安心安全だと勘違いしそうにもなるが、中身は結局大麻だ。
何かその辺の適当な草に、大麻を掛け合わせただけの代物である。
医療に使用する際に研究されていた。その過程で見つけられた法の抜け道。大麻の有効成分THCに、法規制を逃れる為の化合物をどんどん付け足していって生まれた合成麻薬。
安価。
毒性は不明。
作成者でさえ、どんな効果があるのか分からないという。
ある意味で一番ヤバいドラッグ。
下手すれば死。
「ハマっちゃえば抜けられない。抜けることができない。お金は必要。次の客を取らざるを得ない」
解説している菅原横目に呆れた息を吐く。そういうもの、が、生まれた時から周囲に当たり前にあった華英だからこその呆れ。
火遊びで手を出すべき代物じゃない。
ふと、それに至る。
「ああ!? 集団食中毒って――」
「ああ、あれ。出回ってる話だと病院から盗んだってなってるけど違うよ。出回ってるハーブ系ドラッグだよ。一応、大麻だよね」
「ねって」
「口割ってないんだろうねえ。由良さん、怖いから」
「どうしてそこまで」
華英は改めて相手を見た。
膝を抱えていた。顎を伝う雫が見える。華英の座るのは彼女の左側。ともすればそれは汗だったかもしれない。けれど、彼女が小さく呟いたその一言に、華英は確信を生む。
「助け」
「みーちゃんたちやるよー」
体育館から声が掛かった。彼女は頬を拭うと、すっくと立ち上がる。後ろから見る指先は震えていた。華英も肩に手をやる。
確かに四月のこの時期、まだ外は冷えるかもしれない。




