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第八章 部活荒らし2

 体験入部は二週間に渡って続いた。


 一日体験しただけでその部活の雰囲気が掴めるはずもない。対人能力には正直自信のない華英である。何故って、しょっぱな顔で引かれるから。

 華英だって、露骨に傷跡じろじろ見られ「うわあ」なんて反応されたら傷つくのだ。夜中、ベッドで思い出して、「はあ……ぐすん」と、ひとり溜息つくくらいには。

 負けん気は一人前。空気は読める。読めるが、読めない振りをして、どうせ入るつもりなど鼻からないと高を括ってこの二週間各部活二日と決めて荒らしに荒らしまくった。

 テニス部、陸上部、野球部、サッカー部、バスケ部、バレー部、柔道部、剣道部。土日まで使用した。体験と言いながらも、土日一日部活に出るのは、一日で部活の雰囲気掴める反面、しんどいことも多かった。

「やっぱいいでーす」と言えば、「なんで?」って顔されるし、ただただ体力的にしんどい。

 これはないなという、真面目で全うな部活は一日で済ませたりした。

 後半は『一年に部活荒らしがいる』という、噂が出回り、若干きつく当たられた。サッカー部、バスケ部の露骨な体当たり&ファウルプレイは華英もカッチーンと来た。

 我慢した。


 ――結論。


「サッカー部とバスケ部ね」

「私怨入ってない?」

 久しぶりの生徒会室である。園がくるりと椅子を回す。華英はソファにだらりと身を沈めながら、休息、という束の間の幸せ(で、あろう)を噛み締めている。

 テーブルが目に付いた。

 下を覗く。

 誰もいない。

「テニス部は? けっこうきつく当たられたんでしょ?」

「んー」

 華英は顎に手を当て思い出す。あれからも校内ですれ違ったりはする。その度に、声掛けられる。あれは――。

「あれは違うかなあ。ノリの良い先輩たちだよ。当たりがきついっていうより、ノリが体育会系だから慣れていない一年は戸惑うんだと思う。わたしはほら、実家が体育会系だから」

「体育会系?」

 やくざに体育会系という言葉は当て嵌まるのだろうか、そんな顔をしている。

「でも、それだけで」

「あれから何人かとライン交換してやり取りしてる。怪しいのがいたら言うよ。わたしだってこの短い間だけで相手の人となり分かるなんて思ってないし。おっと」

 ぺこん! と、華英のスマホが鳴った。

 あの後、荒らしまくった部活の何人かと個人的に親しくなって、こうしてやり取りしている。なので、華英のスマホは今鳴りっぱなし。

 華英は自身の境遇や仕出かした数々のエピソードを話すのに、なんの躊躇いも持ち合わせていない為、先輩たちはそれが面白いらしい。

 引かれず、面白がられれば華英は嬉しい。

 道化になっているつもりは毛ほどもない。

 そんな華英をどこか寂し気に眺めながら、園は言葉を漏らす。

「短い間だけでも怪しかったのがサッカー部とバスケ部と」

「うん。なんせ――」


「出たなあ。話題の一年。部活荒らしスカー」

「スカー……?」

「ハガレン。知らない?」

「分かんないです」

 大学生のOBが出入りしていたのだ。

 しかも件の赤いフィアットの女、京極裕隆の娘、京極由良(きょうごくゆら)。由良はサッカー部OBだった。聞けば、中学高校とサッカー部で、女子サッカーの経験が浅い顧問の代わりによく練習を見に来ているのだという。

「上のお姉ちゃんに似てた」

「ふうん?」

 テンションが高い。ノリが良い。ノリの悪い人にもノリ高く接してくれる。影のある、隅に座っているような子を平気で表に引っ張って来て、その子たち盾にしながら皆を楽しませる。その子たちの顔にも心なし笑顔が生まれている。


 受け入れられた喜び。


 さぞ上手い人なんだろうなあと思いきや、上手いが、たまにミスもする。

 みっともなく「いやあ、あいつが……」と、同じ調子で言い訳するもんだから、周囲もそれに応じて「ぱいせーん。そりゃあないんじゃないっすか~」などと応戦始めて笑いが生まれる。


 全てのきっかけ。そんな女。


「その、あいつが、の、指さした先にいるのが、影ある子だったり、隅っこにいる子だったりしない?」

「ご明察」

 園が唇を噛む。

「いる。そういう奴。マジで嫌い。心の底から大嫌い」

「そりゃあないんじゃないっすか~。かーらーのー、ほらあんたも言い返しなってなってー、ごにょごにょごにょごにょ陰キャが京極に口撃して、京極がオーバーリアクションで謝るかその子に抱きついて許しを乞うかでワンセット」

「うへえ……」

 そういうノリ嫌いだろうなあ、と華英は園を見て思う。わたしは好きだけど、と、小学校時代を想う。むしろ率先してやる方だった。姉に習って。だからこそ分かる。

 ああいう、場を支配する女は頼み事が上手いと。

 人の心に入り込み、心を擽る術を心得ていると。

「それで? バスケ部は?」

「バスケ部は――」


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