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第七章 お嬢様学校の下層2

「そっす」


 龍玄が顎を下げた。

 頷いたつもりらしい。

 霧ヶ浦女学校。

 中高大合わせたエスカレーター式、階層式の学校。この時期、車を持っているとなれば大学生しかいない。

「何度か跡つけて行きました。間違いないっす。その後出てこなかったんで」


 高校生は例え三年生が免許を取れても、車通学は基本禁止。他に教師という可能性が考えられるが、龍玄がこれまで確認したところ車種も顔も一致するような人間はいなかったという。

 なにより、運転している女は明らかに子供だった。


 要は、自分たちの手を汚さず、女子中高生に体を汚させて金を稼いでいるのだ。女子大生はそのマージンとして幾らか貰っているのだろう。紹介料か中継料か送迎料かは不明だが。

 華英は言う。

 心からの声で、

 吐き捨てるように。

「クソみたいな学校」

 そしてそんな華英をチラリと見、園は未だ正座の龍玄に尋ねた。

「完全に外部の人間って線は? あ、そっか。そもそも車分かってるんだっけ?」

「そっすそっす。ここ入り口にゲートあるし、カメラもあるし出るのは楽でも入るのは外部の人間だとけっこうきついじゃないすか。だからそれはないと思います」

 ナンバーだってそのまんまだ。

 中高大寮その他施設の敷地を囲むように塀、そしてゲートがある。開閉式のバーとカメラ。交代制で警備の人間もいる。寮などには入り口ホールにカメラもある。外部の人間の出入りは女子校ということもあって厳しい。

 校則は緩いが。

「車はすぐに分かりましたよ。なーんせ目立ちましたから。Nボックスだって黄色かった」

「……素人っぽ」

 車種も如何にも金持ちの女子大生が乗りそうだ。黒い後ろめたい仕事するには向かない車だろう。

 あまり車に興味がない華英でもインプレッサとNボックスくらいはすぐに浮かぶ。

「だから噛ませてくんねーかなーって考えてた御上方もこれ、けっこうやばいんじゃね? ってなってきて」

 それから、「なんて言ってたっけな」と、言葉を探した。少し待っていると再び口を開く。

「言っちゃえば警察沙汰にして全部しょっぴいて貰って邪魔もん排除って考えもなくはなかったんですが、なんせ相手が女じゃないっすか。そうすると」

「問題にしにくい?」

「そっす姉さん。それでさらに問題なのが探ってる内にこっちも予想だにしなかった大物が出てきて――」

「大物?」

 華英と園が揃って尋ねた。

 龍玄が頷き厳かに告げる。

京極裕隆(きょうごくゆたか)

「………………誰?」

 華英の疑問に園が叫びを持って応える。

「県知事!!」

「マジ? え? ここの?」

 華英が床を指さした。龍玄が頷く。

「マジっす。女子大生の三人のうちの一人が京極由良。赤いフィアットの女っす」

「ふーん」

「青のインプレッサが八坂銀行の取締役の孫、黄色のNボックスが早乙女医院院長の娘」

 名前の雰囲気だけみると確かに大物そうではある。

 が。

「ふうん? でもさ。わたしにはよく分からないんだけど、いくら大物が出てきたってあんたら龍神会?だっけ?には関係なくない? だって、要するにガキの小遣い稼ぎでしょ? そんなもん無視しとけばいい話じゃん。客だって被んないのに何をいちいちそんなやっきになって追いかけ回してんのか、わたしには意味不明なんだけど」

 華英は喋りながら立ち上がった。ずっと同じ姿勢でいた為、今になって脚がしんどくなってきたのだ。ベッドに我が物顔で横たわるくまを避け、そこに腰を下ろす。何を思ったのか、はたまた無意識にか、園まで隣にやって来て座った。抱き抱えていたぬいぐるみは持ったまま。そうして脚を組む。ぬいぐるみが園の腹と膝で潰れた。ふたりして龍玄を見下ろす形になる。

「生徒会の仕事かなあ、これ」

「どうだろう。流石に組織ぐるみの売春潰せってなるとね。中学校内だけじゃないし。上の方に目障りなのいそうだし、あたしたちだけじゃちょっと」

「ていうかさあ」

 華英の愚痴めいた呟き。言葉から、園も薄々察しているようだったが、敢えて言葉にする。園が頷く。

「やり口がカタギのそれじゃない」

「ところどころ素人臭さはするけど、まず間違いなく上になんかいるね」

 分析始めるふたりをよそに、龍玄は改めて居住まいを正した。

「みんなに、龍神のみんなにお願いしてるのは他でもないうちなんです。理由(わけ)は、いえ」

「?」

「?」

 そこで言葉を区切ると、ごくりと生唾を飲み込み両の手を固いフローリングに勢い突く。

 そのまま頭を下げ、額を打ち付けた。

「親父、姉さん、この通りです。力を貸してはくれませんか。使われてる子っちゅうのはうちの友達なんです。小学校の頃、友達ができなかったうちに、唯一優しく接してくれた、いっこ上の、みーちゃんなんです」

 黄み掛かったしっぽが、龍玄の動きに合わせて床へと垂れた。

 園のお腹がぐうと鳴る。

 赤面越しに時計を確認すると、針は七時過ぎを示していた。

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