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第七章 お嬢様学校の下層

 店舗を持たない人材派遣型の風俗、デリバリーヘルス、通称デリヘルを行っている嬢たちや待ち合わせ場所まで嬢を送迎する男たちが口を揃えて言うようになった。

「最近、変なのを見る」

 待ち合わせとしてよく利用する駅前、それからホテル、そこに年端もいかない少女、明らかに中高生くらいの少女がいる。最初は気にしちゃいなかった。ただ、この田舎で、高そうな服を着ていて、親子とも思えない組み合わせで、毎回見る相手が違っていて、いつも同じ顔――となると目立つのだ。噂が回るのは早かった。

「……パパ活ってやつ? やだね。校長が問題視してるのってこれ?」

「ここの子供がお金に困ってるとも思えないけど」

「でも裕福さが一種のステータスになってるきらいあるよね、この学校。入ってまだ短いけどなんか感じる。特にほら。ここ寮じゃん? 写真部の――菅原先輩の部屋入ったときなんかもそうだったけど、高そうなもんばっかだなーってわたし思ったもん。学校で家でさ。友達付き合いして部屋にまで出入りしたりしてる内に、隠しきれない派手な生活とか垣間見ちゃって羨ましくなってくんじゃない?」

「ああ……。さっぱりわからない」

「共感能力ゼロか」

「いや、うちも……じいちゃんらもそう思ったっていうか、そこに至るのも少々複雑で」

「?」

「?」

 相手――と、云っても相手は男じゃなかった。

 女性なのだ。

 同年代から少し年上からおばさんまで。組み合わせは様々だが、相手はとにかく女性。

「……なら、よくない?」

「うん。女の人相手なら」

「乱暴もないだろうし」

「妊娠の心配もないし」

「LGBTがどうたらって最近よく言ってるし」

「そっちでやってるデリヘルとも客層は被らないわけでしょう? なら、放っておけばいいんじゃないの?」

「親父、姉さん、流石っす。うちと同世代の女が示す反応じゃないっす」

「あんたに言われたないけど」

「もしかして馬鹿にしてる?」

「いやいや違くて」

「?」

「?」

 そう思っていたそうだ。客層が被らないならいいかと。

 同じシマに挨拶も無しで入ってきて、同じ商売始めてめちゃくちゃにされたら溜まったもんじゃない。だけどそうじゃないのだ。女性相手の風俗。それがこんな田舎にも。これも時代かと。ここは一つ噛ませて貰えないだろうかとすら考えていたそうである。

「ちょっと待ってちょっと待って。パパ活……じゃなくてー……ママ活? でしょ? 噛むも何も。個人が勝手にやってるってだけじゃないの?」

「いや、言ってたよね。毎回相手は違うって。だとすると」

「そっすそっす。流石親父」

「?」

「ふふん」

 毎回相手が違う。客層の幅もあり、若いのからそうじゃないのまで。同世代の友人……或いは親子……とも、片方はいつも見かける奴、そいつが会った瞬間その幅のある相手と恋人みたいに手を繋いでホテルか自宅に連れて行かれる……

 個人でやるには無理がある。

 無理は言い過ぎにしても、大変だろう。組織的なものか、そこまでいかずとも、複数人で行っているはずだ。

 インターネットでこの地域一帯、様々なSNS等も駆使して検索掛けてみたが、それらしい投稿は一件もなかった。

 知り合いの伝手なら年齢はある程度偏るだろうし、それにしたって女性趣味の女性がそこまでいるとも思えない。

「どこかから客を引っ張ってきているってことだよね? まあ、やってるとこ少ないだろうから需要はあるか。でも、なんでここの生徒だって?」

 華英の質問に対し龍玄は言った。

「追いかけたんすよ。跡を」

 相手と別れると毎回どこかに必ず連絡を取っている。車――車種はNボックスかインプレッサかフィアット500か、という、妙な組み合わせのどれか――が、いつも十分程でやってくる。運転席を見てみればこれも女。そしてやっぱり若い。どこか家にでも送り届けるのかと思い、付いて行ってみれば、ここに辿り着いたという。そして消えて行ったのだとも。

「ちょっと待っ……まさかとは思うけど」

 園は鼻で笑った後、右手を額に当てた。表情はすぐ苦しげなそれに変化している。


「女子大生達が女子中高生使ってお金儲けしてるってこと?」



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