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第六章 龍玄まりあ

「私は、あなたたちの敵」


「は?」

「に、なるかもしれない」

「はあ……」

 陰口みたいに容姿を弄ったこと怒っているのだろうか。結果的に陰口じゃなくなったが。

「調査、ありがとう。ちなみに写真は菅原さんに私のけーたいで撮って貰いましたとさ。うへへ。はずれ。それではみなさまごきげんよう。もうここは使わないようにする」

 ぎい、がちゃ、ばたん。

「つまり、どういうこと?」

 思わず顔を見合わせる、そんな予想をしていた華英だったが、横を向いてみれば園は北条が去っていった扉を見つめながら眉間に皺寄せていた。最後の挑発めいた言葉が大層癇に障ったらしい。蛙の子は蛙だなあと、内心呆れながらも、華英は園の眉間をぐりぐりと突く。

「にゃがあっ! なにすんだっ!」

 その剣幕に一歩引く。しかし、指先は園を指したままで。

「その筋の人じゃないんだからさあ。そんな、皺寄せてちゃだめだよ。おっかない」

「だっちゅ。たしのこと。かっ。してっ!」

 だってあいつあたしのこと馬鹿にして、と、言いたいらしい。

 沸点が恐ろしく低い。ここまでの付き合いでだいたいの園の沸点が分かった華英は、とりあえずつっつかないようにしようとぼんやり思う。

「まあ、わたしもちょっと頭に来てるんだけどさ」

 疑問の表情を浮かべた園に華英は答える。

「菅原先輩。あーんの人、初対面からなーんかずうっと薄笑いしていたけど、要はグルだったってことでしょ? うん。腹立つわ。今度お礼参り行かなくちゃ」

「警棒貸そうか?」

「なんでそんなもん持ってるの」

「護身用にって来る前いろいろ持たされてる」

 半ば冗談で言った華英に笑えない本気が返ってきた。

 いろいろ……と頭に入れつつ、いろいろ考える。

「つまりどういうこと? からかいたかったにしてはやけに手が込んでたし」

「ここは使わないようにするって言ってたよね? ここを使う用事……。そもそもあたしが鍵持ってるのにどうして入れたんだろう……予備の鍵があったとして……」

 ちゃりちゃりと回される生徒会室と書かれたプレートには確かに鍵はひとつしか付いていない。

「敵になるかもしれない」

「あ」

 華英が呟いたタイミングで何か思いついたみたいだ。園は「ちっ」と舌打ちすると、「ごめんすぐ戻る」と言い残し、さっさと部屋を出て行った。ひとり残された華英はどうしたものやらと室内を見渡し、とりあえず掃除しとくか、と、部屋の掃除を再開した。

 ぼんやりしていたせいであまり進まなかった。




 その後、判明した事実。

 白百合百合園が生徒会を発足する前に、現二三年生の何人かに生徒会発足の打診があったらしい。そりゃそうかと華英は思った。一年がやるよりそっちの方が本来正当だろう。

 しかし、これはなかなか上手く行かなかった。

 エスカレーター式であるこの学校において、中学段階での生徒会所属のメリットなど無しに等しい。面倒が増えるだけ。どころか、その面倒がとんでもない。白百合のように、条件となる交渉材料も、校長含めた学校側は生徒に対し持っていなかった。

 そんな時、生徒会をやっても良いと言ったのが彼女、北条時子である。北条はここの鍵を貸し出されたことからも分かるように(本来もう返してないといけない)、園が貰った生徒の資料含めてかなり話は進んでいたそうだ。この学校の問題点も予め共有してあったのだとか。

 ぎりぎりでその話を覆したのだという。理由を尋ねても本人は秘密、と。

「じゃあ結局北条は何やってんの?」

「さあ……」

 聞いたところで分からなかった。


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