第28話 義の男
朔は19日の早朝に起きると朝食に乾パンと苦いポリフェノールたっぷりのチョコレートを食べ、ビタミン剤類を炭酸ジュースで飲む。健康に気を遣ってんだか遣ってないんだか。
「はぁ......荷物の大半置いて来ちゃったから足りないや............並木さん......ショックで一瞬忘れちゃったけど忘れてはいけない......」
短期間の仲間の喪失如きで悲しむ朔。深呼吸をして落ち着いて身体の汚れを落とす為に服を脱いでシートなどで胸の下など、不潔な状態で放置するとカビが生える場所を消毒したりと念入りに綺麗にする。この身体になって無駄毛と言われるモノが全くないのは元々モサモサの朔にとって幸いだった。
「ブラジャーのサイズただでさえ合ってないのに変えが手持ちに一つしかない............ここは私の助けは無くともカシコミとかなんたらは銃で容易く倒せるだろうし、無理だとしてもわざわざミコトが数キロ離れたこの場所に来るのかも疑問だ。早急に外に出て物資集めと横須賀に............」
全裸でブツブツ言いながら身体を拭いているとドアが開く。
ドンドンッ!
「イヴさん、おは............!??し、失礼しましたっ」
(目キモっ!うわっ、でっか!?えっ?でっ!?でっかぁ!??でっか♡!)
女の自衛官がノックして入ってくるなり飛び込んで来るのは朔のボンキュッボンからのぞうさんバァン!の爆乳、腹筋がそれなりに割れてる細いウエスト、巨尻、巨根。上からわざわざなぞる様に見て焦り退室したが出るまで視線を外さなかった。
「ちょっと!......別に大丈夫ですよ〜。ただ返答を待っては欲しかったですけどね。今服を着ますよ」
(なんか前にも似た様な事あった気がするな............)
「も、申し訳ないです......急ぎではないので大丈夫です、要件は佐藤曹長がお呼びです。職員室までお願いします、それでは失礼しました」
「はい、お気になさらず〜〜」
コツコツと離れていく足音、朔は最後にシトラス系の香水をつけてゴムで髪を縛ってロングポニテにすると荷物を全て纏めて退室。
「うーん、そういえば写真を撮った時に気づいたけどスマホに写真がかなりあったなぁ............それのおかげで私がどいつか大体分かったし、本名は指輪を入れていた袋に入っていたメモの名前と同じ朔なのは確実。だが本名を名乗るメリットがないから偽名を貫くか............」
気がつくのが遅過ぎる朔はブツブツ呟きながら職員室まで向かった。
「失礼します〜佐藤曹長に呼ばれて来ました」
そう言うと少し奥にいる佐藤が振り返りこちらに来ると職員室の扉をすぐに閉めた。
「おはよう、朝から呼び出してすまない。朝食は摂ったか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。手持ちがまだあったのでさっさと食べました、要件は何でしょうか?もう今日の午前中には横須賀の方に向かおうかなと思っているのですが......」
「食べたのか、一応用意してあったのを渡そう。いつか食べるといい。栄養は大切だからな」
そう言うと紙パックの野菜ジュース2つと焼き鳥の缶詰2つ、水で戻して食べるタイプの乾燥ピラフが入った袋を渡された。
「ありがとうございます!」
「気にしないでくれ、備蓄はかなりある。それと少しこちらに来てくれ、本題だ」
そう言うと面談室の様な部屋に通され上座に座らされた朔。
「なっ、なんですか?」
戸惑う朔に向けて対面に座り話し始めた。
「君の存在を他の味方の自衛隊に伝えたところ、安全な場所でふんぞり返っているお偉いさん方から確保と研究の命令が通達されたのを上官の会話を盗み聞きして知った。私はそのモルモットの様な扱いをしろだと言うのは許せん、君を我々の戦力に無理矢理にでもするつもりだ。ここから普通に出ようとすれば殺し合いが始まる、自衛隊の人間から離れた方がいい。横須賀も行けば確保される可能性がある」
「な、何故そんな危険な事を私に教えてくれたのです......?」
「私の主義だ、階級での立場は上じゃないが上じゃないなりに反逆する。それに君は優しく繊細なところが見受けられる、そしてもし戦闘が起き私の部下や同僚が君を撃っても君は見逃すだろう。君だけが傷ついちゃあ胸糞も悪い」
「あ、ありがとう............ございます............ただ横須賀に身内や友人がいるかもしれない可能性がある以上、私は行きます!変装してでも!!」
その強い意志に悩むと一言。
「無理だ、その容姿での変装は。内部の情報に詳しい人を探す、もしくは無理矢理侵入して迅速に確認をして逃げるしかないな。取り敢えず時間は有限だ、ここから君を逃す。着いて来てくれ。外では通達されていない自衛官の方がまだ多いから裏門から出るぞ」
「は、はい......」
(嫌な予感がする......)
そうして外に出ると裏門に向かい着くと2人の自衛官が立っていた。
「お疲れ様、通るぞ」
なんと普通に誤魔化す事無く通ろうとする佐藤。
「はい!戻られるのはいつ頃になりますか?」
「すぐだよ、お客の彼女が食べたい物があるから近くのコンビニを漁ってくる。お客だから待っていて良いと言ったんだがね、私は強いから大丈夫の一点張りで困っちゃったから2人で行ってくるよ」
そう言いながらホルスターの拳銃を抜き、弾が込められているか確認する佐藤。あくまでもいつも通りの外出を装う。
「わかりました!もし門番の交代時間前にお帰りにならない時は伝えておきます!」
そう言うとガラガラと重い柵を横にスライドして開けた。
「じゃあ行ってくるよ」
そうして2人は外に出ると道路を曲がり直ぐに門番の視界から消えた。
「上手くいったな、俺は予め持っておいたお菓子で誤魔化すから逃げなさい。こちらでは止めたが直ぐに走って去ったと伝えておく、私に直接はまだ命令が来てないから問題ない筈だ」
「感謝します、世界が落ち着いたら会いましょう」
「ああ、私が生きていればこちらから出向くさ。元気でな」
「はい!では、いつか次会う日まで!」
そう言うと建物のパイプにしがみついて上に上がり佐藤の視界から消えた。
「あの力は確かに欲しくはなるな......。戻ろう」
そうして佐藤は戻り上官に報告した。
「なんだとぉ!?あいつ勘付きおったか!!」
「まあ我々の理解が及ぶ生き物では無いですから、どうしますか?」
「どうするも何も......こんな逃げられたなんて報告は出来ない。幸い、通達に返事はしていない。だから普通に既に此処から出て行った事にする。そうすれば穏便に済む」
「それが良いですね。我らの武器に食料は他の自衛隊の基地と比べて貧しいですから、嫌われてしまって物資の行き来を止められちゃ敵いませんよ」
「ああ。統合はしたくないしな、ここは広く居心地が良い」
「えぇ、では私は自身の仕事に戻ります」
(何とかなったか............)
「ああ、今日も一日生き残るために励もうじゃないか」
こうして佐藤は死亡フラグクラッシャーの朔の近くにいたおかげか穏便に済んだのであった。今回は下手に朔が出しゃばらなかったおかげだろう。
私立の学校って金かけてるからすごいよね




