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第26話 壊れた心には耐え難い

 12/17の夕方、横須賀行きの車内では雑談がされていた。


「そう言えばあの無反動のロケットランチャーをどこから手に入れたのですか?それも二つも」


 と少し笑いながら質問する朔。


「あれは秦さんが隠し持っていた武器っすね。何でも自衛隊の車両に残されていたのを取って持ち帰り、その後は自分の家族のテリトリーの壁に置いてボロ布被せてたんす。それを互いに別れる時に教えてもらって、って流れですね。......貴女を助けれたのは運命だったのでしょう」


 そう後悔は無い用な顔をしつつも暗くもある表情で運転を続けていた。朔は上手く返せなかった、そうしているとある事を思い出して彼に質問をする。


「そう言えば......並木さんのフルネームは何ですか?名を忘れた私が聞く事かって感じですが」


「自分は並木(つづり)っす!そう言えば言って無かったっすね〜。貴女の名前も知りたかったなぁ............っ!?あ゛ぁ゛っ!!頭が痛゛いっ」


 片手で頭を押さえながら急いで駐車した。だが場所と時間がが悪過ぎた、辺りはもうすっかり暗くなり感染者の気配もそういうのを感じない人でも感じるレベルの数がいる。


「大丈夫ですかっ!......畜生、めちゃくちゃにいやがる!私にハンドルを......と思ったけど危ないか......鎮痛剤の残りです、飲んで待っていてください。始末します」


「ぐう゛......だ、だめ............」


 引き止めようとしたが車外に出て行ってしまったので薬を飲み、窓を開けて銃を引き抜く。こんな状態でも援護をしようとする並木の優しさ。




「とにかくっ!とにかく建物の屋上に物資と並木さんを持って上がれる暇ができる数だけ倒せ......っ!銃声!並木さんの援護か......早く終わらせよう」


(何故そこまで頑張るんだ......)


 そう独り言を言いながら金属バットを振り回して首や頭を狙い処理するも、朔の馬鹿力に耐えきれずグニャグニャに曲がってしまい使い物にならなくなりゾンビが大勢いる方にぶん投げると一か八かに賭けて物資の大部分は車に残し、リュックと並木を持って建物の柵を登りアパートの屋上に跳躍して登った。


「はぁあ......はぁ......なんとか......なった?なったね............大丈夫ですか並木さんっ?」


「ええ、ありがとうございます。にしても、すげぇ......なんつー運動能力だ......。自分はまあ大丈夫ですよ。はぁ......声も容姿も女みたいだから頼りないってフラレ続けた理由がわかった気がするっすわ......」


「私は恐らくイレギュラーですから。それに!自身の苦痛に耐え私の援護だなんて勇ましく男らしいじゃあないですか!」


 本心から褒め称えた笑顔の朔に笑顔で返す彼。そして朔は下を見て状況を確認する。


「んー......多いなぁ。普通の人は群れないとやってられないな、えーっと......これだ!並木さん、私下のボストンバックを取って来ます!そちらの銃に残弾はありますか?あるならば私が下にいる間に自身に何かあれば空に向けて1発、他の危機には連続で2発撃ってください。直ぐに戻ります」


「あります......無理しないで............」


「大丈夫です!簡単過ぎる策があるので!」


 そう言うとリュックから空き缶複数個を取り出し持つと隣の建物の屋上に飛び降りた。


「......ゲームみたいにいくかな............??段々、私が何か思い出してきたかも......」


 策はゾンビゲームでゾンビから気を逸らすのに金属製の物を投げるというのを思いついた、というよりは思い出した朔は車から少し遠くに一つ投げた。


「ぐるぅ!?」 「ふぐぐ......ぶるっ!」


 一体が反応し呻き声を上げるとそれに釣られてドンドン動いていく、そこからまた更に遠くに缶を投げる。


「よし、案外チョロいな!よっこいしょ..................クソッ......」


 一気に飛び降りて車の前まで来ると反応しなかった数体がしゃがんでいたり、壁にもたれかかっていた。


「そうだ......感染が進むと一部の機能がダメになる代わりに他が冴え渡る奴もいるんだ......。......!!あの頃は確か仲間が居たぞ!まあ今回は私強いし1人でいいかしら?」


 そう言いながらゆっくり近づくと蹴り飛ばして頭と首を即座に踏み潰し処刑。壁にもたれかかっている奴の頭を掴み壁に叩きつけて処刑。最後に車の下にいた奴を引き摺り出して叫ぶ前に喉をナイフで刺し首を捻り処刑。


 ナイフの血をそいつの服で拭いてから消毒。そして難なくボストンバッグを取る事に成功したがまた離した奴らが戻って来たので直ぐに上に戻った。


「戻りまし......っ!大丈夫ですかっ!」


 上に上がるとピストルを持ったまま地に打ち上げられた魚の如く痙攣している彼を見て近づく。


「がっ!がぁぐぅ......だだっだめだっ!ころっ......殺し............痛゛い゛っ......」


 並木の綺麗で色白の顔に血管が浮き出て眼も血走る。さっき処分してきた奴らの様になり始めた彼はもう殺す様に言う。


「そっそんな......クソっクソ!畜生がッ!もしかしたら私の失われた記憶の中には発症を抑えれるモノがあるかもしれないのに戻る記憶はどれも中途半端ッ。耐えてッ!頼むから......」


 そう彼の手を握ると痙攣は止まるも症状が目に見えて進行していくのは嫌でもわからされる朔。


「あ゛っ......あ......貴女との旅路、すごく短かったけど楽しかった......最後......ま、で送れなくてごめっ......んなさい............もう終わりにしてください、奴らの仲間になりたく......ない......」


 そう言いながら朔の手を持ち腰のナイフの方に運ぶ。彼は首を切り裂きゾンビとして復活しない最善の手段だと考えた。


「い、嫌......いや、私が......私が責任を持って約束を守らなくて......」


 その時、未奈とブラン達との約束を少し思い出す。だが待望の過去の記憶でも構っていられる程余裕は無い、朔が鉄から譲り受けたナイフを抜き彼の首に突き立てた。


「ごめんなさい......私が出来るのは破壊だけで......」


 血の涙が流れる。


「クサい......けど幸せでした......ありが......とうござい、ます」


 そう引き攣る表情筋を必死に動かして笑顔を朔に向け自ら少し刺した、朔の精神的負担を少しでも減らそうと。それに答える様に深く突き刺し捻り裂いた。


「がぷっ......ゴフッ。ごぷゅぴぴるっ......ぶふっ......ひゅー......がぺっぷる..................」


 朔の手に添えていた彼の手は脱力し落ちた、最後まで笑顔だった。本心だったのか表情筋が固まってしまったからなのか、もう知る由は無い。


「ごめん......あぁ......こんな......こんな苦しむ方法を選ばなくても......それだけ成りたくなかったのね......」


 彼に跨って刺していたナイフを引き抜く最中も朔は泣き続けて並木の顔や首を更に汚すが、それを気にかける強さは無かった。


「うぅ............せめてこれを......」


 そう言うと自分の左手小指につけていた指輪を彼の左手薬指に着けた。彼も朔も指は細かった為に問題なかった。


「さようなら......とても優しい人」


 そう言うと彼の左手の甲にキスをしボストンバッグも車も放置してリュックを背負いパルクールで闇雲に闇夜に駆けた。一刻も早く忘れたかった、その一心で判断力を大きく鈍らせた。数時間後の深夜にやっと止まると情け無く大声で泣き叫ぶ朔。


「私がもう少し駅に滞在していればッ!私に破壊以外できれば。記憶が............記憶なんてあって何になるのよ......特別な癖に駅の人達の殆どを救えてない............本来の私なら助けられた?いや、あんな化け物を倒せないだろう。結局、前の私もイヴも役立たず......クソ............」


 ひたすら喚くと疲労からか民家の屋根で寝てしまい、そのまま転がり落ちるも運良く二階のベランダに落ちた。


 一方で追加で手に入れた物資ほぼ全てが放置され並木も本来なら火葬するつもりだったがそれも放置。その放置された並木は白目を剥いて口から泡を大量に吹き出し身体を包んだ。まるで朔が変異した時の様に何かを纏った。


 そして朔は激しい謎の音によって目を覚ます。


「あぁ......??んー?どこ?うるさ......私は昨日............殺したんだよね......ダメだ、なんだか記憶が混濁している......誰を殺した?私はイヴ?.....?苗字はなんだったかしら......??違うっ!イヴは本名じゃない!......なら何?......それよりもこの音は......銃声?こんなうるさいなんて何人いるの?頭が冴えないけどわかる、向かわないといけない気がする............」


 精神病だった朔の紙の様に脆い心はヒビが入り変異とは別にまた記憶障害が起こってしまうのであった。記憶喪失により精神病や不眠症は治るも負った傷は癒えて無かったのだ。それでも大量の銃声で誰かが傷つき死ぬのではと心配で身体を起こして様子を見に行くのであった。

かなしいね

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