第25話 ウホウホッと悲しみの襲来
ちなみにこの変異体の名前はナックルウォーカーって設定です。
朔はなるべく音の鳴る銃を使わず倒せないか考えながら接近をする。
「お次の化け物はゴリラや猿風だな、四足歩行と二足歩行の中間みたいな動きをしてやがる......そして顔は潰れて口だけか、耳は大きな穴だけ............こいつ音にしか反応しないんじゃないか?なら、躊躇っていた銃で方向を変えれる......?」
そう思い考えを180度変えてゴリラの顔目掛けて発砲するが、音を聞いていないのか攻撃が効いてないのか完全に無視。
「硬いな......顔は潰れてるがギリ視力とかあるのか?そもそもなんで日本にこんな変な化け物ばかりいるんだ??って今はそんな事を考えている場合じゃない、もうあのコロニーに近いっ!先に着かないとっ」
朔は本気で屋根から屋根を飛び走り追い抜きゴリラの前に出ると、その場でパンチで砕いた電柱をぶつけた。
「うがおお゛っ......ぐぎつ!」
ヘイトがコロニーの騒音から朔1人に移る。
「なんとかこっちに注意を逸らしたが全く効いてない......数百メートル先のコロニーの人間達は気づいているだろうか?流石にこの騒音を無視しないだろう......」
避難している事を祈ると同時に一定の距離を保つ為に動き回る朔。
「びゃああああー!!」
めちゃくちゃに暴れながらの突進に朔は被弾して壁にめり込む。
「がぁッ!......ち、畜生ッ......ぐわあっ!!ふ、防げんッ」
めり込んだ朔を何度も高速で殴り続けるゴリラ。そのまま壁を破壊して、電車の線路の支柱ごとぶち抜き転がって行く。その中で線路は倒壊してしまうがコロニー範囲外であるのが不幸中の幸いであった。
「..................ゴフッ......あ、ああ......」
服も破けボロボロになる朔だが諦めずに立ち上がる。ゴリラはドラミングの様な動きをして雄叫びを上げ周囲のゾンビを引き寄せている。
「私の大きさの大体2倍の化け物に雑魚の群れか............今の連撃で肩が......ぐっ!......ふぅ、ハマったか。なら良い、ヤろうか」
瓦礫からコンクリートが付いたままの鉄柱を引き抜き武器とする。ゾンビを迎え討とうするが様子がおかしいことに気づく。
「なんだぁ?いつもと違って全員走って来るぞっ!?それにどこに隠れていたんだ、この人数はっ!だが全員人の形を保っているし綺麗なのが多いな......?」
人数の多さと変異体がいない事を気にしながらも返り血を浴びない様に投石したり、フルスイングで頭を砕いたりしているうちに気づきたく無い事に気づいてしまい焦燥に駆られる。
「......こ、この人達はコロニーの人間じゃあないのか......??この顔見覚えあるぞ、あのボウガンババアだっ............しかし、こんなに直ぐに発症するものなのか......早く始末してコロニーを確認しないとっ」
そうは言えど数が多すぎる故に時間がかかっていると車の音がすると朔の後ろに止まるなり男が降りて来た。
「やっぱり貴女が戦ってくれていたんすね!あとはこれで終わりっす!!」
まさかの並木が車で駆け付けたのだ、しかもどこで手に入れたのか無反動のロケットランチャーを持って来てゴリラの顔目掛けて発射すると倒れた。そしてホルスターから拳銃を取り出すと言う。
「もう駅には住めないっす!感染者が数日前から紛れていたみたいで発症が早い人はもうなっちまったんです」
そう伝えつつ援護射撃を続ける並木に最前線で殴り倒している朔が問う。
「......くっ。秦さんは!?生存者は他にいないんですか!」
「秦さん家族はもう一足先に察知して逃げてます、あとは皆疑心暗鬼で殺し合って終わっちまいました......イヴさんも車に乗ってっ!逃げましょう!」
「だ、ダメだ!この数を見逃したら他の場所の生存者が殺されてしまうっ。それにゴリラも起き上がり始めた!」
それを聞き少し迷ったのちに朔に言う。
「......あと最後にもう1発ロケットランチャーがあります。それで終わらせましょう」
そう言うと銃をしまってそれを持ち構えた。
「私がある程度ダメージを与えるっ!はあっ!!」
棒をぶん投げてゾンビをまとめて始末すると、再度拾い蹌踉めくゴリラの脛をフルスイングで殴りつけた。
「うぼおおおお!!」
そこで跪いたところを少し吹き飛んだ頭を縦に殴り付け離れた。
「今ですっ!」
「よっしゃっ!......あっ!!」
並木は何故か手元が狂い、そうして発射された弾は無情にも顔の横を通る弾道であった。だが朔は強化された動体視力で発射された瞬間に気づき、空中で弾を掴んで無理やり方向転換させ後頭部を爆破する事に成功しゴリラは完全に動かなくなる。
「ダメかと思ったが、す、すごい............」
そう唖然としている並木に近づく朔。
「いやーアレが無ければ勝ち目が無かったです、ありがとうございます!」
(最後までウホウホ言わなかったな......あと火葬してやりたいがそんな暇はないか............)
「いえ......どうせダメなので貴女が戦っていたらと思って来ただけなんで......」
言い方が変だなと思いつつ上着などを回収して並木の車の助手席に座り走り去った。その場から去ったという事は本当に全滅なんだなと悲しくなる朔。
「......秦さん家族は生きてますよ。それに貴女のせいでは無い、悲しむ必要は無いっす............」
「......ありがとうございます。どちらに避難されたのですか?」
「............もう別れて行動する事にしたんだ、だからわからない」
「なっ何故?こんな世界で1人で行動するのは危な過ぎる、私も貴方を守れる自信も無いですよっ」
「ははっ、もう......良いのです」
そう言いながら腕を捲ると肉が抉れていた。それは歯型だった。
「そ、それはっ......そんなぁっ!」
「そんな自分の事の様に絶望しないでくださいよ。正気でいる間に可能な限り横須賀に近づきます............ただ、もう痛くないんです......この傷......最初は痛かったのに......。俺は......俺は一体何になるのだろうか、これだけは頼みますっ......発症したら復活しないくらいに殺してください」
時々コチラを見ながら運転をし介錯を頼む並木。
「............」
複雑な感情でただ涙を流し大きく頷く朔。手持ちのハンカチが真紅に染まる。物資の補給に金持ってそうな住宅の前に並木は車を停めた。
「道中轢き殺したあんなのになるのは......嫌だな。まあ、とにかくイヴさんが無事に横須賀に行ける様に食糧やら集めましょう!」
残り少ない人間としての時間を何故己の為に使わないのか疑問を問いかける朔。
「何故......なんで私をここまで助けるのです?」
「............まあありがちな一目惚れって奴っすよ。男は優しい人に弱いんすよ」
照れる訳も無く普通に答えた並木。
「そう......か............ただ私には......」
「わかってますよ、彼女さんか嫁さん......いるんでしょう?薬指だけ指輪してないですし、そこは自身も薄々はわかっているのですよね?」
「......そうですね、なんなら恐らく渡すつもりだった指輪を持っているんです」
「なら、尚更!再開しないとですね!では長距離ドライブの為に家を漁りますかっ」
そういうとバールを取り出すが朔が不要だと制止する。
「拳で十分ですよ!おらっ!!」
門では無く真横の壁を殴り吹っ飛ばした。理由はただ門より近いから。
「ひぇ〜......」
「家のドアも......ハッ!!」
踵落としでドアを吹っ飛ばすと家に侵入する2人。
「俺もそんな風になりたかったっすね」
そう褒めるが朔は曇ったので並木は焦る。
「い、いや、別にイヴさんは悪くないっすから!......少し甘かった俺のせいですから」
「私はいつ感染して、最初から理性を保っていたのかすらわからない。まだ並木さんが私の様な例外になれるかもしれないです......」
「性別すら変わって容姿もほぼ原型が無いなんて一体どうなりゃあ変身するんですかねぇ」
そう言いながら台所の棚から缶詰などを取る彼に冷蔵庫を開けている朔が言う。
「目覚めた時、私は全裸で周りに白いシルクの様な毛が散らばっていました。そういえば身体にも付着していましたねー......はぁ。オエっ......冷蔵庫なんか開けなきゃ良かった............」
「......繭?もしかしたら蛹にでもなるんすかね〜」
「まるで虫だなぁ......あ、ジュースあった」
コーラを棚から取って少し喜び笑顔の朔をただ見つめる並木。
「こっちになんて保存用チョコ羊羹なんてありますぜ!」
複数個入りの箱を数箱持って見せる並木。
「おお〜!羊羹もチョコも好きなんですよね〜混ざったらどうなるのだろう......」
喜ぶ朔を見て満足な並木はまだ何か甘い物が無いか必死に探す。その間は2階を見てきてくれと言われ朔は階段を上がる。
「なんか全部小さくて動き難い......私より身長高い人全くいないし本当に巨体なんだなぁ............あでっ」
また頭を打つ朔。
「部屋は2つか、臭いは外よりマシだしゾンビはいないだろう」
そう言いながら蹴破り侵入、ただ残念な事に有用そうな物は無かった。
「クソっ。これはミニマリストか部屋を持て余しているな、羨ましい。......羨ましい?」
変異前の朔は多趣味で部屋が足りないと思っていた、その記憶が少し蘇ったのか口に出た。
「......まあいい、次の部屋だ。........................成果は電池、オイル、オイルライター、タバコ、消毒液、ラジオ、新聞紙くらいか。この感じ年寄りの部屋だな、降りよう」
そう言いながらオイルライターをポケットに他はビニール袋に入れて降りた
「こっちは大した物無かったです、そちらは?」
「十分です!さっさと積み込みましょう!」
物資集めの為屋根のあるタイプの軽トラを使用している並木は、それに積もうとするが朔が止めた。
「この程度私1人で大丈夫です!いつでも発進出来る様にスタンバイしていてください!」
少しでも楽をさせたかったので無理矢理にでも並木を休ませて詰め込むと狭い助手席に座る。
「完了です!」
「わざわざありがとうございます!では行きましょう、横須賀に!......と、忘れていました、この金属バット持っといてください。銃弾は貴重ですし素手よりやりやすいでしょう?」
「礼を言うのはこちらですよ......これもありがとうございます。ではお願いします!」
こうして2人は横須賀に向かった。だが結論から言うと横須賀までは到着出来なかった、彼の心は脆過ぎた。
私は暗い話は好きじゃ無いです。




