第24話 性善説を信じる主人公
12/17の朝7時過ぎに朔は起きて、洗い流さなくて良いジャンプーや汗拭きシートで身体を洗い、自前の保存食で食事を済ませたタイミングで秦が話しかけて来る。
「ど、どうも、おはようございます。数時間前は申し訳ありませんでした、失態続きでありながら貴女の優しさは変わらず......本当に感謝します。............それとガメついようですがその空き缶頂けませんか?」
欲しいけど流れ的に要求するのはおかしいよな、でもやっぱり欲しいなと秦は空き缶を要求。
「お気になさらず、他者を害するより優しくする方が自分的にも気分が良いので。空き缶?糸で吊るして鳴子でも作るのですか?......まあ要らないのでどうぞ!」
「おお〜そうです!まあゾンビと言うよりは対人用ですかね、ありがとうございます――」
それを聞いて早速盗み対策でも始めたのかなと思う朔。それが刺激になったのか工作関連の知識が更に思い出し始めるが、それの反動か強い頭痛に見舞われその場で膝をついてしまう。
「うぐあ゛あ゛っ......い、痛い。く、薬をっ」
自分のバッグから急いで頭痛薬を取り出して飲もうとするも、痛みで薬のビンを地面に落とし転がって行く。それを秦が取ろうとする。
「大丈夫ですかっ......っひぃ!??血、血がっ出てますよっ。......えっ眼、眼か、から??ぎゃあああ!!!」
朔は痛みの反射で血の涙を流している姿を見て恐怖し叫んでしまう。秦の声を聞いて人が集まって来る中で薬を飲み痛みに耐えていると銃やボウガンを所持している複数の住民が朔に向け構えた。
「やっぱりゾンビだろっ!出て行けっ」
「いや、ここで撃ち殺すべきだ!首に紐かけて吊るせ!!」
「............」
(く、くそっ......血が口にまで入っちゃ......??お、美味しい?血が?......もしかして心までゾンビになるの......か............メンタルが不安定に......なるのはマズい、逃げなくては............ここの住民を喰ってしま......う......)
そうして外野はほぼ動けず頭を抱える朔を処刑しろとコールが始まる。秦は情け無く尻餅をついたまま、別にこの程度では死なない朔だがこの仕打ちにショックを受けていると並木が銃を向ける連中に向けて、いつも内ポケットに入れている警察の弱く小さい拳銃とは違う、二丁の拳銃を腰のホルスターから引き抜き言う。彼は外の世界で毎日物資集めをしている為に戦闘力も装備も頭ひとつ抜けている。
「やめろ、恩あるお客人に対する態度か。この壁も!覗き窓があるドアも!昨日のたったの数時間で作ってくださったのだぞ!そもそも彼女はゾンビにならないと自己申告している上に、この異質な強さと姿からして理性を保って既に感染していると見られる。そして何よりも彼女に感染力があればもう既に誰かしらに感染しているに違いないのだから武器を下せ、これはサブリーダー命令だ............大丈夫ですか?」
あまりの無礼に少し前のヘラヘラした感じは無く淡々と怒る並木は朔の方に向かい介抱しようとする。ただ声も顔も女みたいな彼には威厳が欠けた。だが一応住民達は不服だが物資集めの人間と敵対すれば己が外に行かなければならない為に武器を下ろす。
「申し訳ない.....記憶が戻りつつあるんですがぁ......どうもそれのせいで頭が痛くて............」
「水分をもっと飲んでください、頭痛薬は水分が少ないと効きが悪いんです」
貴重な水分を躊躇いなく飲ませる並木。そうして水を飲んで安静にしていると回復した。その間に秦は住民を宥めていた。ここの長の2人がまた朔に寄って来る。
「もう大丈夫ですか?先程は何も出来ず申し訳ない、本当に私は何故リーダーなんかしているのか......私がこの役職なのも全てまぐれの連鎖でなったモノですから............あと彼らも神経質になってしまっているのです許してください」
自己嫌悪する彼に並木が言う。
「人をまとめる力はあるんだから誇ってくださいよ。それと横須賀に向かうにはこの線路を通るより道路で向かった方が良いですぜ、その方が楽でさぁ」
「大丈夫です、わかってますよ。......そうですかぁ、ならばナビが生きている車でも探します。......これ以上の混乱は招きたくないので出ていきます、達者で。ありがとうございました!」
そう言うとドアの方に向かい2人に挨拶をして出て行った。
「さて、冬のエンジンは死んでるからなぁ......なんか、こう楽な車ないかな............例えばキャンピングカーとか」
そう言いながら一般ゾンビをしばきながら民家を漁りに行くと地響きと揺れに見舞われ焦る朔。
「地震かっ!??......いいや、違うッ。これは......この感じはっ!!」
また嫌な勘が働き民家の屋根に登り周囲を見渡すと、先程居た駅の方に向かって約4mの巨人がゴリラの様に走っている。
「こっこれか!私の見せた写真で並木さんが反応した巨人っ!どう考えてもさっき叫び過ぎたんだ、これじゃああの駅の人達は..................しかし、私を敵と見た人間を助けるのか。いや、そもそも助けられるのか?この貧相な装備で」
悩むが悩んでも仕方ないとやる気を出す朔。
「私は性善説を信じている、彼らも悪意の塊という訳ではない。故に私は見捨てないっ!やれるだけの事はするさっ!」
そう言いながら上着を脱ぎ捨てて無茶な戦闘を始める。




