表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/28

第23話 ヒトが嫌いになりそうな話

優しい人ばかりでは無い。

 朔はこの後12/16の昼まで佐田一家の家で休んで、娘ちゃんと肩車したりと遊んでいた。だがそろそろ出る事にして準備を終え別れの挨拶を告げる。


「すみません、数日間もありがとうございました!食料に充電など特に助かります。それとここの住所はメモしたので、またいつか土産でも持って来ます!」


「もう行っちゃうのぉ......イヴちゃんんん〜」


 娘が悲しそうにイヴの足に抱きつく。


「ごめんね......まーちゃんのプレゼントが届く様に、サンタさんのお手伝いしないといけないからね。だからイヴちゃん頑張っちゃうぞ!............だから......まーちゃんも元気に頑張ってね......みんなで撮った写真を見て思い出してね............私もそうするから」


 そう頭を撫でながら涙を堪え言うと佐田が言う。


「こちらこそ本当にありがとうございました......またお会いする事と、その時は本名を知れると嬉しいです。自分と家族探しの旅頑張ってください!......あ!横須賀の米軍基地に行かれてはどうでしょう?ニュースによるとアメリカは急いで逃げて行ったので武器が豊富かもしれません、もしかしたら先に生存者が拠点にしているかもしれませんが............まあ、それも攻撃的な人たちで無ければ情報くらいは聴けるかもしれませんので」


 自分に武器をくれた朔の身を案じて、更なる武器があるかもしれない場所を示した。


「横須賀........................えーっと......神奈川ですかぁ。少し遠いですが使える車かバイクを探して行ってみます!ありがとうございました!」


 横須賀がどこかギリギリ思い出し、そう言いながら家族3人に手を振り走り去って行く。


「さて、どうするか。私は神奈川までの道を知らない............あ!電車だよ電車!線路に沿って行けば良いんじゃないか!......駅名なんて覚えてないし知らないや............まあ行くだけ行くかぁ」


 と近くの高い建物をパルクールで登り線路を見渡して探す。


 この時点での朔の装備はナイフ、デザートイーグル(2マガジン)、約数日分の食料と貴重品にその他小物などである


「......あれだ。確か私は満員電車が嫌いだった......気がする............とにかく近づくか」


 そこから道中の建物から盗った金属の棒でゾンビを処理しつつ移動。駅に近づくにつれて異変に気づく。


「んー?もう誰かがゾンビを殺しているなぁ?それも雨に濡れてないからかなり最近だぞ?......死因は打撲と......矢?によるものかな??私も弓矢を作るのも悪く無いかもな」


 何体も横に置かれている遺体を棒で動かして確認していると駅自体も変なことに気づく。


「あら?入り口が廃材で塞がれてる?ドアみたいなのはあるけど向かいの入り口も塞がれてるんだろうな............それに関わって大丈夫なのか?己の本能?記憶?がああ言うのは面倒だと知らせているが......」


 銃を抜き慎重に隠れながら近づくと手製の見張り台らしきモノに人が立って居るのが見えた。


(......見たところ自衛隊でも警察でもなく一般人のコミュニティか?持っているのは............弓?弓の銃??......とにかく、どうすれば穏便に接触できるか......)


 そう考えていると車の走る音と奇声が聞こえた。車は壁の前に止まり中の人は急いで中に入ると鍵を閉めた。中から揉めている声が聞こえる。

 


「なんで撒いて来なかった!あの数だと3mくらいしかない壁が危ないぞ!」


「しょうがないだろっ!お前も知っての通り道路は放置された車が多くて面倒なんだよ!」


 そう言いながら車の男は警察官が使う弱いピストルを出す。


「ちょっとあんたら今揉めてんじゃないよ、処理をしないと!」


 と見張り台にいるおばさんが怒る。これを好機と見た朔は大声で話しかけ近づく。


「待った!そのゾンビの処理を私が引き受けよう!数は......16人で異形の奴が数人かっ」


「だっ誰だ!??女か?」


 壁の向こうの男は困惑しながら見張り台の女の方を向く。


「なっ!目の前の道路から身長2m以上の銀髪の白コート女が走って来ているっ!?」


「2メートルッ!??」


 そうして驚いている間にその辺の廃材を投げつけたり蹴り飛ばして返り血も浴びずゾンビを瞬殺した朔は駅の人間達に話しかけた。


「どうも、怪しい者では......」


 そう言い途中に朔の異常な目を見た女は恐れ慄き発狂してボウガンを向けた。


「キャー!!眼のば、化け物っ!!」


 照準を貴音の顔に合わせて発射。


「馬鹿っ!助けてもらっ......」


 車の男の声も虚しく朔の顔に向けて放たれた矢は止まるはずも無い。だが朔は超人的な反射神経で矢を掴み止めて見せた。有名な暗殺拳の様に撃ち返したりはしない。


「と、止めた!?......っ!?あ、わ、悪かった!銃を抜か......」


 焦る男を無視し、朔は矢を持ったまま無言でデザートイーグルを引き抜き女の方向に数発だけ発砲した。そうすると少し離れたところにいた犬のゾンビ達を正確に射殺していた。


「そうだ、その武器はボウガンだ。そして私を見て叫んだせいで来た犬を撃っただけです、もう少し声量に気をつけてください。......女は感情的なんだから見張りなんかに向いてないだろっ」


 最後の方を聞こえない程の小声でキレつつ言い銃をしまった。善人な朔も自分の眼を見たらどう扱われるかわかっていたが流石にイライラしてしまう。そうしていると壁の奥の男も出て来る。


「も、申し訳ない......私はここの初代リーダーをさせてもらっている秦だ。彼女は貴女の............稀有な見た目に戸惑ってしまったんだ、すまない許してやってくれ......」


 秦となる男はかなり小柄で年齢は判別しにくい容姿であった。彼は女を奥にやり車の男は秦の隣に居続けている。


「まあ......誰しもこの眼を見れば驚くでしょうし、なんなら当の本人も驚いたので良いですよ。リーダーさん。その代わりこの写真を見てもらえますか?誰が誰かわかりませんか?一応私の友人と家族だと思うのですが」


 そう言うとスマホの待ち受けを見せた。


「本当にすまない、ありがとう............だが恩を返せそうにない。それに一応とは?......やはり誰1人全くもって知らないです......あ、君も見てみてくれ」


(初めてリーダーと言って疑われなかった!身長152しかないからな俺......頼りないよな......だから武器を隠し持っているんだが............にしても、この人は恐ろしい姿だな......)

 


「えっ、あー?まあそうですね............っ!?こ、この巨人は......いや、顔が違うか............」


 妙な反応をする男に朔は迫る様に問いかける。


「何かあるのですか?似た様な人物を見たのですかっ??」


「い、いや車で物資集めているとこう言う人の見た目からかけ離れた多種多様な化け物を見るモンでして、まあ写真のはデカい人ってだけなんでやっぱ違うかなと......貴女はそう言うのは見た事ありますか?......そういえば貴女の名前は何ですか?外国の方です?」


 やはり何か何まで異質な朔に対して大量の質問がある様だ怒涛の勢いで聞かれる。

 

「数日前に4〜5mの目玉だらけの肉団子の化け物を処理した、そして私の名はイヴです。まあ偽名ですけどね、なんせ記憶が無いので人種さえもわかりません......ただ記憶を失ってから初めて会った人によると私の性別は特殊なモノらしく両性なのです。......そこで私が並みの人類とは違う事に気がつきました、感染もしませんしね。涙も血液のまま、鮮血の綺麗な赤......私が何者か、その写真の人物が誰なのかを探しているのです......少し話し過ぎましたね、すみません」


 自分と探している巨人はやはり人では無いのかもしれない不安で多弁になってしまう朔。


「いえいえ、そうでしたか......取り敢えず中にどうぞ。お礼をさせてください。ここには約20人程が暮らしています、感染していないことを示せるのならば誰でも受け入れています......とは言え路線が一つの小さい駅なので限界がありますが」


(恐ろしいとは言え礼くらいはしなくてはな......)


 そう言いながらドアを開けて招く秦。


「俺は混乱しない様に言い回って来ます!あ!それと俺は並木って言います〜それでは〜〜」


 そう言うと走って行った並木を見ながら入ろうとすると頭をぶつけてしまう朔であった。


「イデッ!......ふぅ、おお〜とても綺麗ですね!コンビニをそのまま売店として使っているのですか?通貨は?」


「物々交換が主流ですね、並木君がここのコロニーの物を集める係兼店長です。まあ勝手に彼があまり物を陳列して始めたモノなんですけどね」


 と笑いながら彼は言うので笑い返す朔。


「しっかりしてますね」

「しかし、駅は雨風凌げて良いですね。ただはっきり言うと、あの壁は不安定である気がします。私が補強しましょうか?」


 端の方がスカスカであったり欠点を見て恩を受ける側がまた助けようとする。


「......とてもありがたいですが私達はもう貴女に借りがあるのに返せていないのですよ。良いのですか?」


「借りだなんて、あの数は私にとっては大した事無いですよ!それより生存者の数を増やす方が優先です。この絶望の世界でも未来に投資です、今も大切ですがそれだけではなく明日を............記憶は無い私ですがこう言う環境にはなんだか慣れを感じているのです」


 ただゾンビ作品が好きで手先が器用なだけである。


「あ、ありがとうございます!お願いします!」


(大丈夫か?裏があるのでは......?)


 秦は異常な善意を疑い上着の内ポケットにある拳銃にこっそり手を伸ばす。


「あ、それと一つだけお願いします」


「何でしょうか?」


(そらみろどうせ碌でも無い事を言うぞ......)


 この世界で人間不信気味になっている秦。だが朔の要求は想定外なモノであった。


「甘い......そうだなぁ果実系の飲み物とお菓子を頂けます?なんだか無性に食べたくなるんですよ。多分前の私も好きだったのでしょうね。ではその辺の壁に使えそうな物を集めるので見張り台からの援護をお願いします!............その銃で......ね」


(まあその程度の銃なら死なないけどね......酷いよ............)


 笑うも不気味な眼だけは笑わず外に出て行く朔。秦はバレていた事にもショボい要求内容にも驚き1人でパニックになる。


「なっなんでだっ!?私が銃を持っているなんて一言も言っていないぞ!............はぁ、悪い事をしたな彼女には......普通に優しい人もいる事を忘れない様にしなくては、でなければ不意打ちの意図に気づかれた時点で私は殺されていただろう......」


 一方その頃自動販売機をそのまま持って駅の壁として使おうとする朔は落ち込んでいた。


(......記憶を失う前の私......いや俺だったか、こんな苦労は心労は無かっただろうな......彼らではなく疑心暗鬼にさせる、こんな世界が悪いのはわかるけど......)


 なんて考えていながらも夜になる前に両方の門と壁は強化され、ゾンビが登れる様な突起も無くし見張り台以外にも攻撃ができる様に、敢えて穴を開けて撃つか槍を使う様にした。そして中の飲み物は全てこじ開けて駅のコロニーにほぼ寄付した。流石に少し疲れた朔は服を汚さない様に駅内で座り込む。そこに秦が来る。


「......先程は大変失礼しました、貴女を疑い過ぎました。本当に感謝します......これはお詫びです」


 そう言うと保存食と甘味多数を渡された。


「今度は毒ですか?......ははっ、なんて冗談ですよ、ありがとうございます!」


 そう言うと上着を脱いで楽な状態で飲食をする中で秦に質問する。


「質問なのですが横須賀の米軍基地にはどう行けば良いですか?」


「へ?......何故わざわざ危ない所に?奴らは私達を襲う野蛮な連中ですよ。どうしても行くと言うならばこの駅の線路を歩いて行くとかなり楽になるとは思いますが......」


「野蛮?軍人がですか?......私が記憶を失い目が覚めたのは焼け野原の大宮駐屯地なのです。軍人や自衛隊が危険ならば私は何故あそこに......?」


「それは分かりませんが......自衛隊が人間狩りをしているのは事実なのです。全てがそうか分かりませんが生存者のいる家に罠を仕掛けたり放火したりと、ここにいる方にも被害者はいます、それが事実です」


「そんな............」


 ショックを受け項垂れる朔。


「取り敢えず、今日はもう夜になりますし泊まっていってください。ショボい防寒具しかありませんが......」


「お気遣い感謝します、私は寒さに強いので大丈夫です。そこの柱に背をつけて寝ます」


「そ、そうですか。では、おやすみなさい。私も家族の元に戻ります。明日にまた横須賀に行く計画について考えましょう」


 そう言うと去って行く秦。それを見送ると眠り始めた朔。そこから数時間経ち熟睡したと判断しコロニーの人間が近寄ると荷物を漁り始めようとする。


(馬鹿め、無警戒に他者のテリトリーで寝るなんてな。世間知らずなんだろう記憶喪失だと言うしな。それに流浪の怪力巨人女の事だ、各地で様々な物を強奪し良い物を持っているに違いない)


 そう思って男が指輪と金塊の入ったバッグに手を出そうとした瞬間に首元に冷たい感触を感じ反射的にフリーズした。


「記憶喪失のお人好し相手ならイケると思ったのか?この指輪はサーシャと未奈の為だ、名も知らん野郎のテメェのモンじゃねぇ」


(......サーシャ?反射的に声に出たがブランと未奈って人の物じゃないのか?3個目に俺と書いてあったが違ったか?)


 朔に隙は無く男の首筋に大きめのナイフの刃の無い部分を当て眼を大きく開け威嚇した。そして自分の発言に疑問を持ち困惑する。


「てっ、つっ、わっ悪かったっ!だっだからそれを首から退けてくれぇえ......」


「大声を出さないでください、化け物が集まりますよ。......チッ、あの優しい家族が恋しいよ」


 そうして騒いでいると秦と並木が来て事情を説明された。そうすると並木が盗人をいきなり殴りつける。


「テメェか!仕入れたモン無くなるわ、人の持ちモンの紛失物が多発している理由は」


 前からの常習犯だったらしくかなり怒っている並木。


「わ、悪かったよ......物資集めて返すから許してくれ............」


 と土下座で謝る盗人に頭を踏みつけようとする並木、だがその足を軽く蹴り阻止する朔。


「やめなさい、そこまでしては貴方の元から正義や怒る大義は消えますよ」


「恩人だが外のモンにあんま言われたか無いですけどね」


「......ならば返しきれない私に対する恩とやらに免じて彼を許してやってほしい。......今はAM3:01か、これっきりで私はもう出て行きます、なので何度も言いますが彼を許してください」


 なんの得があるのかわからない秦は聞く。


「何故......何故そこまで他人に優しく出来るのですか?こんな略奪と死の世界で」


「ただシンプルに......同じ人類(ヒト)だから。......記憶喪失後に初めて出会った人の優しさに触れ確信したのです。誰彼構わず信用するのはいけないが少しは気を緩めないと、ここのコロニーの未来は暗いでしょう。彼が盗んだ理由から解決しましょう、罪を憎んで人を憎まず。理性的に考え更生の機会は必要です、私刑を行えばいずれは自分の番が回ってきますよ」


 同じ人類なのかわからない朔がそう言うと盗人は残り2人に色々話し彼らだけで平和的解決をした様だ。ゾンビ作品でのありがちな身内の揉め事による破滅は回避した様だ。そこからまだ寝ていってと言われて渋々眠ると朝を迎える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ