第17話 本当にくだらない作戦
11/27の朝8時頃、煙草が指導して金属類の廃材で作ったつぎはぎの金属の鎧を小谷が試着していた。未奈とブランはそれを見守っている、そして朔はまだ睡眠中。
「どうだ?金属の隙間に肉が挟まって痛くは無いか?対人では銃やロケットランチャーなどを撃たれる可能性がある。だから、念のために壊れた戦車の装甲の部品などで作った。だがまだ替えがない。それに機動力も下がるだろうからゾンビや変異が進んで奴らを処理する時は、いつも通りパンツか全裸で頼む、金属製の防具を水で洗いたくないしな」
「良いかんじ!ヘルめットは......いたいのでクッションがほしいっす......」
「わー神話とかの映画の巨人兵士みたい」
「強そうだね〜」
「そうか、ではヘルメットは改善しよう。いらない毛布類を貼り付けてみる。無い事が一番だが......対人戦となれば君の姿と朔君の顔を見るだけで恐れ慄いて逃げるだろう。だから悪人相手とは言え両者犠牲の無い様にもう少し威圧的な感じに改造するか......悪いが着て早々だが脱いでくれ」
「はぁいィ」
ガチャガチャ大きな音を立てて脱ぎ、下半身に布切れだけの姿になる。
「そう言えば最初に戦った時は顔が歪でしたが、今では結構元の顔に戻ってますね」
「確かに〜体型もデブで醜かったけど、今は背筋も伸びてシンプルに昔の見た目の細マッチョから大きくなった感じだね」
「そうか?なららっきーだなぁ......」
そう言いながらペタペタ自分の顔を触る。
「朔が言うには口に何個か手榴弾入れて爆発させたってのに全然傷残って無いね、戦車で撃ち抜かれた時もすぐ治ったし............」
そう話しているとサイモンが来て話を遮る。
「いや、戦車に関しては小谷君だけの力だけでは無い。朔君の血の涙が治癒させたのだ。手榴弾の方は単に仕留めるには威力不足だったのだろう」
「なんと!?万能薬ですか!??」
興奮気味の未奈に、残念そうにサイモンが言う。
「いやー......これがねぇ、朔君は珍しい血液型のO型RH-で更にこの効能は私も万能薬になるかと思ったんだがね......効果があるのはゾンビとかの感染者だけみたいなんだよ......傷をつけた健康な人とゾンビの皮膚に垂らしたらゾンビの皮膚だけ修復が始まってね............朔君が理性なかった場合、我々ノーマルな人類は絶滅してしまうほど不利だったと言う事がわかった......まあ簡単に言えば変異体専用回復薬だね、あのムキムキの姿でヒーラーという訳だ、ただ残念な事に朔君自身には効果がないみたいだ、ヒーラーの運命だな。まあ自己治癒能力が強いからあまり憂う必要もないがね。それに恐らく変異度を可変出来て、かなり普通の人の形を保っているイレギュラーだからだろう......変異体の枠組みにも入らない様だ............ん?なら何故、ほぼ普通の人の私が実験で自分につけた切り傷も治ったのだ?......ああ、朔君はまだ変異度IIIにはなっていないって仮説がここに来て納得する形に......」
と長々喋っているとブランが心配そうに言う。
「じゃあ、それって......色々と狙われたりません?」
「......あぁ?ああ、そうだ。化け物を回復させる兵器に使われるか人類平和の為に処刑されるか、いずれにせよ碌な目に合わんだろう......」
「そんなぁ......」
「やばいじゃん......」
「本人の俺よりショックを受けるなよサーシャ......未奈......」
そう言いながら朔がこちらに歩いて来た。
「俺が今度こそまもるっ!」
マッスルポーズを取る小谷。
「頼もしいな!............」
「いや、2人とも死んでもらわれると困るから、この駐屯地がダメになる程の危機では逃げてもらう......言い方は良くないが他を見捨てて君たちは生き延びる義務がある」
と煙草が言う。煙草自身は2人は嫌がると思っている為に、更に自身の本心から思って伝えていないので複雑な心境であった。
「この力が無駄じゃないですか!......うぅ......薬がまだ残っているみたいだ......チッ、本当に不自由だ......情けねえ......」
朔は声を大きくするとフラつき自分に文句言い膝をつく。
「情けなくない。昨日ちゃんと寝なかったからだよ......朔が必要な事って今日ないですよね?」
とブランが大人2人に聞く。
「ああ、自由にしてくれ」 「もうサンプルは十分取ったから今日は無いね」
「分かりました、だそうよ。ほら立って部屋に戻ってまだ寝ていましょう......私も近くに居てあげるから」
そう言うとブランは腕を伸ばして2m超えの朔を頑張って支えて歩いて行った。
「私は研究に戻る」 「私もこの後は久しぶりの暇だから失礼するよ、お疲れ様」
未奈と小谷2人きりになった。小谷は声の大きさを調整して話しかける。
「............みな、健康......か?さくはカレシ......いや、ダンナか?......できているかぁ?」
「うん、ここに来る前から朔が知識と勘で楽に生きて来たよ。朔は......精神病の治る兆しはこんな世界じゃ当然ないけど、あんたと違ってDVは無いわ......まあ今は仕事の過労ってのわかるよ。いまは朔に尽くしている............でも、あんたの事も忘れられないんだ。私って自分勝手だよね」
「......朔も嫁がふたりいるからふつうならヤバいがな......まあこんな世界では重婚も成りたつがな。......しごとがいそがぁしくて......お前に当たってほんとうに......本当に悪かった。今のおれにこいびとはいらぬ、だから朔を......あいつの精神の支えに......なつてぐれ!」
他の日も言っていたが小谷は朔の精神面の悪化を憂いている。自分を一度殺した事を悔やんでいる事を恨まず理解しているからだ。
「あんたも......本当に......疲れていたんだよ......誰も悪くない」
自分は悪いと思っているが、口に出せば小谷からの否定がキリがないから言わない。
「うーむぅ......昔よりやさしくなったな」
「昔よりって一言余計だよっ」
小谷の膝辺りを軽く叩く。
「うはははっ」
この日は外での作戦は行わない為、何もなく夜になり次の日なった。
――――――――――――――
11/28 朝6時 今日は小谷が一日中眠っている日。女子2人も寝ている中こっそり起き出し煙草の居場所を探す。駐屯地の塀の近くで他の自衛官と話しているのを見つけ、この後暇な時間に話を聞いてくれと言い立ち去る。そして少しすると彼は朔が待機している場所に来る。
「どうした?君に取ってはかなり朝早いだろう??」
「いやー......本当に私達以外にはくだらない事なのですが......2人妻がいるじゃないですか?世界がこうなってから付き合い始めたので、籍も入れてないし指輪とか......そういうプレゼントみたいなのを渡していなくてその辺から持って来たいんですよね......外出許可無理ですかね?」
すごくアホな事を言っている自覚はあるので申し訳なさそうに言う朔。
「......そうだな、確かに指輪は大切だが......人類にとって君の方が大切なのだ、気軽に外に出して死なれてしまうと困るんだ」
「で、ですよね......」
「だが、私が指揮の下に生活に必要な物資を集めると言う大義名分があれば外に出る事も叶うんだろう!」
「ほ、本当ですか!?こんなくだらないことに手伝ってくれるんですか!?」
「ああ、手伝うとも。それにくだらなくないさ。私にも妻がいた、いやこの言い方は良くないな、いる。いるが1番安全な場所にいてもらっている。指輪と言う目に見えてわかる繋がりは大切だ。心の支えとなる。それと君にはまだ恩があるからな。取り敢えず、私の仲の良いメンバーを中心にすれば君のメインの事も司令官にもバレないだろう」
「ありがとうございます!」
こうして機銃付きの車1台、自衛官を後ろに乗せる車、大義名分を果たす為の物資を積み込む為の改造済み中型トラックを用意し朔入れて12人の編成で出る事になった。そうすると1人朔に近寄って来る。
「あの......」
そう弱々しい声で話しかけられた方を朔は見る。
「はい?......あれ?......ああ!どうも!体調大丈夫なのですか?」
朔に話しかけた隊員はあの時発狂して発砲した隊員だった。
「ええ......おかげさまでお休みをかなり頂いて............敵意が無いにも関わらず貴方を発砲してしまい本当に申し訳ありませんっ、わ、私がっ......」
そう大きく声を上げて土下座をしようとする。彼の頭が地につく前に朔は止めた。
「やめてください、煙草さんから色々聞いていますから......私が貴方の立場なら耐えれなかったでしょう、それを耐えて今も私のくだらない事に付き合う為に作戦に参加して頂けるなんて......こちらの方が頭下げても足りませんよ............」
朔は自分に別に大した傷も無い、相手のトラウマや経験について知っている為に謝罪を止める。
「だから言っただろう。彼に謝っても良い意味で無意味だと」
そう言いながら隊員の肩に手を置く。
「そうですね......」
「まあ誰か死んだ訳でも無いし大丈夫っすよ〜。それとこれ見てください、昔に指輪が欲しいならどんなのが良いか聞いた時に描いた理想図っす。結婚指輪ってどこで買う物なんですかね?」
「どれ......君が描いたのか?上手いな。指輪は宝石店でもアクセサリー屋でも取り扱っているところは取り扱っているよ。取り敢えず、近くて高級な宝石店からこの絵に近い物を探そうか。......よし!行くぞ!車を出せ!インスリンの注射も止血剤足りていないから、冷えていて消費期限が切れてないのを病院などから探すぞ」
そう煙草が大声で言うと車が発進。朔は車の防衛の為に並走すると言ったが、体力は温存していて欲しいと言われトラックの荷台に兵士達と乗っている。煙草は中型トラックの助手席に乗っている。そうすると話しかけられる朔。
「朔君だっけ、この前のニタリの件は助かったよ。ありがとう。アレのおかげで民間人も我らもベッド不足がそこそこ改善されて、かなりの数のテーブルのおかげで地べたで食事をする必要が無くなった」
「それは良かったです!小谷ににも言ってやってください!あいつも喜びます、それに衛生面が改善されるのが特に良いですね。Jウイルスから逃げ延びても普通の感染症で亡くなっちゃあ......虚しいですから......」
「そうだな、今もコロナウイルスやインフルエンザで隔離している人もいるし、これ以上は増えられてしまっては困るからな......一昨日も満足な医療機器が無い為に老人が1人亡くなった。司令が拒む病院施設の奪取を無視していれば助かったかもしれないのにだ............あの人は暫く姿も見せていない、何か怪しい気がしてならない」
と横の他の中年の自衛官が話す。
「そう......でしたか。そう言えば私や小谷みたいな変異体が来たと言うのに見にも来ませんでしたね」
「それなんだよ、前は来たらすぐ会わせろと言っていたのだが、最近は部屋からも出ず命令を出すだけだ。もしかしたら......もう司令は誰かに成り代わっているのかもしれない。映画や漫画の見過ぎかもしれないが、姿も見せず指示だけとはおかしい、食事は扉の前に置けだとか排泄はビニール袋でするから持ってこいだとか............元から小心者で感染を恐れて外に出る事は少なかったが限度がある」
そう自分の顎髭を触りながら語る。
「えっ煙草隊長が1番じゃないのですか?」
他の若い自衛官が驚く。
「そうだ、君は別の駐屯地から逃げて来たばかりだから知らないだろうが煙草隊長は外の作戦でのメインの隊長であるのは違いないが、隊長という呼び名はあだ名の様にもなっているから常時呼ばれているだけだ、上はいる」
「ほへー......」
「まあ1等陸佐が無理難題や無意味な殺人などの命令をしたらいよいよだが、今の所は他の奴らより飯を増やせだの豪華にしろだの幼稚な事だけだ......だがそれがカモフラージュで裏でもう何か動いている可能性も0ではない。煙草隊長も司令については何か考えているだろうよ」
そう言いながらタバコを吸い始めた。
「あ!その銘柄?のタバコ1カートン持っていますがいります?外の世界での物々交換用にコンビニからパクってきたんですが、その必要も無い状況なので処理に困っていたんです」
「ほ、本当か!?俺ァこれ無いとやってられないから助かるぜ。その代わりだ、何か欲しい物とかないか?おっさんが探すぞ?」
「大丈夫ですよ〜!こうして私の我儘の作戦に参加してくださっているのですから!......まあジュースが好きなのでどこかで見たら教えてほしいという本音もありますね」
と笑いながら言う朔。
「ジュースねぇ......多分今回の物資漁りで幾らでも見つかるだろうから何本か多めに持って帰ってしまえばいいよ」
「ではそうさせて頂きます......」
と話しているとまた別の隊員に話しかけられる。
「さっき指輪の絵を見せてもらったんだけど君って絵が上手いんだね!俺らの似顔絵とか描ける?ボードと鉛筆と紙なら......ここにあるから。お願いできる?スマホに写真はあるけど紙とかには無いから手元に残る物が欲しくてさ」
「良いですよ!全員分ここで描いちゃいます!」
そう言うと他、数人全員をすぐに描いてしまう。
「どうです?」
「すごいなぁ......黒子もシワもちゃんと描いてあるし、髭もフサフサだなぁ......頭はテカテカ......ヘルメット被ったままの方が良かったか......?」
「グラデーション?紙の白と鉛筆の黒で影とか色々表現しているのすごい」
と絵に詳しく無い隊員達は感心しながら喜んでいる。
「スキンヘッドに髭って男前と言うかイカしていると思いますよ」
「そ、そうかぁ......」
少し照れくさそうにするおじさん自衛官。そう話していると車が停車する。煙草がこちらに歩いてくるとここが単体の店で種類が多いと思う場所だという。
「正直、サイズが合ってデザインも近いモノは探すのは難しいだろう。基本的に結婚指輪は調整したりオーダーメイドするのが多いからな。私達が見張っているからスマホのライトを使って探して良いぞ、ただ長居は避けたいので頼んだ」
「ありがとうございます!」
そういうとガラスのドアを開けて中に入る、腐敗臭は外より薄い為に朔は警戒を薄めケースを破壊して漁る。
「んー......ブランは意外に派手でユニークな形が好きで、未奈はゴールドとプラチナの平打ちのシンプルなモノだったかな。キャラと正反対だなぁ、人は見かけによらずか......しかし、ここは手付かずとはな、悪いが目に入ったモノは要らなくても高価なら頂いていこう。メンズもあるみたいだから俺のも探すか」
そう言いながら店内を破壊して漁り、奥の金庫を見つけると事務所の引き出しを破壊して鍵を見つけ開けると何故か1kgの純金の塊が3本入っていた。朔は内緒でバッグの隠しポケットに入れた。
「加工用か?納品ミスか?普通の店に置いてあるモノなのか???まあ良い、ラッキーだ。もし世界が平常になればかなりの価値だ。俺も指輪を何個も見つけたし、彼女2人の理想に近い物も見つけれた。ブランのプラチナと金の輪っかが絡み合っていて真ん中にダイアモンドの指輪。未奈はそのまま金が下で上にプラチナの平打ちの指輪だ」
こんなラッキーな事もあるんだなぁと思いながら、一つで数十万以上する品は全て盗んだ。そして店外に出て報告した。
「へぇ......これねぇ、君は手先が器用だし事務所のどこかから工具を見つけて自分でイニシャルを掘るのも悪くないかもな......とは言えここまで理想的なのに出会う確率も低いだろうしやめておくか。では次はメインの物資漁りだ、悪いが活躍してもらうよ」
「えぇ!もちろんですとも!」
そう意気込み全員で診療所を手当たり次第漁るも先を越されていたり、仲間がもう漁ったとわかる為のマークがある建物ばかり。
「うーん......ダメだな、取り敢えず一旦、休憩しよう。メインでは無いが常に必要な薬と飲食物は手に入ったから無駄では無い。それと移動中に何度も戦闘を挟んでいるからな、そこそこ汗をかいただろう。冬は意外に脱水症状になりやすいから気をつけるんだぞ」
そういうと全員にビタミン剤と水に栄養補給ゼリーと塩タブレットを渡して運搬用トラックの上によじ登り眠り始めた。朔はカロリー補給の為に自前の食料も食べた。
「あの手すりみたいな改造は落下防止だったのかぁ......」
(なんつー場所で寝ているんだ......平だから寝やすいのか......?)
「元々はあの上から紐付けてしがみついて援護射撃する為に作ったんだけどな。まあ使っていない時は隊長とか寝たい人が早い者勝ちで寝る」
「ほお......では私は暇なのであなた方の目の届く範囲の家から使えそうな物を物色してきます」
(順調過ぎて怖いな、変異体IIIは沢山いると言っていたのに中々出会わないし、生き残りの集団から攻撃を受けた事もない。俺は主人公になれないから派手な事は起きねぇのかなぁ......でもそれが1番よ)
病気と薬の都合上、昼寝の出来ない朔。彼はそう思いながら1人で民家を漁りに行く。
「おう、一応これ持っていけ。アメ公の私物だ、俺たちには扱いきれねぇからな」
そういうと大きめの拳銃を渡された。
「これは......デザートイーグルですかぁ!それになんか色々改造されてますね。アイアンサイトでは無く......確かホロサイトだったかな?見やすい!」
「まあ米軍が支給する物じゃなくて個人の物だったからだろうな。弾丸は.44で装弾数は8発。マガジンは3つ、弾のあまりは駐屯地にそこそこあるから気にせず使って大丈夫だ............というより俺は要らないからやるよ、反動で肩おかしくなるしなぁ」
「ありがとうございます!」
(.44は片手で撃ってこそよね)
朔はホルスターと弾倉をしまう為のベストをもらう。米兵の服を着ているせいで、側から見たら本当にただの米兵になってしまった。
「渡した意味わかるよな?あまり身体を汚すんじゃないぞ〜、あと危なくなったら遠慮無く叫べよ。俺も寝るが流石に気づくから安心しろ、見張もいるしな」
そう言われて送り出された朔は何の変哲もない民家にの前に立つ。ドアが閉まっていたので壁のパイプや室外機を掴みよじ登り2階の窓から侵入。うとうとしていたおじさん隊員がそれを見てびっくりして目が覚めてしまう。
「......ふぅ、この身体になってから出来ない事が出来て楽しいな............誰かいますか?馬鹿じゃない方の自衛隊の関係者です。返事をしてください、無ければ家を漁りますからね............臭いも強くないし誰も何もいないか」
そう言いながら2階の部屋を手当たり次第漁る。
「ミニマリストかよ、何もねぇな。足跡もないから先客はいないだろうし一軒目から変な家に当たったなぁ......お次のここは......うっ、猫?が干からびている......可哀想に......この家は使えないな、猫死骸の床も腐っているみたいだし......一階に降りるか」
階段を降り玄関近くに着くと内側から鍵を開けておいた。
「ヨシと。......冷蔵庫は開けない方が良いな、この缶詰はまだイケる......あとは......ないか」
そう思い出ようとすると殺風景の部屋の奥の角に金庫があるのを見つけた。
「定番だな、何が入ってんだぁ?こんな横長い金庫見た事ねぇな............横のメモ書きにパスワードあるじゃん......クソゲーみたいに雑だな、防犯意識あんのか」
そうして開けると日本刀が入っていた。
「!?......本物?」
そう思い抜刀し近くにあった紙を刃に当てるとスッと切れる。
「おおー!!ゲームみたいな事あんのか!ミニマリストじゃなくてこれ買ったから物ねぇのかな?持って帰るか」
そう言うと左横腰に装備した。ウキウキで外に戻ると、見張り以外の寝ていた自衛官が全員起きて準備を始めていた。
「おっなんかあったか?......日本刀か?」
先程の中年隊員が言う。
「しかも本物ですよ!......と言っても映画のように何人も切れるモノでは無いのでお宝扱いですかねぇ」
「まあ戦国時代も切れなくなったら、殺した相手のを奪うか突き刺すかばかりだとか聞いた事あるしな。まあよかったな、煙草隊長はもう出るつもりだから乗りな。あと飴かガムいるか?」
「頂きます!」
そうおじさんに笑顔で言われ出発、雑談をしていると大きな病院に着く。
「なっ、隊長本気か?」
隊員達は少し焦りを見せるので質問する朔。
「中学校の近くにあるこの病院はマズいんですか?過去に車に轢かれた時に行った事ありますけど......なんならここに通っていたので病院は良く見ましたが......無断駐車すると注射か罰金1万円という看板で有名な所............」
「看板は知らないな、過去は特に悪い噂は無い。今がだいぶマズい、感染爆発の初動でここの病院に駆け込んだ人が多かった......それのせいで中のゾンビはほぼ全部が変異体だ、共食いをしているだろうから映画なら強くなっているだろうな」
(轢かれた......?随分と過酷な目に遭うタチなのだな)
と一般隊員が少し引いている。
「映画だと数食べた奴ほど化け物みたいな見た目になってる事ありますよね〜」
そう話していると煙草が来る。
「もう電力が生きていてまだ使えるインスリンがあるのは近場だと、ここと1つあるか無いかだ。少し入ってみて様子を見て大丈夫そうなら突入だ、朔君が前方で暴れて我らが援護に徹する」
「分かりました」
(すごく嫌な気がする......なんだ、これはオタクの勘か?ゾンビ作品だと死亡フラグビンビン、思春期のガキのイチモツよりもビンビンだよ......)
そう思いながら半開きの自動ドアをこじ開けると酷い臭いが充満していた。もう手前には肉が腐り骨が見えている遺体もあった。
「うぅ......隊長っガスマスク着けねぇと別の病気になっちまいそうだ」
「そうだな、一応準備はしてある」
そう言うと車からガスマスクと名前が書いてある布切れを渡される。
「これを安全ピンでくっ付ければ顔は見えなくとも誰かわかる、では行くぞ」
そう煙草が言い中に入ってガラスの破片を踏むと奥から叫び声が聞こえ、こちらにドンドンと近づいてくるのがわかる。
「ひっ......朔さん以外私の盾から前に出ないでください」
そう言うと朔を撃った隊員の盾が展開され広がる。成人男性3人を守れるほどに横に広がった盾を地面に起き銃を構える。
「何それすげー!初めて見た!」
朔は武器オタクのために興奮する。
「まだ世間に公開してない試作の装備だからな、それより朔君もう目の前まで異形の奴らが来ているぞっ」
「服を汚さないように始末しますよっ!はぁっ!」
頭がイソギンチャクみたいになっている奴の足を蹴りで砕き跪いたところを銃で数発撃ち撃退。隊員の方に走ったゾンビも拳銃で頭を吹っ飛ばす。その間ノロノロしている連中は自衛官達が即座に始末する。
「俺射撃の才能がやっぱりあるかもなぁ......いやぁッ!」
蛇のような身体のゾンビが飛びかかる瞬間に蹴り上げて上にずらし避けると尻尾を掴み振り回して壁に叩きつけてグロテスクな処理で撃退。
「うーむ......これ程の数の変異体IIがいるとは......退却するしか......」
「しかし、煙草さんが言った通りインスリンがないと死んじまうガキがいるんだ。ここで俺らが命張らねぇでどうしますか!」
おじさん隊員は煙草に真剣に言う。
「......そうだな、間違いない。取り敢えず、変異体IIIに出会うまで進むぞ。場所は経験則から何となくわかる、この階段を上がるぞ」
そう登っていき進むと職員だけしか入れない扉があった。なので朔は無視して蹴り破りガラスは粉々になる。
「階段下を2人は見ていろ、手付かずという事はこの先にゾンビがある可能性は低いからな......パスワードか、マスターキー頼むよ」
そう言いながら朔の方向を見て言う煙草に笑顔で答える。
「あいよッ!」
変異IIになり金属の扉を連続で殴り歪んだ所に指を差し込みこじ開けた。
「おお......恐ろしいな、ありがとう。先行を頼む」
「わかりました!ただ今日はこの力はもうあまり乱用できなそうです」
「わかった、対変異体IIIまで温存してくれ」
そう言いながら進む、電気がつけっぱなしで明るく見通しも良い。だが薬などの保管室の地図など無いためにうろちょろするしか無い。
「ここ......随分と綺麗で電気もついていますね......」
「ゾンビはパスワードを入力出来なければ、野盗共もあの数では入れないだろうからな、電気はソーラー発電で賄っているのだろう......!多分、ここにインスリンなどがあるな開けてくれ」
「はいっ」
蹴り破ると業務用冷蔵庫の様な物が並んでいた。
「............あった!ここの冷蔵庫全てだ!早く詰めよう!他にも薬があるから持っていくぞ!」
「そりゃあ良かった!」 「クーラーボックスです!」
そうして詰めていると建物が軋む音が響く、それもドンドン大きく揺れ這いずり回る様な音が聞こえる。
「......?なん......だ?天井......ぅああぁ............」
「な、なんだ上にいるぞっ!天井を撃てっ!」
天井に穴が空き隊員が上に連れて行かれた。その穴からは肉片と衣服の一部がボチャっと落ちてくる。そしてまた隊員が次々と天井裏に持ち上げられて肉塊になって落ちてくる。
「ひっ......う、うわああああ!!」
朔を撃った隊員はパニックで走り出し転けてガラス片が喉に突き刺さり呻いて死亡。隊員達は更にパニックになる。
「あの馬鹿......落ち着けっ全員円状になって全方位を見ろっ」
隊長の指示で動くと音が止まる。
「畜生......一体なんなんです!」
朔が煙草に質問する。
「これはおそらく変異体IIIのキャッチャーだ。記録で見たが巨大な建物に潜むことに特化した変異体だ、早く出なければ全滅だっ......出たぞ、撃てっ!」
そう言う方向を見ると真っ白な身体に大きな目だけの髪もない頭部に手が牙のある口に変異している化け物が現れた。
「ぶびゃあああ!!」
撃たれてまた上に引っ込む。その瞬間に隊員達は走り出し階段まで到着すると先回りされていた。
「おぎゃああ!ぐるるっう」
下半身は蛇の様に長く4メートル近くある胴体。おじさん隊員に襲いかかる瞬間に横から朔が本気のパンチで目玉を抉り出す。
「ふざけやがって......っ!!オマケだっ死にやがれっ!!」
抉り出した眼孔にデザートイーグル全発ぶっ放し、頭を掴み壁に押し付けて潰した。だが朔の疲労が限界になり座り込む。
「ふぅ......ああ............ここまでの様です。逃げてください............せめて指輪を......」
「馬鹿言うじゃねぇ!俺が今助けられたばかりで見捨てる訳ねぇだろ!それに若ぇのが死んじまったら国が本当に終わっちまうわ」
そう言いながらおじさん隊員が肩を貸し立ち上がらせて言う。
「ありがとうございます......こちら、片腕でデザートイーグルでの援護をします......」
そう言うと片腕に残りの力を入れてゾンビを撃つ。
「十分だ、三等陸尉はそのまま朔君をよろしく頼む。生き残りのお前達3人はインスリンとその他薬品を運べ、私が援護する。来たルートを辿れば既に殺しているから新たに遭遇するリスクが減る」
そう言いながらゆっくりと歩き出口に近づくと別棟の通路から大量にゾンビが走ってくる、騒音を立て過ぎた上にゆっくりし過ぎたのが原因だ。
「............無理だ、俺が気を引かせて飛び込んで自爆する。朔君......俺は亡くなった息子を思い出したよ。もっと君と早く会って会話したかったよ。家族の為に生き残れっ!隊長命令は聞けません私ァ突っ走ります......煙草!頑張れよ!」
そう言うと煙草に投げ渡し、銃を乱射し叫ぶ。
「こっちだ!化け物ども!恨みはねぇが一緒に死んでもらうぞっ!!」
そう叫ぶと一気に急カーブしおじさんの方に向かう。遠くの廊下から爆発と共に破片とゾンビの部品が飛んでくる。
「......なんで............」
「あの人はこんな時の為に、いつも爆発物を過剰に持っていた......クソ............無駄にしない為に早く......なっ......なぜまだ変異体IIIがいるんだっ!??」
前には上半身が二つ下半身の代わりにくっ付いた化け物がいた、体長約3メートル手で四足歩行を行う体毛は無く灰色の肌である。
「うばばばばばぁあ!!」 「ぐぎゅんがあああ!!」
2つの頭は叫びこちらにパタパタと走ってくる。
「せめてものケジメだ......」
そう言うと朔は無理矢理筋肉を膨張させ化け物を蹴り上げた、だがそいつはその反動で天井にぶつかるとそのまま爪を食い込ませて上を這い回る。
「引きながら撃てっ!逃げることを考えろ!」
生き残りの隊員に指示をして下がる。薬を持った隊員は全員に逃げれたが戦闘続行している朔1人の援護のために急いで車からグレネードランチャーを持ってくる煙草。
「朔君っ!離れろっ!」
その瞬間に発射し化け物の片方の頭上半分と一部手足が欠損し叫びながら逃げ始めた。だが朔はそれを許さずデザートイーグルで追撃し仕留めることに成功。煙草は朔を引き摺って外に出して車に乗せ、隊員を運ぶための車は放棄し物資と機関銃のついた車だけで逃げた。
「うぅ......俺が......俺が馬鹿な願いを言わなければ............すみません......」
助手席で血で汚さない様に涙を堪えて拳を握り締め俯く朔。
「......遅かれ早かれあそこには行かなければいけなかった。君の用事で死者は出ていないのだから気にする必要はない。アルコール消毒をして、このカロリー補給用のチョコ羊羹を食べなさい。多少はマシになるだろう」
そう言いながら渡された物をもっもっと食べる朔。
「血塗られたリングどうしましょう......」
「だから君の用事で血は流れていない!己を責めるな!自責は精神病の君にとって最悪の悪循環だぞ、取り敢えず様子を見て絶対に渡すんだ。亡くなった彼らはそれを望む、そう言う奴らだ......本当に惜しい、私の采配のミスでもある......先輩............」
2人は仲間を失った事を悲しみつつも帰還する。煙草は司令に報告に行き、朔は両親と嫁2人に迎えられた。
その日に弔う為に似顔絵の絵や好物な食べ物を燃やしていると正面入り口にアクセルベタ踏みな速度のトラックが近づいてくる。門番は撃とうとするが所属がここの車なことに気がつき銃を下ろし慌てて脇で立って待っていると停車し男が出てくる。その報告は即座に煙草と朔の耳に入り見に行くと自分の片足を持っているおじさん隊員がいた。
「へへっ......生き延びちまった。あんな事言って格好がつかねぇし文字通り足手纏いになるかもしれねぇが......帰って来ちまったよ............」
そう笑いながら担架で運ばれる準備をされているおじさん。
「先輩っ!よ、良かったです......本当に......」
煙草は涙を少し流し言う。自衛官だからと耐えていたが限界だった。
「もうお前の方が階級上だろうよ......隊長さんよ......。朔君も来てくれたか......俺は君達と話したいってだけで戻って来ちまった、許してくれ......それに足の断面見たらくっつきそうな気もしてよぉ......」
「いいえ!生きるのに必要な理由があるだけで良いのです!貴方だけでも帰って来てくれたのは本当に良かったです......ただこんなに感動的な再会をしていますが、私はまだ貴方の名前を知らないのです。教えてください......」
「そうだったなぁ......俺は鉄哲だ。漢字だと金属の鉄に有名人とかにいるなんとか川哲郎とかの哲だ......だからテツテツって呼ばれていたなぁ......」
そう話していると止血されながら持ち上がられる鉄。
「生き延びたらまた俺と話してくれよ〜」
そう言いながら自分の足を持った方で手を振る鉄。
「あの人ならあの程度では死なないだろう......昔は手榴弾の訓練で部下のミスで内臓が溢れたらしいがピンピンしていたらしいからな」
心の底から安堵した顔をしている煙草。
「それは......すごい............それと先輩だったんですか?......そう言えば最後苗字呼び捨てにされていましたね」
「そうだ、今では階級が一つ上だからややこしいが先輩は、他のクソ上司みたいに雑に扱えって言うもんだからね......それにあの人の家族は数年前の不慮の事故と、この地獄の世界のせいで全員亡くなっている。だから君に息子さんの雰囲気に近い懐かしさを感じて奮起して帰って来たのだろう......」
「そうですか......手術は上手くいけば良いですね」
「今はベッドも臨時の手術室も空いているから大丈夫だろう、ただ滅菌は完璧に出来ないのが少し怖いな」
そう話しながら戻る。
落ち着かないがその日は終わり次の朝になる。朔は疲労で11/28の11時になっても寝ていた、その間に女子2人は寝ていた小谷に何があった説明した。
「あいつ自体はだいじょうぶなんだな?」
「ええ......ただかなり悲しみでメンタル面が危ないかも、夜もずっと泣いていたから......」
「精神科医がいないからなぁー薬の調整は素人がやると危ないから、世界がおかしくなる前ので続けているからねぇ......」
「うーむ......何故俺を同伴できる今日まで待たなかったんだァ?」
「糖尿病の子供の為に急いでいたらしいよ。それにあんたは建物に入れないでしょ......」
「まあまあ......それより小谷さん呂律が良くなってはっきり話せる様になりましたね〜良かったです!」
「ああ、ありがとうぅ!頭のモヤも晴れてきてシコウが......ああ、言っている側から忘れた......」
「要するに前より物事を考えやすくなったってことでしょ?」
「まあ......そうだなあ。それに伴ってこの布切れの格好は恥ずかしくなってきた......」
「でも身長が身長だからね......私達の為にごめんね......」
「だからきにするなって......俺もやり方が悪かったんだから。それに生きているんだから......変異体は生きているんだよな?どっちだ?......まあ考えて動けるから何でもいいか」
「良く話す様になったねぇ......」
そうして会話して女子は部屋に戻るがまだ朔は眠っていた。その日は午後にやっと起きて食事を摂ると2人に抱きついて離れなかった。鉄の手術は成功し足の接合にも成功したと聞き少しは精神が安定した朔。その後夜に小谷のいる場所に集まって少し雑談。
「......こんな環境でも神経繋いだりできるんだね」
「藤原さんがマジにマジの腕利きの名医だったかららしいよ、私達が知らないだけで医者の中では有名だったらしいし、要求した道具もコツコツ集めていた甲斐があってほぼ揃っていたらしいし......ただ滅菌は難しいから抗生物質とかになんとかに賭けているとか、あとは麻酔に関しては難しかったらしくて少し痛いのが続いたらしい............」
「ヒェ......そうなんだ......」
(指輪どうしようかな......経緯を知ったら2人は怒りそうな気もするし、まだ待つか......皆さんごめんなさい......)
「完全にくっつくのいつなんだ?」
「大体1ヶ月くらいでくっつく、リハビリにまた1ヶ月かな?入院はまとめたら合計3ヶ月くらいとか聞いたけど」
「へー、サーシャ詳しいね〜」
「朔と雑談していた時に聞いただけだから受け売りに過ぎないけどね」
「そうだね、なんか言った気もする」
「お前は変な事詳しいからなぁ......にしても暇だなぁ......外の世界に漁りに行く人達は連れて行ってくれないしなぁ」
「まあ最終兵器だからね......生身で戦車どうにか出来る2人は中々外に出せないよ。この前のは急ぎだから朔が同行したらしいけど、普通なら居てもらうのが仕事だとか」
「不自由だナ......まあ誰がトップでもそうするか............そう言えばトップに会ってないナア?」
「臆病モンだから出てこないらしいよ」
「にしても出てこないにも程があるなぁ......」
「まあいいでしょ、私たちはやる事ないし適当に暮らしてよ」
「貴方の心のケアもしないとね......それにしてもお肉食べられないの辛いなぁ......」
「ありがとうよ、ただ見返りに肉を用意するのは無理だな。ジビエとか寄生虫すごいらしいし」
「焼けばいいんだよ、くだらない事を考えてないで野良牛捜索作戦とかすれば良いんだよ。頭撃てば楽に死なせてあげれるかな」
と未奈は肩から掛けている銃を触りながら言う。
「そんなくだらない作戦で誰か死んだら嫌だよ......」
2度目は嫌だと悲しそうに言う朔。
そうしてどうでもいい事を話したりして、12/11の2週間後まで大したことは起きず指輪も渡せず時間は経つ。




