第一幕 剣鬼VS極道
男子たるもの、趣味は大きく二つに大別できる。
剣を使うか、銃を使うかである。
この男は、”おはじき”が得意であったようである。
その才は、組の中でも一級である。
そうこの街での、
最大規模の極道非廻理組 第三鉄砲玉隊 部隊名コルト ガバメントM1911
その構成員が彼 砕鉢 柔六
この町において、鉄砲玉とは憧れの職業である。
表のように、ただ使い捨てられるだけの存在ではない。
無論、そのような使い方がされることがないわけではない。
しかし、この町において基本的に鉄砲玉は使いまわせるものだ。
だからだろうか。 極道の縄張りに置いて鉄砲玉は特権を持っている。
特権その一
児童臓器を輸出して善し
特権その二
米軍伍長以下を恐喝って善し
特権その三
邪魔な政治家を沈殺めて善し
特権その四
氷菓子を弱小極道を使って売って善し
当然これ以外にも特権が存在する。
この特権は極道の頭がその暴力と共に保証する。
極道の頭、げに恐ろしき、極道規律破りしもの
必ず死滅る
極道規律 100項存在せし。
第九十五項 そして極道特権邪魔せし物、例外なく、鉄砲部隊を送る也
そして、剣鬼、桜はその極道特権を邪魔した。
当然、部隊は送られる。 当然殺戮される。
極道たちは当然そう思っていた。
非廻理組おもちゃ倉庫係 通り名 バービーは語る。
「ちょっとヤンチャな女子一人、殺戮すなんてわけねぇ、非廻理組は今まで何人の女子を女狐に変えてきたと思っている。
ただ、手を出してはいけないやつっていうのはいる。 桜はそうだったらしい。」
部隊員 砕鉢 柔六。堅気から逃走かました男、手前でケジメをつけなければ、ならない。
極道規律
第一項 極道 無礼られたら必ず殺戮せ。 できる限りの手段を用いて殺戮せ
砕鉢 柔六、逃走してから二週間後、彼はすべての準備を終えた。
要するに数だ。
鉄砲隊は、隊とは名ばかり、一人につき、傘下を五十人与えられる。
悪さする為、効率的に悪さをする為だ。
五十人までは、組から用意される。 それ以上は自分で用意しなければならない。
要するに、彼は桜を殺戮す為に百五十人用意した。その武器も当然。
米軍と弱小極道恐喝って大量に集めた。AK47、RPG-7,etc....etc....
彼は二週間でこれをすべて集めた。
ここで話は変わる。
白百合学園についてである。
全寮制異能女子学園 白百合。
幼稚舎から高校までの期間、人以外が入学できる。
肉体、技能、精神 それ以外にも.... 明らかに"人"ではない部分がある女子だけが入学できる。
桜は、そこ学園の剣道部の部長である。
彼女が異能であるのは、技能が故であると勘違いされがちである。
無論技能も彼女を代表するものの一つである。 人外れた技能、何も間違えた評価ではない。
しかし、最も異常であるのは精神である。 彼女の精神は死せることのない、鬼のものである。
場所は白百合学園 剣道部 部室、通称 剣の宮
時間は五月一日 暮六つ
極道はそこで復讐ぶちかそうとしていた。
戦争の第一声は極道がかました。
銃鬼の手榴弾が、建物の扉、そして外壁を破壊した。
続けて、極道のロケットランチャーが室内に入る。
そして多種多様な銃器による一斉掃射である。
建物ごと、桜を殺戮す為だった。
彼は理解していた。 剣鬼相手に油断はいけない。
そもそも、まともに戦って勝てる相手ではないと。
ここまでして、不意打ちして尚、剣鬼有利であると理解していた。
しかしロケットが爆発することはなかった。
不発弾であったか。否、ロケットを切ったのだ。
爆発を切ったのだ。
そんなことは既に読んでいる
鬼たるもの、そのぐらいはできて当然。
飽く迄、ロケットは、刀を抜かせる布石であるッッッッ!!
しかし銃鬼、異常を察する。 発砲音がしない。 あれだけけたたましい音が今はなっていない。
「発砲せ!!!」
次に機関銃が部室に、炸裂するはずだった。
現実を知るのに、必要な時間は一瞬というにはあまりにも長かった。
理解ができなかった。用意した盾は既に斬られていた。
理解不能、理解不能、理解不能、理解不能
この街では、理解できることのほうが少ない。
しかしそれでも、それでも
「理解不能の技ッッッッッッ!!! 」
銃鬼は叫ぶ。
血が沸く、熱く、熱く、熱く、
血が沸騰している!!!
沸騰した血は、空間を歪める。
今この場には、鬼しか存在し得ない。
あまりにも、歪んでみえる。
それは、鬼の本質が故か
歪んだ道場にて、煙が晴れる、そして剣鬼が現る。
刀は鞘に入ったままである
彼女は既に納刀まで済ましていた。 まだ銃鬼に対しては抜き身を魅せること能わず。
可憐な鬼である。
ここには鬼が2体。
理解不能なことは一つではなかった。
「やはり、理解不能ッッッッッ!!」
鬼の口が大きく愉悦に歪む。
鬼が鬼である証明である。
この笑みによって、鬼であることを他者は理解させられる。
剣鬼は、一刀だけ刀を抜く、一人を除いて、誰一人抜いたことに気づけなかった。
そして彼女は駆ける。 極道に向かって、否!!銃弾に向かってである。
鬼は死に近づく、同時に愉悦に顔がゆがむ。
わたしは、これでしか生きられない。
わたしは、鬼を斬らねば、愉しめない。
わたしは、血こそが、血を浴びねば生きられぬ。
銃弾の群れが彼女に中るであろう瞬間。
彼女は、刀を振った。同時に銃弾が、彼女を避けた。
彼女の周りの銃弾が、すべて、避ける。
あまりの異常、人間の反射神経では不可能である。
不可能な理由は反射神経だけではない。
そもそも、刀に銃弾をあてて相手にはじき返すなど。
どのような集中力をしてればできるのか。
刀には綺麗に、血が彩られていた。
しかし、理解不能なのは、銃鬼も同じである。
彼女の後ろから弾が向かう。 跳弾である。
しかし、刀を抜かずして、跳弾は撃ち落とされた。
鬼の戦いは、此処までが前菜である。
礼儀はどのような場においても必要である。
それが例え、死合であっても。
「我こそは、剣鬼、桜。 斬る者である。」
可憐である。
「我こそは、銃鬼、砕鉢。 撃つ者である。」
苛烈である。
あまりにも違う両者は
「「いざ尋常に」」
鬼は鬼であるが故に、重なる
「「勝負!!!」」
同時に発砲音が聞こえる。一度だけである。
一発の音で六発発射できる。銃鬼。
彼は剣鬼に出会うまで、腑抜けであった。
しかし漢になった彼はまさしく銃の鬼、銃鬼。
二丁拳銃で瞬間12発。跳弾も用いての、オールレンジ攻撃。
全方位逃げ場はない。 そして、オールレンジ攻撃の最中に、
「リロード完了ッッッ!!」
二陣目のオールレンジ攻撃においては、銃弾も特別性である。
自動追尾弾である。 この街においては銃弾も特別なものが用意できる。
自動追尾弾による、二陣のオールレンジ攻撃。
剣鬼に弾が当たるまでに、すでに彼は発砲し終えている。
剣鬼の顔が、嗤いに歪む。
愉悦に、闘争に、愉悦に、殺戮に、この場のすべてに彼女は一言。
「感謝也。」
感謝していた。
彼女は、小太刀を、抜く。
太刀の銘は、一文字。
小太刀の銘は、血桜。
彼女は、跳躍した。
跳弾は、それによって避けられる、
しかし、銃鬼は当然を読んでいるッッッ。
だからこその自動追尾弾である。
自動追尾弾による、銃弾の包囲は未だ続いている。
しかし銃鬼には、見落としていることが一つ。
剣鬼は、ただ剣鬼であるだけではない。
剣鬼の中の剣鬼、五輪の鬼である。
兵法、剣術その両者に通じている。
剣鬼は、空を蹴る。
一度ではない。二度だ。
二度蹴る。
追尾している弾丸は、剣鬼の後ろを追尾する。
銃弾が一方向に揃う。
剣鬼は、二刀の刀を振り下ろす。
場に風が吹く。 剣圧故か、
同時に。
総ての弾頭を切り落としていた。
銃鬼には、鬼との戦闘経験が足りなかった。
鬼は人ではない。
人と同じ形をしているだけである。
この町の鬼には、必ずしも角があるわけではない。
しかし、角がなくても理解させられる。彼女が鬼であると。
血が咲く。
夕陽の朱色が彼女を彩る。
鬼は、血によって彩られる。
彩られた鬼は、止まらない。
銃鬼も、剣鬼も。
「銃鬼、伊達にしてやろう。」
剣鬼は既に、銃鬼の武器をすべて切り落としていた。
一閃。
銃鬼の左腕と胴が離れる。
此れにて決着。
「この五輪の鬼と、もう一度の死合いを果たしたくば、漢を磨け、それまで、この左腕、この剣鬼がもらい受ける。」
剣鬼、桜は左腕を白い布で覆うと、道場の奥に消えた。
この場には、慟哭だけが残った。
銃鬼は、生かしてもらったのだ。
彼の屈辱は、書くまでもなく壮絶に、しかし彼が最も脳裏に思えたのは、再戦の喜び、
自身はまだまだ強くなれるのだという、実感である。
この日を境に、銃鬼は街から当分姿を暗ますこととなった。