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ドメスティック・クエスト

作者: 雨足怜

 ドメスティック・クエスト。

 それは、最近僕の家にやってきたスマホアプリの名前。

 両親と五人兄弟。自分以外全員男の家庭で、お母さんは毎日僕たちのために家事を頑張っていた。けれど、お母さんが頑張れば頑張るほどに、家事はお母さんがやるのが「あたりまえ」になる。

 そのうちに僕たちはお母さんへの感謝の言葉さえおざなりになって。


「ああもう!やってられないわよ!」


 そしてとうとう、お母さんがキレた。

 部活だスポーツ少年団だサークルだ学校への送り迎えだ――言いたい放題する僕たちは、家では何もやらなくて。お父さんもまた、同僚と毎日お酒を飲んで遅くに帰ってくるばかりで、仕事がない日にもダラダラして何もやらない。

 激怒したお母さんは、僕たちをリビングに集めて、そしてドメスティック・クエストというアプリをダウンロードさせた。


「これは家庭内DAOアプリなの。家事がクエスト形式で示され、点数によって勝敗を競うのよ。勝者にはアプリ内で使えるポイントが付与されるわけだけれど……独自ルールを設けましょうか。敗者は月のお小遣いの三割を引くわ」

「三割!?」

「待ってよ。僕が不利でしょ。ねぇ?」

「俺だって不利だろ。それに三割って」

「黙りなさい!」


 頭に角を生やしたお母さんの言葉に、僕たちはぴしりと整列した。


「まずは郁人。確かに最年少のあなたに同じ点数で競わせるのは問題があるわ。だから、下駄をはかせてもらう」

「ゲタ?」

「あなたには最初から60ポイント、毎日風呂掃除をしただけのポイントを最初から与えるわ」

「……それなら、まあいい、かな?」

「それからお父さん。『俺は仕事をしている』という発言は受け入れないわ。例えば雄二は大学から帰ってきて夜十一時くらいに夕食の片づけをしてくれているの。それくらい、貴方だってできるでしょ?」

「い、いや、大学生とは疲労の度合いが……」

「あら、息子に劣るの?」

「……ッ」


 全員が黙った。

 満足そうに見回したお母さんは、そうしてクエストの開始を宣言した。


 一月後。敗者はお父さんに決まった。

 そして、お母さんがダントツのトップ。わかっていたことだけけれど、二位と想像以上の差があった。


 そうして今日からもクエストが始まる。

 新たに、敗者のお小遣いを勝者が手にするというルールを加えて。


 僕たちは競い合い、互いを誉めあい、今日も家事ポイントを競い合う。


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