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side桜餅 初めまして友達

「あ、あの、一生の友達になりましょう」

「えっ……」

「だから、その。今日から、一生の友達です」

「でも、いいの?」

「はい、大丈夫です」

「奥さんと別れたりしない?」

「しません。何とかうまくやってきます。だから、よろしくお願いします」



俺の言葉に凛々子さんは笑って、握手をしてくれる。

「よろしくね」と言ってくれた笑顔にキスしたい衝動にかられたけれど我慢して笑っておいた。



「連絡先、教えてくれますか?」

「うん。大丈夫だよ!メッセージアプリ?」

「いえ。メールアドレス」

「今時、メールアドレス?」

「はい。それがいいんです。凛々子さんとは、それが……」

「いいよ。教えるね」




凛々子さんは、ポケットからスマホを取り出してメールアドレスを教えてくれる。

学生の頃、よく好きな女の子とメールした。

その後、告白して、付き合えたけれどすぐに別れた。

その子とは、メールのやり取りが楽しかっただけなんだと気づいてしまったからだ。



「メールします」

「メールって懐かしい響きだよね。昔、よく友達に帰ったらメールするねって言ってた」

「俺も同じですよ!後で、メールしてとかね」

「そうそう。懐かしい……。あっ!!そうだ。ずっと聞きたかったんだけど……」



凛々子さんは、寒そうにしている。


「立ちっぱなしも何なんで、ファミレスに入りますか?それか、もう解散しましょうか?ほら、冬だからもう寒いですし……」

「ファミレス行こう。そこでしょ?見えてるもんね」

「先輩は、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。あの後、リビングの床に落ちてたから」

「落ちてたって……」

「じゃあ、行こう。夜の11時にファミレスに行くとかした事ないかも」

「不良になるからですか?」

「そうかもね」



また1つ。

凛々子さんの初めてを手に入れられて嬉しくてにやけてしまう。

歩いて5分程の場所にあるファミリーレストラン【ミスト】にやってきた。

店内にいるお客さんは、疎らだ。



「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」


店員さんの言葉を聞いて、凛々子さんがスタスタと歩いて行く。

俺は、後ろからついて行く。




「誰かに見られて、勘違いされちゃ駄目だから……ここにしよう」

「ですね」



窓側から離れた席を凛々子さんは選んだ。

俺は、凛々子さんと向かい合わせに座る。



「ご注文は、お決まりでしょうか?」

「いえ、まだです」

「では、お決まりになりましたらそちらのボタンでお呼び下さい」



店員さんは、お冷を置いていなくなる。

いつもは、外で酔っ払うとラーメンを食べたくなってしまう。

なのに、不思議と……。

凛々子さんといると何も食べたくない。



「桜木君、何する?私は、甘いの食べようかなーー。たまには、いいよね。深夜の背徳感」

「俺は、コーヒーで。いいと思いますよ!たまには……」

「だよねーー。コーヒーだけ?お酒飲んだら、しょっぱい物食べたくならない?あっ、フライドポテトも食べたいかも。ファミレスのフライドポテトって何か美味しくない?」

「美味しいですよね」

「桜木君、敬語はやめてよ。私もやめてるんだから」

「はい」



楽しい。

楽しすぎる……。

まるで、学生に戻ったみたいだ。

気を抜くと変な笑い声が出そうになる。

「ヴェホホホ」みたいな感じの笑い声が……。



「一緒にフライドポテト食べますか?」

「いいの?」

「いいよ。たまにはね……」

「じゃあ、注文しちゃおう」



凛々子さんは、店員さんを呼び。

フライドポテトとコーヒーと紅茶とチョコレートパフェを注文した。

店員さんは、注文を繰り返して厨房に行く。

俺は、凛々子さんが楽しそうに笑っている姿を見つめていた。


まさか、こんな日が来るなんて思わなかった。

今では、告白して良かったとさえ思っている。



「ねぇ、1つ聞いていい?」

「1つでも2つでもどうぞ」

「2つは聞かないよ。ずっと気になっていた1つだけ」

「何ですか?」

「どうして、桜木君は桜餅って呼ばれてるの?」



凛々子さんが、首を傾げながら尋ねてくる。



「そんな事!そのあだ名は先輩がつけたんだ」




俺は、花岡先輩にあだ名をつけられたあの日を思い出しながら凛々子さんに話す。


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