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7.奴らがやってくるフラグは折れてない。

「ん、まぶし……」


 朝日が窓から入り、ミクは顔を歪めながら上半身を起こした。

 まだ寝ぼけているらしく、少しの間そのままぼーっとしていたが、昨日の事を思い出したのかハッとして部屋の中を見回した。


「マ、マティアスはいない」


(あの後ちゃんと帰ってくれたんだな…もう来ないでしょ!

たぶん。

…………いやぁ、まさか、ね~!!)


 ミクはマティアス来るかもフラグを立てた事にまったく気づいていなかった。

 その後、やっとのことで着替えを終え、朝食を取り終えたミクは専属メイドのヴィヴィアンと共に自室に戻っていた。


「ヴィヴィアン、今日の予定は?」


 ミクは最近、ヴィヴィアンに家での出来事や予定を聞くようにしていた。

 もちろん、これは推しとのエンカ回避の為である。

 「最近」と強調したのはこれまでは全くと言っていいほど家の事に興味がなかったし、何もしなくても誰にも咎められなかったからだ。


「はい、今日はマティアス様がお嬢様のお見舞いにいらっしゃるのと、レン・オースティン様がご主人様に初顔合わせをと」

「え」


(ちょっと待ってほしい、なんて?)


「お嬢様?」

「……マティアス様がいらっしゃるのは分かったわ、そうじゃなくて……」

「青の国の皇太子、レン・オースティン様のことでしょうか?」

「そう!!!!!!!!!!」


ソファに座っていたのに、急に大声を上げて立ち上がったミクにヴィヴィアンは「ご乱心だわ」と呟いて慌てて後ずさっていた。


(レ、レン・オースティンンンンンンンンンン??????????

待てやこら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

攻略対象の一人じゃねぇか、おかしいだろ!

なんで我が家に????父に会う????初顔合わせ????)


「意味わからん…(なん)も……」

「お、お嬢様!? どうなされましたか?」


 レン・オースティンの名前を聞いたミクは今度は頭を抱えて座り込んで絶望した。

 レン・オースティンは青の国の皇太子で、何を隠そう乙女ゲーム「夢のはざまで」の攻略対象の一人なのである。


 つまり、執着系確定演出。


 出会えばマティアス同様フラグは立つし、皆さんが想像する通りのエンディングが待っているのだ。


「だ、大丈夫よ…その、レン様はいつ頃いらっしゃるのかしら?」


(一旦、一旦ね、時間だけでも把握しておこう)


「はい、たしか午後からだと伺っておりますが、それよりも顔色がよろしくありませんわ、お休みください……!」

「ありがとう、あのね、今日は誰にも会いたくないの……マティアス様には悪いけど帰ってもらって……」


(そうだ、マティアスの対応も徹底しないと~! マティアスだけでも大変だっていうのに、レン・オースティンまで我が家の敷地内にいるなんて……むりだ、色々ともたない……血反吐吐くわマジ)


 ヴィヴィアンが言う通り、顔色が悪いのは本当である。

 しかし、体調が悪い(嘘)とかが原因ではなく、フラグ乱立ストレスが原因である。

ストレスだけで顔色が悪くなるなんて珍しい体質だろう。

ヴィヴィアンは心配そうにしながらも、強く頷いた。


「分かりました。お任せください。マティアス様へお伝えしておきます」

「ありがとう、ヴィヴィアン、助かるわ」


(よし、これで後は籠るだけだぁ!)


「では、これで失礼いたします。ゆっくりとお休みくださいね!」

「うん」


 ヴィヴィアンが部屋を出ていく。

 一人になったミクはゆっくりと深呼吸する。

 これはストレスから溢れるドタバタと暴れまくりたい気持ちを抑える為でもあるが、午後になるまでゆっくりと衣装作りを再開できる喜びをかみしめていたからでもある。


(よぉし!!作業再開ですわ~!!)



「ここがミカエリス家か……」


 レン・オースティンは長旅を終え、やっとのことで赤の国の宰相の家に到着した。

 ミカエリス家は想像よりも立派で、広大な敷地に、整った庭園もあった。

 レンがミカエリス家の屋敷に繋がる道のある庭園をゆっくりと見渡しながら進んでいると、少しガタイの良い男が先に立っていた。

 立場が分からない為、レンは声をかけずにその男の横を通り過ぎた。

 これが、レン・オースティンとマティアス・レンブランの初対面になるのだが、彼らはそれを知らぬままであった。


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