6.推しは眩しいよな??なぁ??
マティアスは焦っていた。
それもそのはず、なぜかベッドに寝かせたはずのミクが部屋にいなくなっていたからだ。
慌ててすぐにメイド達と共に探し始めたが、なかなか見つからない。
彼はやみくもに探しても意味がないなと、一旦廊下で立ち止まって考えなおしてみることにした。
「…彼女がいるとしたら…」
(やっぱり「あそこ」しかないか…?)
何となく彼女関係なら「図書室」という気がしている彼は、毎回屋敷に来るたびに図書室を見に来ているが、会えた試しがない。
しかし、他には思いつかないので、今回も行ってみることにした。
図書室はいつものように扉が開いていて、音がしない。
「…あ」
(いた…しかも、眠っているな…寒くないのか?)
ミクは図書室の奥の窓の端にいた。
初めて会った時のように変わらず座っていたが、いつの間にか眠ってしまっていた。
マティアスはゆっくりと近づき、ミクの前に膝をつく。
(綺麗な寝顔だな…滅多にこうやってゆっくりと君を見ることはできないのがな…
君はなんで逃げるんだ?)
そう問いかけながら、ミクの髪をすくい、キスを落とす。
彼はまだこれが恋愛感情だということを知らないし、分からない。
恋をうまく消化できない男なのである。
(…閉じ込めておけば逃げないかもな…)
ふと、髪を手から離して、ミクの顔を見つめた。
「………ん…ん??」
「残念、起きてしまったみたいだな…」
ミクは人の気配で目を覚ました。
(ん? まぶっ!!!!!!!!!!)
少し目を開けると目の前にマティアスがいた。
ミクの目はマティアスの笑顔のせいで死にかけていた。
勿論、推しの笑顔というのは目つぶしされるレベルで美しいのである。
「…寝起きにはよくない…心臓にもよくない…」
ミクはボソッと呟く。
「ん? 何か言ったか?」
「いいえ、何も!!!!」
「変わらないな、ミクは」
マティアスが微笑む。
「そ、そんなことないです…私も変わりましたよ…」
「俺はそう思わない。君はかわいらしい変わった子のままだ」
「そうですか…」
(それにしても…近くないか…ヤバい…死ぬ)
「そうだ、君はどうして図書室にいるんだ?」
「え、あ、その…部屋にずっといるのも退屈ですし…本を一冊借りようと思いまして…」
「ふぅん…そうか…分かった。とにかく身体が冷えているだろうから戻ろう」
「はい…」
(ふぅ…何とか、何とか誤魔化せた!! あとは帰ってもらうだけ…)
マティアスはミクの話を聞かずに、お姫様抱っこでまた部屋まで連れて行き、ベッドにおろした。
これで二回目である。
「さて、今度は逃げないように見張るよ」
「え」
「君が寝るまでここにいる」
「…分かりました」
(…これは、諦めて寝るしかないか…!? せめてメイドさんきて!!!!)
「あ、あの…男女で個室に長時間はよくないのでは? せめて、メイドを一人…」
「それなら大丈夫だ。もう来るから」
「そ、そうなんですね?」
(いつの間に呼んだんですか????)
「さ、安心して眠ってくれ…」
「…マティアス様」
「何だ?」
「早めにご帰宅くださいね…すぅ…」
「…」
ミクは無事眠りに入り、寝息を立て始めていた。
マティアスは無言でミクの髪をなでた後に部屋を出て行った。
複雑な心境のまま…。
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