4. 寒い。部屋籠って衣装作る。推しが凸ってくる。
4話です。勝手に冬になりました。
季節は冬に変わり、屋敷も急に寒くなり、庭が雪で包まれるようになっていた。
そして、最近になってやけにマティアスが屋敷にやってくるようになっていた。
ミクはというと、
(…困る。マジで帰ってください…趣味のためだ…許せ…推し…)
と毎回やってくるマティアスに念を送っていた。
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「ふぅ…さむい…暖炉…」
(こんにちは皆さん。
私は寒いからと部屋で籠ることが多くなりました。
寒いのは本当なのです。決してゆったりと暇してるわけではないんです。えぇ。
何してるのかって?
…実はこの世界に転生してから全然コスプレをしていない。
せめて衣装だけでも作りたい…っ!!!!と発狂しそうだった。
そう…つまり私は部屋に籠って、ゲームの推し(女性キャラ)の衣装を作り始めている。
困ったことにこの世界にはミシンがなかった。
なので、地道に手縫いである。
型紙はこの世界でも作られていた新聞を使って作ったし、裁縫道具はコッソリ使用人にお願いして貸してもらった。
絶対家を出たらすぐ全部そろえてやるんだ…!!
え?布はどうしたんだって?
…コッソリと変装して買いに行きました。
きっとバレてない…ハズ…です。
そうして修羅場もない平和な時間を今は過ごしているのだが、さっき言った通り、マティアスがやけに我が家にやってくる。
実は問題はただ屋敷にやってくる事にあるのではなく、彼がなぜか私の部屋に執拗に入ろうとしてくる所にある。
毎回外から声をかけて部屋をノックするのはまぁ、いいのだ。
そのあと部屋の前で私が返答するまでドアをガチャガチャしながら、ずっといるのが問題なのだ。
あぁ…これが執着系か…って実感させられている。
屋敷が騒がしくなったなぁ…今日も彼がいらっしゃったようですね…。
嬉しいけど何とかやめさせないと…今日は縫う作業はしないで対応してみるか…)
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【マティアス視点】
今日もまた彼女に会いに行く。
初めて彼女と出会ったのは、俺が4歳の時、父上に会議があるから待っていろと言われ、彼女の家である「ミカエリス家」の図書室で暇を持て余して本棚の奥で座り込んでいた時だった。
彼女は突然現れたように見えたのを覚えている。
彼女の名前を事前に父上から聞いていたのを思い出して、自己紹介もしたのだが、その後急に叫んだり、挙動不審になっていたりとなかなかに変わった子だなと思ったものだ。
あの後父上が迎えに来た時に彼女の話を沢山したら、また何回もミカエリス家にいけるように気を遣ってくれた。
しかし、なぜかこの年齢になるまで一度も彼女に会うことができなかった。
俺はその間彼女のことが気になって仕方なかったが、夢であった国直属の騎士団に入り、現在は団長になっていた。
思い返してみると、騎士団に入ってから仕事が忙しかったということもきっと会えなかった原因ではあると思うが、それ以外にもなんだか避けられていると感じたのだ。
なぜなのか?という疑問が頭から離れない。
何か嫌がる事をしただろうか?
思いつかない。
なぜ会ってくれないのかも気になって仕方がない。
社交界やパーティーで会う他の者たちは彼女と普通に会えているようで、とても美しくなっていると口々に言うのだ。
はぁ…せめて顔だけでも見たい。
今日は会えるだろうか。
いや、会う。絶対に。
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数分後、マティアスはミカエリス家に到着し、使用人に挨拶をしたあとに、いつも通りミクの部屋の前にやってきた。
(…さて)
マティアスはノックしようと腕を上げる。
ガチャ
(…!?)
しかし、その腕がドアに当たる前にゆっくりと開いてしまったのだ。
ノックする前にドアが開かれたことに驚いたマティアスの時間は一瞬止まってしまう。
「…ご機嫌よう、マティアス様」
照れたような赤い頬に、癖のない長髪、そしてきめの細かい肌が目に入ってくる。
マティアスから見ると、とても恥ずかしがっている少女がそこにはいた。
昔の記憶の彼女と比べると、かなり落ち着いた雰囲気を纏っているし、女性らしさが身体から溢れているようだ。
「…かわいい」
純粋な興味だったものが何かに変わってしまったような気がする瞬間であった。
フラグです。