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65 姫奈の誕生日

 3月3日、姫奈の記念すべき16回目の誕生日の日になった。

 

 ちょうどひな祭りということもあり、ふと思ったことは彼女の名前にある「姫」はひな祭りに由来しているのではないかと思う。


 今日は朝食をいつも作ってくれている姫奈よりも早く起きて、自分が朝食を作り始める。


 生憎、今日は学校がある為、姫奈の分の弁当も作る。学校で彼女が恥ずかしくならないよう、綺麗で女子高校生らしい弁当を目指す。


 今日の姫奈の誕生日は、自分たちで色々考えてサプライズにしようと決めている。


 自分たちというのは、自分の他に姫奈と親しい小林先輩と蜜柑のことで、皆で姫奈の誕生日を盛り上げようとなった。


 小林先輩と蜜柑に関しては面識がなかったのだが、三人でコッソリと杠葉家で会議を開いた時に、小林先輩の猛アタックで人見知りのない蜜柑はすぐに小林先輩と仲を深め合ってくれて、特に問題はなかった。


 それで今日のサプライズ計画だが、まず、蜜柑が姫奈をどこかへ連れ出し、その連れ出している間に小林先輩と自分が家でサプライズの飾り付けや料理を作って、準備出来た頃合いを見計(みはか)らって蜜柑が姫奈を家に連れてくるといった感じだ。


 それから夜ご飯とケーキを3人で一緒に食べることになる。


 姫奈は家庭環境のこともあり、あまり友達とは遊べていなかったっと前に言っていたから、姫奈が主役の誕生日会も初めての事だろう。


 だから精一杯、彼女に喜んでもらえるように皆で頑張るつもりだ。


☆☆☆☆☆☆


 学校が終わって、まだ姫奈がいない家の中で小林先輩と協力して家の中に飾り付けをし、料理も作り終えて後は姫奈の到着を待つだけとなった。


 小林先輩も自分も今日は休みを取っていて、今日の小林先輩はいつも着ている治安維持隊の制服姿とは違い、オシャレに着飾ってきている。


 小林先輩の私服は初めて見るもので、女性らしい雰囲気が出ているいい服装だと思うが、それを褒めようとはあまり考えなかった。

 姫奈以外の女性にあまりそういうことを言う気になれなかったというのが正解かもしれない。


 今日作った料理は、ローストビーフやピザ、パエリアなどといった洋風メニューだ。


 からあげやポテトなど、定番ものもいいと思ったが、女の子らしいおしゃれなメニューがいいとなった。


 ケーキも作りたかったのだが、時間がなかったため近くの有名なケーキ屋で姫奈の好きなフルーツが沢山入ったケーキを買ってきていた。


「もうすぐ来るみたいです」

「本当!準備しよう」


 蜜柑からのメール受けて、小林先輩と三角錐の形をした誕生日用の帽子を被り、クラッカーを持ってリビングで待機する。


 玄関の扉の音が鳴って、リビングの扉越しに足音が近づいてくるのを感じ、ドアが開いた瞬間クラッカーの線を引いた。


 パァンッ


「姫奈ちゃん、誕生日おめでとう!」

「姫奈、誕生日おめでとう!」

「え……!?」


 扉を開けて帰ってきた姫奈が、目を見開いて驚き、口を手に当てる。


「え、え、え、なにこれ……」

「サプライズだよ!」


 まだ姫奈はあまり状況が把握出来ていないようだが、後ろにいる蜜柑が姫奈の肩を掴んでフォローを加える。


「わ、わ、わぁ、皆、ありがとう……」


 それから、数十秒後、部屋の中なども見渡して姫奈はやっと状況が理解できたのか、今度は目をウルウルとさせて瞳から涙をこぼした。


「え、あ、姫奈どうした!」

「ひ、ひめなちゃん!」


 その場にいた全員が姫奈の元に駆け寄る。


「大丈夫……?」

「う、うれしいです……」


 心配そうに見つめると姫奈は涙をこぼしながらも、少し落ち着いて、それから笑みを見せた。


 どうやら、嬉しさのあまりの涙だったようだ。


「サプライズ成功だったようね!」

「ですね」

「よかったぁ」


 その場にいた姫奈以外が、安堵の笑みを浮かべる。


「それじゃ、今から皆で誕生日会しよ!」

「み、みんなでですか?」

「うん!私と蜜柑ちゃんもいるわよ!」

「わぁ!」


 姫奈は目を輝かせて一度準備をしてから、皆で料理が揃えられたテーブルに座り込んだ。


 自分は姫奈の隣に座る。


「こ、これ、湊斗くんと小林さんが作ってくれたんですか?」

「そうよ!湊斗くんと私の力作だからね!」

「おぉ……!」

 

 姫奈がテーブルに並べられている料理達を目を輝かせながら見ている。


 どうやら料理の方も喜んでくれているようだ。


「こんなことしてもらえるの初めてで、また涙出てきちゃいそうです……」

「あはは。めっちゃ喜んでくれているようでこっちも嬉しいわー」


 姫奈の目の辺りがまた緩んで泣いてしまいそうになりながらも、その頭に帽子を被せてあげて、一気にお祝いムードになった。


「いただきます」


 そう言って、皆で姫奈の誕生日をお祝いした。


☆☆☆☆☆☆


 ケーキも食べて、皆でプレゼントを姫奈に渡していた。


「はい、これ誕生日プレゼント」


 小林先輩と蜜柑はそれぞれラッピングされたプレゼント姫奈に手渡す。


「い、いいんですか!ありがとうございます」


 姫奈は少し躊躇(ためら)いを見せながらも笑顔でそれらを受け取っていて、嬉しそうだ。


「あれ、湊斗くんからは?」


 渡し終わった小林先輩と蜜柑は次に自分の方を向いて呟く。


「2人になった時に渡しますよ」

「ほぉ……いいね」

「何が貰えるんだろうね……姫奈ちゃん」


 小林先輩と蜜柑は、自分の言葉を聞いて少しニヤケ顔になり、姫奈のことを見て少し冷やかすように言う。


 姫奈は目を少し開いて、顔を少し赤く染めながら反応する。その姫奈の反応を見て、小林先輩と蜜柑は笑みを見せる。


「それじゃ、私たちは帰るはねぇー」

「あ、ありがとうございました!」


 そう言って2人は満足そうに手を振りながら、家へ帰って行った。


 今は夜の九時。


 姫奈と2人になり、さっきまでわいわいしていた部屋が急に静かになって、その余韻に浸りながらも緊張が走る。


「姫奈、少し待ってて」

「……うん」


 リビングに戻った後、そう姫奈に告げると自分はタンスの中からプレゼントを取り出して姫奈に手渡す。


「姫奈、誕生日おめでとう」

「……ありがとう」


 姫奈は優しく呟いて、自分からプレゼントを受け取る。


 ラッピングに着いているリボンを外して、中身の小さな箱をの蓋を開けると、姫奈はそれを見て声を漏らした。


「わぁ……」

「ど、どうかな……?姫奈に似合うと思って買ったんだけど……」

「私に似合うと思って……嬉しい……」


 姫奈はそれを少し見つめた後、取り出して早速、腕にはめた。


 その淡いピンク色のデザインが施された腕時計を見て、姫奈は優しく微笑む。


「綺麗……湊斗くん、本当にありがとう」

「喜んでくれたようでよかった」


 姫奈の様子を見て安心し、もう一つのプレゼントをポケットから取り出して姫奈に手渡す。


「……手紙?」

「そうだよ。大したことは書いてないんだけど……」


 そう言って手紙を姫奈に手渡す。


 本当に大したことは書いてないが、日頃の感謝の思いや姫奈への気持ちなどを書き綴ったものだ。


「……ありがとう」


 姫奈はそれを受け取って、大事そうに手に持つ。


「手紙貰うの初めてだよ……」

「そうなんだ」

「うん。また、読むね」

「分かった」


 そう言って、幸せな空気が漂うのを感じながら姫奈のことを見ていると、姫奈は手紙をポケットにしまって、そのままそうっと自分に抱き着いてくる。


「湊斗くん。ありがとう。今日一日で最高の誕生日になったよ」

「そっか。よかった」

「うん。皆ともそうだけど、湊斗くんと過ごせた誕生日が最高のプレゼントだよ?」

「……姫奈がそう思うなら、これから何度でも一緒に過ごすよ」

「……うれしい」


 そう言って、姫奈の背中に腕を通してそぉっと姫奈を抱き寄せた。


 姫奈にそう思ってもらえて、本当に今、嬉しい気持ちでいっぱいだ。


 彼女への思いが高鳴るばかりで、心臓がうるさい。


 そのまま少しの間、姫奈とギューしていた。

 

 テーブルの上には、後日、姫奈が食べるように皆で残しておいたケーキが一切れ残っている。


「……湊斗くん。今から私にこのケーキ、あーんして食べさせて?」


 姫奈は恥ずかしげに目を逸らしながらもそう言う。


「……分かったよ」


 恥ずかしい気持ちを抑えながら自分は微笑んで、椅子に座る。


 フォークを取ってケーキを食べやすい大きさにカットしてから、姫奈の口に入れてやった。


「美味しいな……」

「……よかった」


 姫奈はケーキを食べながら、頬を赤く染めながらはにかむ。 


(かわいいな……)


☆作者後書き☆


 もう、お互いに気持ちは分かっているようなものなので、2人が何をしようがもう怖くないですね()

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