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55 湊斗くん大変身作戦①

 外に出てみると、雲一つない青空が広がっていた。


 電車に揺られて数分、それほど離れていない駅の改札を出る。


 それから数十分ほど手を繋ぎながら歩いてついた店は、姫奈が事前に選んでくれた、自分をコーディネートしてくれる洋服店だ。


 店内に入ると、生暖かいオレンジの照明に照らされていて、洋服がズラッと並んでおり、男性もの、女性もの共におしゃれなデザインの服が揃えられている。


 一目見ただけで、服の名称などよく分からない自分にとってもいい店だと分かる。店員も笑顔で店内を見回していて、来店している客も楽しそうに服を選んでいる。


 こういう個人営業のマイナーな店は一人では入りにくいものだが、姫奈と一緒に来てみると違和感はないし、むしろ常連のような感覚に襲われたりしている。


 まぁ、それと反対にこんな素敵な店にジャージで来ているのは恥ずかしいのだが……


「ここの店にはよく来るのか?」

「うん、結構来るよ~」


 隣で姫奈が、店内を見回しながら服を見ていっている。


 あまり自分の服装をどう思っているか聞けないし、彼女も自分の服装について何も言ってこないので、そこがどう思われてるか分からなくて怖い。

 でも、今更こんなことを考えていてはいけないし、今からは姫奈に言われた通りにしていこうと思う。


「大体はこんなのが似合うかな~って決めてきたんだよ。湊斗くんは背が高くて、身が引き締まっていてスタイルもいいから、それを際立てるファッションがいいと思うんだよね~」

「……事前に考えてまでくれていたのか。嬉しい。ありがとう姫奈」

「え、あぁ……うん。どういたしまして」


 目に留まった服を見ながら話した姫奈は、自分の言葉が意外だったのか、聞いた瞬間、自分の目を見て少し息詰まった後、頬を少し薄紅色に染めて視線を自分の目から外した。

  

 自分では今まで異性に興味がなかった為、オシャレなんぞに興味はなかったが、今はどことなく自分がどう変わるのか期待している自分がいる。


 それは、今まで関わってこなかった異性とこんなにも関わるようになったからだろう。

 姫奈がどう自分を生まれ変えてくれるのか楽しみだ。


 自分も店内の服を見てみる。


 今は冬なので、店内は長袖や長ズボンといった冬用の商品が多い。なのでまた夏になったら、夏用の服を姫奈に選んでもらうことになる、かもしれない。

 あまり人を頼るのはよくないし、自分でも考えていこうと思うが、姫奈が良ければ姫奈に頼みたい思う。


 まだこの先どうなるかわからないが、同居生活が終わっても姫奈は付き合ってくれるだろう。


 あと少ししたら治安維持隊の試用期間も終わる……らしいし。 


「姫奈は、いつもどうやって服を選んでいるんだ?」

「んー。いいなぁーと思ったのを着てみて、似合っていたら買う、みたいな?」

「……そんな感じなのか?」

「そうだよ。あまり服選びは深く考え過ぎずに、いいと思ったら買っちゃうのがいいんだよ」

「なるほど」


 姫奈は服を見ながらお目当てのものが見つかったのか、それを手に持ち、それから自分の元へ手渡してくる。


「よし、まずはこの服とこのスボンを着てみよう!」

「よし」


 姫奈がチョイスしたのは、黒のチェスターコート、ベージュのカラーシャツ、黒のテーパートパンツだ。


 といっても、自分は服の名称やらは分からないので姫奈に聞いてみたんだが。


 店員に声を掛け、許可をもらってから試着室に入る。


(よいしょっと……)


 さっきまで着ていたジャージを脱ぎ捨てて、渡された服に着替える。

 

(こんな感じかな)


 鏡を見て一通り身だしなみを整えてからいい感じだと思ったところで、試着室の扉を開けることにした。


「おぉ……」


 自分の姿を見た瞬間、姫奈が目を見開き、口から声が漏れる。その隣にいる女性店員も姫奈と同じように目を見開いて「おぉー」っと口から声が漏れる。


「ど、どうだ?」


 普段着慣れない服を着ているのに加え、二人に見られていて恥ずかしくて、その恥ずかしい気持ちを抑えながら姫奈に聞いてみる。


「か、かっこいいよ、湊斗くん!」

「体型の良さが際立っていて、どこか大人な雰囲気のあるファッションがとてもお客様にマッチしていると思います!」

「あ、ありがとうございます……」


 姫奈は目を見開いたまま、声を上げて褒めてくれた。店員も笑顔で褒めてくれる。

 

 かっこいいと言われ、余計に恥ずかしさが増したものの、それを受け止めて嬉しい気持ちでいっぱいだ。


「何だかジャージより気分が上がるよ」

「でしょ~。とてもいいと思うんだけど、湊斗くんはどう思う?」

「俺もいいと思う」

「そっか!よかったぁ!他にも試そっか!」

「おう!」


 流石は姫奈はセンスが良いと思うところだ。最初からいいものを選んでくれた。

 ひとまずは、この服装をキープしておいて、他の服も試すことにする。


 店員は「ぜひ、他にも色々と着てみて、ごゆっくりお考えくださいね」と言い、にっこりと微笑んだ。

 

 店の雰囲気も姫奈とのやり取りも、今まであまり経験したことのなかった服選びも気持ちよく出来て、気分がどんどんと高鳴ってきた。


「次はこれにしよう!」


 そうして、次に姫奈が持ってきた服をまた着ることにした。


☆☆☆☆☆☆


 あくまで売り物なので、あれから他の客に迷惑にならない程度に服を選んでは着てみて、色々と試した。


 最終的に選んだのは最初に試着した服装と、黒のガーディガン、白のバンドカラーシャツ、スラックスパンツだ。


 少し値段は張ったものの、とても気分の上がるオシャレな服装が手に入ったので満足している。


 来ていたジャージは袋の中に入れて、最初に選んだ服装を身に着け、姫奈とのお出かけを続行することにして店を後にした。


 隣を歩いている姫奈がチラチラとこちらを見てくる。


「いいね~」

「ありがとう。姫奈のおかげだよ」

「どういたしまして。今の湊斗くんを見て、もう一つ行きたいところが出来ちゃった」

「え、どこに行きたいんだ?」

「美容室に行こ!」

「美容室……?」

「うん!」


 やけにテンションの上がっている姫奈は、それから携帯で美容室を調べ始めた。

 

 そして、美容室に行くことになった。

今日から五日間再開します!

よろしくお願いします!

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