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50 姫奈は作りたい

 タンタンタンタンタンタンタンタン


(……何だ?)


 次の日の朝、何かを机に叩きつけているような物音が聞こえてきて、いつもより少し早く目を覚ます。


 体を起こして音が鳴る方に振り返ってみると、姫奈が台所でいつものエプロン姿で何かを作っている。


 どうやら、音の正体は何かを切っていたようで、まだ寝起きの半目状態で姫奈の姿を見つめていると彼女と目が合う。


「おはよう、湊斗くん」

「おはよう、何してるんだ?」

「お弁当作ってるよ」

「……あぁ」


(なるほどね……)


 寝ぼけていて、一瞬なんで姫奈が弁当を作っているんだ?と思い、少し考えてから姫奈の分の弁当を作っているのかと気づく。

 昨日は午前中までだったため弁当は要らなかったものの、今日から早速、授業が始まるので、姫奈は早く起きて彼女の分の弁当は姫奈自身が作ろうと思ったのだろう。


 前までは自分の分の弁当しか作っていなかったので、朝自分よりも早く起きて、弁当を作っている姫奈の姿が新鮮だ。

 いつも朝が弱くて寝ぼけている姫奈だが、今日はスッキリとした顔をしている。


 朝食担当の自分が姫奈の分の弁当を作ってもいいのだが、それはさすがに姫奈が恥ずかしいだろう。


 そのままいつも通り洗面所に顔を洗いに行ってから、自分の分の弁当と朝食を作ろうと台所が開くのを待っていると、姫奈はみそ汁まで作り始めたので、何かおかしいと思って聞いてみる。


「みそ汁を作ってどうするんだ……?」

「これは朝食用だよ。お弁当のついでだから、朝ごはんも作ろうと思って」

「でも、俺が朝食当番だし……」

「ううん。私が勝手にしてるからいいんだよ。逆に、急に何も言わずに作り始めててごめん……」

「いや、むしろ嬉しいよ。それじゃ、夕飯は自分が作るから」

「分かった。ありがとう」


 そう言って姫奈は、少し申し訳そうにしたものの納得したようで、そのまま朝食も一緒に作り始めていた。


 っともう一つ、気が付いてそれについても聞いてみる。


「……あれって、もしかして、俺の弁当まで作ってくれたのか?」

「うん。そうだよ」


 とてもあっさりとした返答に口がポカンと空いてしまう。

 姫奈の弁当の横に自分の弁当まで置かれていて、自分の弁当の中にも食材が詰まっている。見るからに美味しそうなものばかり入っていて、テンションが上がってくる。


「……うれしい。本当にありがとう。まさか弁当まで……」

「今まで湊斗くんが朝早く起きて頑張ってくれていたから、その恩返しだよ」

「普段通りのことをしていただけだが」

「その普段通りの事が結構、大変だと思うけど」


 それから姫奈に「湊斗くんは座ってて」と言われ「何か手伝うことはないか?」と聞いたが、すぐに「ない」と返されたので、自分は言われた通り食卓に座って姫奈の事を見ていることにした。


 姫奈は何だか上機嫌に鼻を鳴らしながら、料理を作っている。


(な~んか、お母さんみたいだな)


 エプロン姿で、みそ汁の味見をしている姫奈を見てそう思う。自分はご飯が出来るのを待っている子供のようだ。


 そんな事を考えながら待っていると、目の前に朝食が運ばれてきた。


「どうぞ」

「……ありがとう」


 夕飯を作ってもらっていることはもう慣れているので何も違和感は感じないが、朝食を姫奈に出されると、初だし、朝から姫奈が作ったものを食べていいのか?と思って少し畏まってしまう。


 それに加え、運ばれてきた朝食のクオリティーが高すぎて、いつも作っている自分の朝食が質素に見えてくる。


 丁寧に木のプレートで持ってこられた朝食には、ご飯にみそ汁、主菜に目玉焼きとベーコン、副菜にレタスのサラダが置かれている。


 一見、一般的な朝食に見えるが、どれも綺麗に盛りつけられていて、皿の位置や栄養バランスもばっちりで、とても素敵な朝食になっている。


 遠慮してしまいそうな思いを胸にしまって、手を合わせる。


「いただきます」

「召し上がれ」


 そう目の前で微笑んだ姫奈に、またお母さんのような空気を感じながら朝食を食べ進めていった。


☆☆☆☆☆☆


「これ、お弁当」

「ありがとう」


 そう姫奈の手によって作られ、姫奈の手によって目の前に差し出された弁当を少し緊張気味で受け取る。

 

 さっきまで料理を作っている姫奈を見ていた時はお母さんのようだったが、こう目の前で渡されると、奥さんが出来たような気分になってしまって、少し頬が熱くなってくる。

 他の女子ではなく姫奈が作ってくれたものなので、その分嬉しいし、期待大でテンションが上がってくる。


 綺麗にいつもの弁当袋に入れられていて、見た目は変わらないものの、中身は姫奈が作ってくれたものだと思うと、そこがまた非日常感があっていいなと思いながら自分のカバンの中へしまった。


 昼になって弁当箱を開けるのが楽しみになってきて、早く時間が過ぎないかなと思い始めてきた。

私も同級生から、作ってもらったお弁当を手渡しで貰いたい(´;ω;`)


裏話

実は冬休み中、湊斗くんが一日仕事の日に姫奈さんは湊斗くんにお弁当を作ろうとしていましたが、湊斗くん自身の考えでは姫奈さんと少しでも一緒にいたいため、昼になったら維持署を抜け出して、家に帰って姫奈さんと一緒に昼ご飯を食べていたため、姫奈さんは一度も冬休みに湊斗くんへお弁当作ることができませんでした(ᗒᗩᗕ)

ですので、学校が始まったら……!っと考えていて、やっと今回作れたわけですね(^^)

維持署からお家まではそんなに離れてないので、昼休みの時間でも湊斗くんの運動力を駆使すれば、十分間に合います(・∀・)

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