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03 少女の正体

「湊斗、昨日何やってたんだ?」

「少女のお見舞いに行ってたんだよ」

「あぁ例の制服少女か」


 今、自分の目の前で話しているのは唯一の友達の伊藤伊織(いおり)だ。彼も治安維持隊員で少女のことについて先日、少し話をしていた。

 一応彼も治安維持隊の実験対象となっており、認められてから治安維持隊に所属している。


 普段からよく事件のことについてお互いに話し合うが、今回はなんたって同じ高校の生徒の事だったので話が少し盛り上がっていた。

 かといって、今は学校なのでそんなに大きな声で話せない状況なのだが。 


 昨日のお見舞いで、朝霧さんは人の気持ちをとても理解してくれて一緒にいて楽しい人だなと思っていた。


 体の状態も良くなって、学校に出てこれるようになったら少しは仲良くできるんじゃないかと思っているが、今の学校での自分の立場的に少し厳しい所だろう。


 まぁまだ同じ学校なのかは半信半疑なのだが。


「どうだったんだ?ちゃんと話せるようになるまではなっていたのか?」

「なっていたよ。思った以上に元気で、僕の話にちゃんと付き合ってくれたよ」

「へぇ意外だな」

「意外とは何だ」


 伊織が「お前の話つまんないのにな」みたいな視線で見てくる。


 分からなくもないが今の伊織の視線には少し傷つく。自分としては、ちゃんと考えてから話しているのに。

 昨日は顔で誕生日が分かるという話題を朝霧さんに振りかけたが、今となってはクソ意味わかんない話題だったと自覚して恥ずかしくなっている。

 自分の話がつまらないという事実も否定はできないから、この事については要改善ということだな。


「いやーまぁ、湊斗の話に付き合ってくれる異性がいてくれて何だか安心したよ」

「なんだよその言い方」

「別に」

「別にって、まぁ普段から異性と話さないのは承知しているが」

「お前年上が多いもんな」

「それはしょうがないことだ」


 仕事の都合上年上しかいないので、そうなるのはしょうがないことだ。別に同年代の異性と話したくないわけではなくて、話したくても話せない、男子高校生にとって大事な部分をなくしてしまった苦しい状況なだけだ。


「それで、名前とか分かったのか?」

「あぁ、朝霧姫奈という人だ。俺は聞いたことがなかったんだけど」

「あ、朝霧姫奈!?」

 

 彼女の名前を聞いた途端に、伊織が瞳を大きく広げて、気が動転したように大声で彼女の名前を叫ぶ。


 それを聞いたクラスの奴らが、なんだなんだとこちらに視線を向けてきたので一気に身の毛がよだつ。

 

 クラスの中ではあくまで陰キャの分際なので、こちらに注目を向けられると、頭が沸きだしそうなくらいの恥ずかしさに襲われる。顔が熱くなってきてその場いたくなくなる。


(やめてくれよ……)


「声がでかいんだよ」

「すまん」


 小声で伊織をしかりつけたら、伊織が申し訳なさそうに身をすくめてこちらを見てくる。彼も顔が赤くなっている。


 なんだなんだと聞きたいのはこっちだ。急に名前を叫ばれると思っていなかったので、無性に彼女のことについて気になってしまった。


 周りを見渡すとクラスの奴らが、「陰キャの分際で叫んでんじゃねぇ」と言わんばかりの視線を送ってきていて、なんて厳しい世界なんだと身をすくめる。


 伊織も自分と同じで、治安維持隊員として少し変装をしているため、クラスの中では影が薄い方だ。

 かといって伊織は自分ほど影が薄くないので、少しばかりの人脈がある。だから、他のクラスの状況などは自分よりもある程度知っている。


 だから今回伊織に相談したのには意味があった。


「ふんで、急に叫んでどうしたんだよ」

「お前朝霧さん知らないのかよ。結構な有名人だぞ」

「知らねぇよ」


 伊織がありえねぇみたいな顔でこっちを見てくる。当然自分は全然知らなかったし、有名人と言われてとても驚いている。


(そんなに有名人なのか……?)


 普段影の薄い分、あまり周りが見えていないのかもしれないが有名人なら少しばかりは知っていると思うのだが。


 伊織と話をしていても異性にあまり興味がないので、名前を言われてもあまり分からないし覚えていなかったというのが有り得るかもしれない。とりあえず、朝霧さんの顔を見るのは初めてだったので学校で見ていたとしても顔を覚えてなかったのかもしれない。


 まぁ考えてみればいちいち異性の顔なんて覚えてないし、どの名前なのか全く分からない。


「どのくらい有名なんだ?」

「まぁ、湊斗以外なら全員知ってるよ」

「それは言いすぎだろ」

「お前が世間を知らなすぎるだけだ」


 はぁ……と呆気にとられてしまって、マジかよと心の中で思う。そこまでだったとは。もっと彼女のことが気になってくる。


「同じ学年なのか?」

「そうだよ。二組だ。まぁ最近来てないらしいからそういうことだったんだなと」

「そうだったのか」


 自分は六組だった。一年生は一階と二階で教室が分かれており、二組は上の階で六組は下の階だったのであまり接点がない組だ。

 それに加えて、最近来ていなかったというのだから知らないのも有り得る。


「なんでそんなに有名なんだ?」

「まぁ、見た目がかわいい、何でもできる、かわいい、誰にでも優しい、かわいい、愛嬌があるから皆に好かれてるみたいだ」

「はぁ、かわいいがやけに多いな」

「それであまりに皆に対して面倒見がいいから、包容力があるなんて言われて女神様なんて呼ぶやつもいるらしいぞ」

「そりゃ、凄いな」

「だろ」


 なんだか、自慢げに伊織が答えるので「お前には関係ないだろ」という視線を送っておく。


(女神様ね……)


 何とも言えない表現だが、きっとそれぐらい皆を魅了しているのだろうと思う。

 自分の話もちゃんと聞いてくれて笑ってくれていたので、そうやって言われると分からなくない。


 なんだか凄い人と関わってしまったような気がして不思議な感じだ。


「その優しさと美貌に勘違いする男子が急増して、学年問わずこぞって彼女に告白しているみたいだが、皆振られているらしいぞ」

「へぇー」

「なんせ、本当に誰にでも優しいから一途ってものがないのかもな。彼氏もいないらしいぞ」

「そうなんだな」

「湊斗、中々良いやつと関われるようになったんじゃないか?」

「なんだよ。その顔やめろよ」


 伊織が何やらニヤニヤとしてこちらを見てくる。


 まぁきっと伊織のやつなのでゲットできるチャンスなんじゃないかという事なのだろうと思う。


 到底そんなつもりはない。

 ましてや事件の被害者だ。そんな気持ちで接していたら今度の信用問題に繋がってくる。


 確かにかわいいという部分では、男子がそう思うのも理解が出来る。


「まぁ、湊斗はそんなことで人に迫っていくやつじゃないと思っているんだけどさ」

「分かってくれると助かる」

「そこが湊斗のいいところでダメなところなんだよなぁ」

「なんでだよ」

「もっと男ならガツガツいってほしいよねぇ」

「紳士的に向き合うのがこの仕事のモットーだろ」

「まぁそうだな」


 なんだか話の趣旨がずれていきそうになっていたのでこの辺でやめておいた。


(学校の有名人か……)


 これからの展開に不安と少しながらの希望を感じて次の授業に取り組むことにした。

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[気になる点] なんで治安維持部隊があるのかの説明もないまま話が進む。 主人公が治安維持部隊に入りたがった理由が不明。 主人公で成功したら年齢の引き下げという話だったのにクラスメイトに部隊員がいるとい…
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