45 寒い夜には……
活動報告にも書きましたが、昨日投稿した話は消去しました。
大事な時間を取ってしまい、ごめんなさい。
姫奈さんが小林先輩と帰ってきたところから始まりますので、昨日投稿した分を読まれた方は内容を忘れてお読みください。よろしくお願いします。
何事もなく神社の警備も終わり、初日の出が空に上がってさっきまであった雪雲を切り裂くように地上を照らし始めた頃、姫奈と小林先輩が帰ってきた。
「湊斗くん、姫奈ちゃん返すわね」
「ありがとうございます」
「いやーそれにしても、湊斗くんやるじゃない」
「何がですか」
「分かってるくせに」
小林先輩は目を細めて二ヒヒヒと不自然に笑っていて、何かよく分からない自分は不安になってくる。
一体何を二人で話してたんだ?と気になる所だが、姫奈はニコニコとしていて聞きにくかったので、とりあえずは今は聞かないことにしておいた。
「それじゃあね!」
「小林さん。今日は色々とありがとうございました」
「どういたしまして。姫奈ちゃんとお話してると楽しいし、全然飽きないからまたお話ししたいな」
「ありがとうございます。またよろしくお願いします!」
「うん!」
二人ともとても仲が良さそうで、見ているだけで和やかな気分になった。
そう言って小林先輩は手を振って別れの言葉を言い、その姿を見て姫奈も手を振る。そして小林先輩は隊員の集まっている場所へ戻っていった。
そして自分たちも家に帰ることにして再度姫奈の手を握り、家の方へと歩き出した。
☆☆☆☆☆☆
マンションに着いて、部屋の鍵を開けて中に入る。
帰る途中、姫奈はなぜか上機嫌で「フン、フフン」っと鼻を鳴らしながらニコニコと隣を歩いていた。
本当に小林先輩と何を話していたんだ?という思いは募るばかりで、思い切って聞いてみたが、姫奈から「女同士の秘密だから、湊斗くんは知らなくていいの」と言われ、断られてしまった。
だからもう、それ以上は追及しないようにした。めちゃくちゃ気になるが……
維持隊の制服を脱いで部屋着に着替える。もう今日は仕事がないので、これから夜の寝不足分を補うように少し寝るつもりだ。
姫奈も身に着けていた服を脱いで、ラフな服装で部屋から出てくる。彼女も少し眠たそうにしていて、ぼーっとしている。
それから彼女は自分の目を見てくる。
「湊斗くん。今日は楽しかったよ。湊斗くんと行けて良かった」
「そっか、良かった。俺も姫奈と行けて楽しかったよ。ありがとう」
「やった。こちらこそありがとう」
そう言い合い、お互いに微笑んだ。 とても幸せな空気が立ち込めていて、心がジーンと温かくなっってくる。
それから、少し寝ることにした。姫奈も少し寝るようで、今回はソファではなく部屋に入っていった。
☆☆☆☆☆☆
……あれから少し寝た後、目を開いたら携帯のカメラが見えて、何だ?と思ったら、姫奈が自分の寝顔をパシパシと撮っていたらしい。
携帯の画面越しに自分が起きたことを知った姫奈は、驚いて「湊斗くん、これは違うよ!決して悪ふざけとかじゃないから!」とめちゃくちゃ慌てていた。
それから「それじゃ何だよ?」と聞くと、姫奈は視線をチラつかせた後、黙ったままそのまま自分の部屋へ戻っていってしまった。
どうやら、自分の寝顔を見る分にはいいと思っていたものの、携帯で撮っていたことは悪いと思ったらしく、そのまま逃げたようだ。
自分の寝顔を写真に残して、一体何の需要があるんだ?と思いながらそのままベットから出た。
それからというものの、姫奈はリビングに帰ってきたが黙り込んでいて、自分が忘れたように振舞うと姫奈は元の調子に戻ってまた普通に接し始めてくれた。
時間がたち、また夜になって自分たちはまたそれぞれの寝床についていた。
昼寝の加減は調節をしたものの、まだ眠気は来ていなくて中々眠れない状況にあった。だから今日の出来事を思い出しながら、自然と眠気が来るまで天井を見ながら待つことにしていた。
すると近くでドアが開く音がする。
(……ん?)
姫奈の部屋の方を見てみると、部屋から出てきた彼女がパジャマ姿で立っていた。
「……湊斗くん」
「どうした?」
夜中に彼女が出てきて話しかけてくるのは初めてで、トイレに行く気配でもなさそうだ。一体何かあったのだろうか。
「寒くて眠れないよ」
「え?あ、そっか」
少し内心慌てたものの、至って普通のことだったので安心する。今夜はいつもよりも急激に寒さが増していて、今朝降っていた雪がまた夜になると降り始めていて、布団を着ていても体が寒さから抜け出せないほどに冷え込んでいた。
だから、この寒さに姫奈も寝付けずにいたのだろう。
「そういえば、湯たんぽがあったはずだから今からお湯入れるよ」
「……」
前に立っている姫奈は、もじもじとしながら視線を合わせずらそうにしていて少し頬を赤く染めている。
(どうしたんだ……?)
やけに妙な雰囲気を感じながらも、体を起こして湯たんぽを探しに行こうとベットから出ると、後ろから姫奈にパジャマをつままれた。
「ど、どうしたんだ?」
振り返ると彼女は申し訳なさそうに下を向きながらも、自分のパジャマをつまんでいる。
「み、みなとくんにあたためてもらいたいです……」
「え?」
(どういうこと?)
一瞬、何を言われたか分からなくて思考が停止する。
すると……
うわっ
バサッ
そのまま訳も分からずに、姫奈にベットへと押し倒されてしまった。
急すぎて、心臓が爆発しそうになる。
姫奈は自分のパジャマをつまみながらも、目をぎゅっと閉じて自分の体の上にいる。
(どうしたんだよ、急に!?)
完全に体が密着がしていて、非常にやばい。ベットの上という事もあってドキドキが倍増する。
それから彼女は上目遣いで自分の目を見てきて
「だめ?」
っと何かを訴えるような目で見つめてきた。
頭の思考が追い付かなくて、意味が分からなくなっている。
(い、いや、だめって……)
よく分からなかったものの、少したってから姫奈がしてほしいことが何となく理解できた。それを結果として出すのは、考えるだけで恥ずかしいことだが、この状況はその答え以外見つからない。
(……添い寝)
ギューや手を繋いだりはしているものの、さすがに付き合っていない男女同士が一緒のベットで寝るというのは……
最近、スキンシップが多すぎてどこまで許していいのか分からなくなってきているものの、これは明らかにダメだろ……
でもこの状況、断りづらい。姫奈の方からしてきて、今は自分のパジャマをぎゅっと握っていてめちゃくちゃ自分を見ている。このまま断ったら、逆に勇気を出してやった姫奈の行いが無駄になってしまいそうで怖い……
彼女がしてもらいたくてやったなら、別に変なことはするつもりはないし、いいのはいいんだが、今後自分の行いにきっと後悔することになるはずだ……
姫奈の訴えるような視線がずーっとこちらを見てきていて、汗が頭をつたるような感触を感じる。
「い、いいけど……」
そのまま抗うことが出来ずに了承してしまった。
(他意はない他意はない他意はない他意はない他意はない他意はない)
そう心の中で呪文のように唱え、湧き上がってくる男の本能を必死に抑える。
そのまま彼女は布団をかぶせて、自分の隣で安心したかのように微笑んでから、胸の中で眠ってしまった。
そのまま仰向けの状況で寝るのはいけないと思い横になったが、彼女は自分の服をつまんだままで、距離が開くことはなかった。
(あぁ……)
ドキドキして朝まで眠れずに、姫奈をベットで添い寝しながら夜を明かした。