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44 姫奈の願い事と……

平穏無事(へいおんぶじ)だよ。やっぱり何も起きないことが一番だよね」

「……なるほど」


 あまり聞き慣れない言葉が出てきて、さすがは優等生の姫奈だと思う。


 平穏無事。姫奈は容姿端麗だから目立ちやすくて狙われやすいだろうし、女性だから弱い立場で何かあったも抵抗できないだろう。

 自分も神様に、姫奈に何もないよう願いたい。


「後はね、湊斗くんの安全だよ。普段から色んな事件に関わってるから何かあったら私が一番悲しいよ」

「……え、あ、ありがとう」


 予想してなかったことを姫奈が願っていて、思わず言葉が詰まってしまう。まさか自分の事まで願い事をしてくれていただなんて……

 身内以外から自分のことの願い事をされるなんて初めてだから凄く不思議な感覚で、自分から聞いておいて顔が熱くなってくる。


「何が何でも、三月までは私の事ちゃんと見てくれなきゃいけないしね」

「そうだな……大丈夫だ。勝手に死んだりはしないよ」

「本当に気をつけてよ?」

「うん」


 姫奈は隣を歩きながら真剣な眼差しで自分の方を向いて言うので、自分がちゃんと大切に思われているんだなと心が温かくなってくる。

 容姿とか関係なしに姫奈は中身まで良い人で、こんな人が自分の近くにいてとても幸せだ。


「出店で何か食べに行こうか」

「うん!何だか今は朝なのに何でも食べれそうだよ」

「俺もだ」


 そう言って出店が出ている所へ向かった。


☆☆☆☆☆☆


 二人で少しながらも開いていた出店で、朝食べるには重い、りんご飴やベビーカステラなどを食べて楽しんだ。

 二人とも甘いものが好きなので余裕で食べれた。甘いものは別腹ってやつだ。


 外へ出て二人だけで過ごすのはクリスマスの買い出し以来二回目で、若干緊張はするものの、やっぱり彼女といると自分も自然と笑顔になってくるし、周りの視線を忘れて姫奈の事だけを見ることにしていた。


 やっぱり彼女といると楽しい。


 ちょうどいい時間となって自分はこれから警備をしなくてはいけないので小林先輩に姫奈を預けることにした。


「どうだった?二人でのデートは?」

「……楽しかったですよ。初詣は初めてでしたが、湊斗くんと来れて良かったです」

「そっか~!それはよかったね!湊斗くんには申し訳ないけど、姫奈ちゃんは今から私に付き合ってね!」

「はい。よろしくお願いします」


 相変わらず小林先輩は語弊がある言い方をする。自分はもう気にしてないのでいいが、姫奈が少し困っていた。

 それから姫奈は、小林先輩と手を振って一緒にどこかへ消えていった。

 小林先輩が聞いた質問に姫奈が楽しかったと言ってくれて、自分はとても嬉くてまた心の中が温かくなった。

 異性と接することが苦手な自分に少し自信が付いたように思えた。 

 

「湊斗くんは僕に付き合ってくれるのかな?」

「あぁ……そうですね」


 後ろから声が聞こえて振り返ると、藍住隊員がニヤニヤ笑いながら後ろに立っていた。完全に小林先輩が言ったことにノっていて笑えてきてしまう。


 そのまま藍住隊員と所定の警備位置について、周りを見渡しながら時間を過ごすことにした。


「もうちょっとで初日の出だね」

「そうですね。見えますかねぇ……」


 空を見れば雲が掛かっている空がオレンジ色に染まってきており、初日の出が雲の隙間から見えるかどうかという状況だ。


「今年はどんな一年になるんでしょうかね」

「どうだろうね。何事もなく平和だったらいいんだけどね。湊斗くんが今一番気にしてるのは姫奈さんのことだろうけど」

「その考えは……否定できないですね」


 藍住隊員は周りを見渡しながら、時々横目で自分に語りかけてくる。確かに姫奈の事が気になってしまうことは彼にも分かるんだろう。


 同居期限まであと三か月。今の姫奈の調子じゃ、上手くいけば社会的に自立できそうな気がするが、自分としては少し心配な所もある。

 前に比べて人と接しやすそうにしてるが、自分が見ているのは藍住隊員や小林先輩と話している所しか見ていないから何とも言えない。

 父と母、祖父母と気軽に話せるはずの身内と話せないのは本当に苦しいだろうなと思う。


 もう少し彼女が恵まれた親と出会えていたらなんて思うのは違うのか……


 学校に行き始めたら少しは変わるのかもしれないと感じている。


「湊斗くんは姫奈さんのことどう思っているんだい?」

「そうですね……よく分かりませんが、子供っぽくてなんだか妹みたいな感じなので放っておけないというか見守ってあげたいって感じが強いですね」

「そうなんだね」


 そう言って藍住隊員はニッコリと微笑む。何だか子供の事を聞いている父親のようで謎の安心感が湧いてくる。


「彼女に恋愛的な感情とかあるのかい?」


(……恋愛的な感情?)


 急な質問に驚くが、彼は隊員の立場から言ってるのだろう。サポート役として一緒に暮らしている自分でも、姫奈のことを恋愛的に好きになることはあり得るし、そうなっていたら少し注意が必要だと思って藍住隊員は聞いていると思う。


 そう言われて考えてみるとよく分からない。

 まず「恋愛的な好き」の定義が分からない。姫奈のことを好ましいとは思っているし、嫌なんて思っていないがそれが果たして恋愛的な好きに入るかと思うとそうじゃないと思う。


 思春期の男としては、学校中から学年問わず告白されているくらい姫奈はかわいいし、好きっていう感情が湧いてくるかもしれないけど、そんな感情はないし、それが果たして本当の好きなのか……


 今は一緒に住んでいるから恋愛的感情を抑えているのかもしれないが、よくよくは分からなかった。


「藍住隊員は恋愛的な感情はどういう風に分かると思いますか?」

「そうだな。常に彼女の事が忘れられない。彼女と話すとドキドキして視線が合わせられないとかじゃないかな」

「……なるほど」

「最初の方の恋となると、湊斗くんは女の子に慣れてない方だし、ドキドキして普通に話せないんじゃないか?まぁ、姫奈さんの場合、隊員として心配している所があるだろうから、普通に話せたり常に彼女の事を考えてたりすることがあるんだろうけど」

「んー」


 確かにそう言われるとそうなる。異性に慣れていない自分は彼女の仕草に心がやられているだけかもしれない。

 そういった意味ではドキドキするし、今は恋愛的な感情で好きとはちょっと違うんだろうか。


 でも、そんな中途半端な気持ちで彼女とギューしたり手を繋いだりしている自分はダメなんだろうか。


 よく分からない。


「変な事を聞いてしまったね。すまない」

「いや、別にいいですが……」

「あまりサポート役として一緒に住んでいる子の事を恋愛的な感情で見ているのかと聞くのはどうかと思うだろう?」

「んー分からなくはないですが、小林先輩は既にそういう感じで僕たちを見てますよね」

「ハハッ。そうだね」


 ジト目でそう言うと、藍住隊員は笑いながら肯定した。

いつもご愛読ありがとうございます。皆様にお知らせがあります。

私自身のことでございますが、これから忙しい時期に入りますので小説を書ける時間が少なくなります。

その為、毎日投稿は続けますが、一話当たりの文字数が現在あるストックが切れたあたりから1000〜1500文字になる可能性があります。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。

作品についてですが、5月には一区切りつく予定です。

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