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42 姫奈と年越し

「姫奈、俺にもちゃんと言わせてくれ」


 そう言って膝の上に置いている彼女の手の上に自分の手を覆いかぶせ、彼女の目をしっかりと見る。


「え、あ、うん……」


 姫奈は急にしたので驚いたのか、少しだけ下に視線をずらす。それでも自分の目を見つめ返してきて真っ直ぐと見てくる。彼女の綺麗な瞳に反射して自分の姿が写る。


「姫奈、俺も姫奈に会えて本当によかった。最初に会った時は、いつも通り可哀想な子だなって思ったけど、初めてお見舞いに行った時、姫奈は俺のつまらない話もちゃんと聞いてくれて、笑ってくれて、自分の事をちゃんと理解してくれる人だなって思えた。自分の話をちゃんと聞いて笑ってくれる人はいなかったし、そこから姫奈は少し特別だなって思えてた」


 姫奈の目に視線を外さずにしっかりと見続けている。姫奈は少し目を泳がせながら恥ずかしそうに頬を赤く染める。


「それで一緒に住むことになって、異性とあまり関わったことがなかったし自分なんかが一緒に住んでいいのかって思ったけど、それを(くつが)されるように姫奈は接しやすくて、今は自分の弱いところまでさらけ出してくれた。俺ってヘタレてる部分があるから、相談するのが遅くなって姫奈に我慢させてしまっていたことが本当に申し訳ないって思ってる」

「ううん、そんなことないよ。湊斗くんはすぐに相談してくれたと思う。私も私で相談せずに我慢してたのはダメだったと思う。ごめんなさい」

「いや、謝ることじゃない。ああいうことは言い出しにくいからサポート役の俺がすぐに気づくべきだったんだ。それでな、今俺の前で素でいてくれてめちゃくちゃ嬉しいんだ。俺ってあまり人と深く関わるタイプじゃないから、姫奈が一緒にいてくれて、自分と深く関わってくれて、本当に楽しいし幸せだよ。短い間だけど今年もありがとうございました」

 

 そう言って座りながら深々とお辞儀をする。


「こちらこそありがとう。嬉しい」

「これからもよろしくな。ちゃんと見守るから」

「うん。ちゃんと見守ってて」


 そして、二人で目尻を下げて微笑んだ。


(本当に幸せだ)


 まだ姫奈と出会って3ヶ月ぐらいしか経っていないけど、こんなにも近い人になるだなんて思ってもみなかった。

 年の最後にこんな豪華なお礼を言われて、本当になんか、感動でいっぱいだ。

 彼女と出会えて本当に良かった。


「湊斗くん、もう年越しちゃうよ!」

「え、マジか」


 長々とお互いに向かい合って話に集中していたのでスマホを見ておらず、年越しまであと二分というところだった。

 まだ食べ終わっていなかった年越しそばも少し冷めてきている。


「年越しそばって年内に食べ終わらなきゃいけないらしいぞ」

「え、そうなの?やばい」

「別に、無理しなくてもいいからな」


 自分はもう少しで食べ終わるところだったので残り二分でも完食出来そうだったが、姫奈が急いで食べて詰まらかさないか心配だ。

 姫奈は姫奈で、あと少しの量だが。


 ずるるるるるーー ずるるるるるーー


 二人でそばを勢いよくすする。


 ほぉーーーーー


 それから二人ともギリギリで食べ終わってから一息ついた。


「ふぅ、食べ終わったぁ」

「ごちそうさま。最後まで美味しかったよ」

「よかった。ほらほら、もう年が明けるよ」

 

 スマホのテレビを見ると残り二十秒。早くもテレビの中の人たちがカウントダウンをしている。


「いやぁー、なんか緊張するね」

「確かに。もうすぐ年が変わるんだな」

 

 隣で少し興奮気味の姫奈に少し笑いながら残り五秒というところまできた。


 姫奈もテレビに合わせてカウントダウンをし始めたので自分も姫奈と一緒に声に出してカウントダウンをする。


「ごー、よん、さん、にー、いち」 


(……)


『ハッピーニューイヤー!!!』


 テレビの中の人たちが、一月一日午前二十四時を指した大きなデジタル時計の前で叫ぶ。


 それと同時に隣で姫奈もテレビの声に合わせて言う。


「ハッピーニュイヤー!!!明けましておめでとう!湊斗くん!」

「明けましておめでとう。姫奈」


 そう言った姫奈は、自分の方を向いてそのまま抱きついてきた。


「今年もよろしくね!湊斗くん!」  

「……あぁ……今年も……よろしく」


(いや、新年一発目からこれかよ!?)


 ほんと急すぎる。新年一発目からギューをしてくるとか心臓に悪すぎる……


 自分の目を見ながら本年の挨拶をした姫奈はそのまま自分の胸に顔をうずめて少し笑っている。


「驚いた?」

「驚いた。急すぎて死ぬよ」

「あはははは。初ギューだね」

「なんだよその表現」


 そうツッコむと姫奈は自分の胸元でもっと笑った。


 ほんと、ヤンチャな子供みたいだ。でもヤンチャな子供の割には出来すぎていて、面倒がかからないんだが。


「初詣一緒に行こうね」

「おう。行こうか」


 そう言って年越しそばの皿を洗い、少し家でゆっくりとしてから初詣に行く準備を二人でし始めた。


☆☆☆☆☆☆

 

 といっても、せっかくの初詣だが警備も兼ねているため治安維持隊の制服で行かなければいけない。


 最近は冬の半ばということもあり、外はとても寒いのでそれに合わせて維持隊の制服も冬服仕様となっている。

 これはこれで温かい。


 この前クリスマスに姫奈からもらったブレスレットも腕につける。

 クリスマスが終わってから早速つけ始めていたが、かわいくて見るたびに心が和む。

 このプレゼントを選ぶ姫奈もかわいいなって思った。


 自分の着替えを済ませてリビングに戻ると、隣の部屋から出てきた姫奈がいる。


「どう?」

「……マフラーつけてくれんだんだな」

「うん。似合うように頑張ったんだけど……」

「めちゃくちゃ似合ってる。嬉しい」

「やったぁ。ありがとう」


 姫奈を見てみると、この前自分がクリスマスに上げたマフラーを身に着けていた。


 白いマフラーに合うよう合わせられており、上はベージュの長いコートに、下は黒色のスラっとしたズボンを履いている。

 自分の買ったものに合わせてコーディネートした服装でより綺麗さが際立っている。マフラーに姫奈の顔が埋もれていて何だか不思議な感じだ……

 

 それから姫奈はニッコリと笑った。


 その光景だけで顔が熱くなってきて自分の目の前で身に着けてくれているのがとても嬉しい。


 今からこの子と一緒に初詣に行くことになるのかと思うと心臓がドキドキしてきた。


「そ、それじゃあ行こうか」

「うん。行こ!」


 そうして部屋の電気を消して戸締まりをしてから二人で神社に向かうことにした。

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