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33 クリスマスの予定

「湊斗くんはクリスマス、もちろん姫奈ちゃんと過ごすよねぇ?」


 治安維持署でパソコンと向かい合ってポチポチとしていたら、横から小林先輩が何やら企んでいる顔で覗き込んでくる。


 自分の席の隣は小林先輩なのでよくちょっかいをかけてくる。その度に色々と面倒だ。


「どうでしょうかね。時間があれば一緒に過ごすかもしれませんが、プレゼントは渡そうかと」

「そう思ってるんだねぇ」


(なんだよ)


 自分が言ったことを聞いたとたんに、小林先輩がいつものニヤニヤ顔になってフフフっと笑ってくるので、目を細めて冷たい目で見ておく。


「実はねぇ、私から隊長に頼んでクリスマスの日は湊斗くんをお休みにしておいたから。姫奈ちゃんとゆっくり二人で楽しんでねぇ」

「何勝手にしてるんですか」

「えぇ、むしろ感謝してほしいくらいなんだけど。あんなかわいい子とクリスマスを過ごせるチャンスなんだよ?」

「はぁ……」


 別に悪い気はしなかったが、小林先輩が何かしようとしているのが見え見えで怖いだけだ。

 最近つくづく思っていたのだが、姫奈と暮らし始めるようになってから色々と優遇されているような気がする。

 例えば、「この仕事俺がやっとくから、湊斗は早く帰りな」と他の隊員から言われたり「これ、同居してる子と一緒に食べなよ」と食べ物を持たされたりと色々と親切にしてもらっている。

 その気持ちはとても嬉しいし、実際姫奈と一緒にいれる時間が増えて彼女の事も見られて安心するが、逆に迷惑をかけているのではないかと不安になっている。


 小林先輩は分かってないなぁと人差し指を立てて口をチッチッチッと鳴らし始める。


「別に、かわいい子と過ごしたいがために一緒に生活しているんじゃないですからね?」

「それはわかってるよぉ。でもね、クリスマスを一人で過ごさせるのはどう思うのよ?」

「それは確かにダメだと思いますけど……」

「でしょう?」


 姫奈は沢山友達がいそうだし父親から解放されて遊べる状況だけど、今は友達と関わるのを避けているようなので彼女が一人になるのは何となく分かるんだが、自分と過ごすのもどうなのかと思う。


「それじゃ小林先輩も一緒に何かしましょうよ?大人数の方が楽しいですし」

「は?湊斗くんバカなの?」

「えぇ」


 小林先輩が急に腕と足組み始めてキレてきたので驚く。


(いや、俺なんか変なこと言ったけ……)


 心外だった。いやなんか、めっちゃ腹立ててるように見えるしそんなに怒るところがあったのかと身をすくめてしまう。


「ほんっとうに湊斗くんは分かってない。普通は女の子と二人で過ごすものでしょう?一体何を言ってるわけ?ダメだね~ホントに」

「はぁ……」


 恋人同士がクリスマスデートなんてのは分かるかもしれないが、姫奈と自分はただの親しい同居人というところで、異性と二人でクリスマスを過ごすのはいかがなものかと思うのだが……


 自分の考えは小林先輩は知っている人だし女性だから話しやすいと思った為、一緒にいてもっと楽しくなるだろうと思った。

 別に気遣いとかではないわけで……


「そんな考えだと湊斗くんはこれから先損するね~。残念ながら、私は仕事があると思うし何もできませ~ん。ごめんね~精々二人でイチャイチャしてよね~」

「その言い方、語弊があるいうか……」

「え、なにぃ?聞こえなかったんだけどぉ。なんか言ったぁ?」

「もういいです」


 至近距離で聞いているくせに聞こえないはずがないっだろっと睨みつつ、当の小林先輩は呆けた顔をしている。

 いつものことなので、あぁあとため息をつきつつ自分の仕事に戻る。


(まぁ、せっかく休みになったんだし、姫奈とどう過ごそうかなぁ)


 今の姫奈は前とは違って心を開いてくれており、抱き着いてくるまでには親密なので二人で過ごすのも悪くはないなと思いつつ、それじゃ何をすればいいのか分からない。


 一緒に料理を作って、食べる?それでプレゼント交換して終わり……か。


「具体的に二人で何して過ごしたらいいと思います?」

「はぁ?そんなもん、聖なる夜にはあれしかないでしょ」

「あれってなんですか?」

「え、セッ……」

 

あとの言葉はご想像にお任せする。とりあえず今日の小林先輩は腹を立てている分、興奮していて行き過ぎているようだ。


 自分は急にキーボードを打つ手が止まってそのままパソコンの画面を見つめたまま、思考が止まっていた。

 

(……ガチでこの人やばすぎだろ。末期すぎる)


 病院に連れて行った方がいいのではっと思ったが、そこまで考えるのは失礼なので忘れることにする。


「へ?なんか私おかしいこと言った?」

「言いました。犯罪です。現行犯で逮捕します」

「やだぁ、そんな大げさな」

「冗談でも限度があるでしょう?」

「え?割とガチで言ったんだけど」

「あぁ、もう逮捕です」


 治安維持隊は警察と同様に犯人を逮捕できるので、腰にぶら下げている手錠を取ろうとしたら「あぁごめんごめん。マジでやめて」と言われたのでそこは引くことにした。

 それからというものの有益な状況は得られずにそのまま仕事を終えて帰宅することになった。


☆☆☆☆☆☆


 今は家の前の扉の前で立っている。というのも、自分には考えがあった。


(このままそぉーと鍵を開けて中をチラッとみたら、リビングのドアから覗いている姫奈が見られるかもしれない)


 まぁ、なんとも不審者みたいなことをしようとしているわけだが、そんなことは気にせずに姫奈がリビングから覗いている所を見てみたいだけだ。

 前みたいに盗み聞きをするわけではないので、大丈夫なはず。


 そぉーと鍵を差し込んで、音が鳴らない程度に回し、ドアのレバーを引いて少しだけドアを開ける。


 そのままの目線だと目が合ってしまうかもしれない為、中腰になりながら家の中を見る。


(うわぁー本当に覗いている)


 リビングから今自分がしているように少しだけドアを開けて、琥珀色の瞳がこちらを覗いている。話は聞いていたけど本当にしているとは思ってなかったので、見えた瞬間少しドキッとしたが、それから口元が緩み笑いがこみあげてきた。


「だれ、ですか……?」


 姫奈は瞳を泳がせて、少し震えた声でこちらに語り掛けた。

 このままいても不審者が来たのかと彼女を不安にさせたままになってしまうので、すぐにドアを開けて中に入ることにした。


(かわいいな……)


☆☆☆☆☆☆


ーー小林先輩視点ーー


(実は姫奈ちゃんに「クリスマスは湊斗くんと過ごしたいからどうにかしてほしい」って頼まれたなんて湊斗くんには言えないなぁ。二ヒヒヒ)

 

 私と姫奈ちゃんとどれぐらい繋がっているかは、まだ彼には分かっていないようだった。

 

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