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誘拐の理由と借金の理由

*********************


魔物である蛇身(ラミア)にとって服は不必要な代物であった。弱肉強食の世界では、毛や鱗で身を護るのが当たり前であった。初めてシルビアにあった時も服ではなく、一緒にいれば他の魔物が寄ってきて遊べる程度にしか思っておさず、助けたのも気まぐれであり、暇潰しの為だった。いつだったか森でたまたま見つけた廃屋を見つけた時の事だ。蛇身(ラミア)は何か面白そうな物が無いかと興味本位で仮宿にしようとシルビアとともに中に入る。

室内は物が散乱しており、野盗か魔物にでも襲われたのだろう。蛇身(ラミア)は何か面白そうな物が無いかと物色を始めた時だった。たまたま開けたクローゼットの中に何着か残っていたドレスをシルビアの元に持っていったのだ。


『お前が作ってる服ってこんなやつか?』


『そ、そうです。よかったら着てみませんか?』


蛇身(ラミア)から服を受けとると、持っていた裁縫道具で手早く仕立てていく。余りの早業に唖然としていると、仕上げた服を着せ、部屋に置いてある埃の被ったガラス鏡の前に蛇身(ラミア)を立たせた。乳部を獣の皮で隠したシンプルな格好をしていた蛇身(ラミア)にとって不思議な感覚であった。ただ布切れ一枚でここまで変わるものなのかと、鏡に写る自分を見つめた。すると、シルビアは腕に巻き付けていた髪紐で蛇身(ラミア)の金色に靡く髪を纏め、ポニーテールにする。人からすれば造作もないお洒落の基本であるが、魔物からすれば未知の世界であった。弱肉強食の世界で『美意識』は意味のない事だが、蛇身(ラミア)はお洒落の楽しさにハマってしまった。北山の鉱山洞窟に住み着いた理由も豊富な食料がとれる草原、服の素材となる虫魔物の繭や糸がとれる森が近接していた為、何かと都合がよかったのだ。


********************


「…んで、お洒落にハマってさ。洞窟で色んな服作って貰って着てたんだが、自分以外にも着飾ってみたくなって…そしたら眷属の大蛇(スネイク・ヘッド)が可愛い子拐ってきてよ…ワリィ!」


「でも、ドレスとか可愛くて…サビーヌも普段、鎧ばっかりだから可愛くなったし…」


気楽な態度で事の顛末を語る蛇身(ラミア)と着飾れた恥ずかしさから両手で顔を隠し、顔を赤めたサビーヌにルイが追い討ちをかける。シルビアは申し訳無さそうに頭を下げ謝罪をする。マルセルは頭を悩ませた。普通であれば魔物や野盗は討伐対象だが、ルイが蛇身(ラミア)もシルビアも気に入ってしまい期待の眼差しで見てくる。父親として器のでかさを見せてやりたい。


「あ、んじゃ!私の借金に上乗せして!!ミックス!あの財宝使うときだよ!!」


「お、おう…?」


リザーナはミックスに期待の眼差しを向け、財宝を出すように指示を出す。ミックスは言われるがまま、魔法を唱え、紫色の渦を上に出現させると金貨や宝石が床に降り注いだ。迷宮から持ってきた全ての財宝を出し終わるとそこにやまづみになった財宝が眩い光を放っていた。


「これだけあれば許してくれる!!?」


「ほ、本当にミノアの大迷宮の財宝を…」


「ミノタウロスだけでなく財宝まで…」


周りの兵士や大臣達も騒ぎ始めた。魔物からしたら不必要なものであるが、人からすれば重要なものらしい。これで事が済めばリザーナと外へ冒険に行き、強い敵に遭遇して戦えるやも知れない。マルセルは周りの大臣達と顔を見合わせてそれで了承を得た。ルイは喜び、マルセルに飛び付いた。シルビアもほっと一息つく。


「あ、そういえばシルビアちゃんにお店も持たせたい!!こっから出せる?」


「あー…それはちょっと無理だな。何せ、リザーナの借金額が国家予算並みだし…」


リザーナが尋ねるとゴリガンが申し訳無さそうに頬を掻く。リザーナが借金をしているのは知っているが何が原因なのか尋ねると、ゴリガンがある場所に連れていく。後を着いていくと、北東部に位置する城壁が見事に崩れ壊れていた。周りには城壁を建て直す作業員と草原から魔物が壁内に侵入しないように常に冒険者が警戒の目を光らせていた。

リザーナが冒険者ギルドに来た頃に、ギルドが所有する広場で剣術や魔法をテストした先に得意な魔法を思い切りぶっぱなした為、城壁を破壊し、多額の借金を背負い、住民や冒険者に迷惑を掛けたせいで嫌厭される様になったという。リザーナは駆け出し冒険者の為、東の草原で金になる 野菜兎(ベジタブル・ラビット)の討伐依頼受けたそうだ。この 野菜兎(ベジタブル・ラビット)は他の魔物も好んで食べる為、一人で依頼を受けるのは危険であった。事情が事情の為、一人で依頼にいったリザーナは案の定一人では手に負えない魔物と遭遇し、身を隠す為に迷宮入ってしまい、そこでも追いかけ廻させれミックスの元にたどり着いたと言うのだ。


「俺はこんな馬鹿なエルフを養っていくのか…」


「だ、大丈夫だよ!その代わりに強い魔物に遭遇しやすい体質だから!!!」


「…自慢にならんぞ?まぁ、今日は色々あったから疲れただろう?明日色々と話し合うから今日はもう休むといい」


ゴリガンがそういうので今日はもう休むことになった。ミックスは身体が巨躯の為、普通の宿屋には入れないし、そもそも魔物を泊まらせてくれる所等ない。ゴリガンが馬小屋の管理人と話を着けてくれ何とか馬小屋に泊まれる事になった。同じく泊まる場所がない蛇身(ラミア)とシルビアも一緒に泊まるになった。藁を寝床に仰向けになると、リザーナはミックスの腹の上に飛び乗る。リザーナはシルビアにもくるようにいい手を引っ張り横にした。蛇身(ラミア)は部屋の角でとぐろを巻き既に爆睡していた。今後どうなるのか不安であったが、激しい戦いの為か直ぐに眠りについた。


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