初めての外…そして国へ
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「迷ったぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!」
迷宮脱出から数時間で、再び迷宮のへ続く洞窟の前に戻ってきていた。リザーナの話では、迷宮洞窟の前は深い森に覆われてるからエルフである自分に任せて欲しいと大見得をきっていた。
リザーナは期待を見事に裏切ってくれた。地面にしゃがみこみ、手持ちのバッグの中身をぶちまけた。リザーナは丸められた布を広げ、そこに書かれた絵の様なものを見つめていた。リザーナに尋ねると【地図】というものらしい。
だが、そこに書かれた絵には大まかな場所を示すように言葉が書かれているだけで現状を打破できる様な情報は乗ってないだろう。目の前に広がる広大な森を抜け出さない事には始まらない。ミックスは鼻を利かせ、匂いを探す。迷宮内であれば、匂いを頼りに魔物を捜すこともしていた。外の魔物の匂いも似たようものだろうと楽観的に考えていた。
「魔物のにおいと血のにおいがするな…」
「それって、魔物に襲われてるって事!?」
匂いを頼りに現場にたどり着くと、複数台の荷馬車が魔物に襲撃されていた。護衛して雇われた冒険者らしい人間が辺りに横たわっている。リザーナはサーベルを片手に、魔物に突っ込んでいくが、直ぐ様異変に気付いた。先ほどまで勢いよく襲っていた魔物達が怯えはじめたのだ。恐る恐る後ろを振り返ると、ミックスが戦斧を持ち構え、鼻息を荒げていた。威圧感のあるその巨躯が荷馬車に近づくと魔物達は一斉に逃げ出した。
「つまらん。挑んでくる度胸のない弱者ばかりか…」
「ミックスがいて良かったぁ~。私だけなら返り討ちにあってたよ。ありがとう」
胸を撫で下ろし、ミックスに礼をいうと荷馬車の持ち主であろう人に声をかける。ミックスに怯えていた為、敵ではないことを伝え、事情を尋ねた。荷馬車の持ち主である商人はミックスに脅えつつも、自分が 異種連邦国に向かっている事を伝えた。しかし、魔物に馬を殺られてしまった為、荷馬車を引ける生き物がいない。傭兵として雇った冒険者も負傷者が多く、一刻も早くこの場から離れなければならない。
事情を聞いたリザーナはミックスに馬の代わりに荷馬車を引くように頼むが、荷馬車は全部で三台だ。商人の話では向かっている 異種連邦国はここから2日は掛かる距離があるという。リザーナはミックスにどうにか出来ないかと毛を引っ張る。
街についた所で魔物である自分がどうなるか等が容易にわかる。間違いなく、討伐対象になるだろう。そう考えていると商人はミックスに怯えながらも、街に無事に着くことが出来たら、悪い魔物ではないと説得するのでどうにか助けて欲しいと懇願する。追い討ちを掛けるようにリザーナが泣き落としで泣きわめく。リザーナの立場を護る上では確かに人の証言は必要になってくる。
ミックスは承諾すると、リザーナを引き離し、数歩程離れ、戦斧の刃を地面に叩きつける。すると地面から牛型の土人形を産み出し、商人に荷馬車を引けるようにしろと指示を出す。リザーナも手伝い、無事にその場から離れる事が出来た。
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2日後、安全地帯に無事にたどり着いたリザーナ達が商人とともに向かっている 異種連邦国はミックスが守護をしていた迷宮から南西側にある大国で人口も多い。リザーナもその国で冒険者登録しているというが、一つ疑問が生まれた。馬の足でも2日掛かる迷宮までの距離をリザーナはどうやって来たのか。リザーナの実力では正直その辺りの魔物を一人で倒せるとは到底思えない。
迷宮内でも戦力にならず、例え当たっても刃が通らず、魔物を怒らせるだけであった。そのクラスの冒険者が迷い込んだだけで迷宮の守護者の元へ辿り着く事が出来たであろうか。
馬車に揺られながら能天気に鼻唄を歌うリザーナを見つめながらそう考えていると、目の前に巨大な城壁が姿を表す。同時にこれからの事を考えると気分が重い。魔物である自分を受け入れてくれる国等ある筈がない。場合に拠ってはリザーナに金貨を渡し、他の地にいる強敵と戦うのも悪くないだろう。荷馬車は徐々に城壁に進んでいく。
次回、新キャラ登場予定。読まれているかわからないけど、読まれてたらいいなぁ…